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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第121回 アフリカにおける砂漠化対処の重要性

  • 2014年2月13日

アフリカにおける砂漠化対処の重要性

 2013年6月1〜3日に第5回アフリカ開発会議(TICAD V)が横浜で開催されました。「躍動するアフリカと手を携えて」をテーマとしてアフリカや日本など51ヵ国の首脳や代表団が参加しました。採択された「横浜宣言2013」には今後のアフリカの成長や日本の協力の方向性として民間セクター主導による成長促進とともに農業従事者を成長の主人公にすることが示されています。その中で「特に」としてアフリカの乾燥地域において適切な土地保全を通じて強靭な農業を築くことの重要性が明記されています。

砂漠化対処の難しさ

 当フォーラムが砂漠化に関する調査や技術普及を実施してきた西アフリカのニジェール共和国では、土壌肥沃度が低いために人口が少なかった時代には休閑地を設け、肥沃度を回復させながら永きにわたって農業が営まれてきました。

 また、降水量の変動が激しいという乾燥地域の特徴を踏まえ、化学肥料や設備投資などの事前の投入を過度にせず、雨の少ない年は農業に従事する人を出稼ぎに出すなど自然環境の変化に応じて柔軟に生業を多様化させています。このような土地利用は砂漠化をもたらしにくいともいわれています。

 しかし、ニジェール共和国では年率3%を超える人口増加により、農地で十分な休閑期間を設けられず、土地がやせ、単位面積当たりの収量が低下するようになりました。さらに、農地を拡大させるために木を伐採することで土壌侵食等の砂漠化が進行するようになりました。表面の養分を多く含んだ土壌が風や水で運び去られることで土地がやせ、主要穀物の生産基盤が危機にさらされています。

 砂漠化対処の難しさは人口の少なかった時には問題にならなかった一人ひとりの営みが、人口増加を背景として砂漠化の原因となってしまったことにあります。人口増加という社会的な背景を踏まえ、乾燥地の人びとが培ってきた在来の知恵を生かしながら日々の生活を砂漠化につながらない方向に変える技術協力が必要です。

人びとの暮らしから学ぶ

 当フォーラムは2004年度から京都大学や総合地球環境学研究所、日本のNGOの緑のサヘル等と連携し、西アフリカのブルキナファソ国やニジェール共和国で環境省や国際協力機構の事業として砂漠化を抑制する技術の試行や普及を行ってきました。その際、まずは対象地域の人びとが片手間にリスクなく実践でき、生活向上やリスクの低減につながることを最も重視しました。外部者である日本側実施者が求める砂漠化の抑制は結果として起こるという位置付けにとどめるようにしました。

アフリカでの砂漠化対処の重要性

 西アフリカ内陸の半乾燥地域だけでも1980年代より京都大学や国際農林水産業研究センター、環境省、緑のサヘルなどの日本の組織が砂漠化対処に取り組んでいます。しかし、昨今、気候変動、生物多様性、砂漠化はリオ3条約という位置付けであるにも関わらず、他の条約に比べ、砂漠化対処に関する議論は少なくなっています。

 アフリカの乾燥地域の農業を環境の変動に対して強靭化し、生活を向上させる砂漠化対処技術の開発や普及に向けた実践的な取り組みは、横浜宣言2013で示された目的を達成するために重要です。

 そのため、当フォーラムはアフリカにおける砂漠化対処の重要性やこれまでの取り組みの成果を発信するために環境省から請け負い、公式サイドイベント「西アフリカの砂漠化対処に向けて」を6月2日に横浜で開催しました。以下に紹介するように砂漠化対処条約のニャカジャ事務局長をはじめとして重要な問題提起や報告が行われ、約130名の参加者を得て会場は熱気に包まれました。当フォーラムとしては、人びとの生活の知恵から学び、日々の生活で生かされる砂漠化対処技術の普及に貢献したいと考えています。

グローバルネット:2013年8月号より


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