星の音といっても、我々が直接耳で聴くことはできません。
が、星たちは楽器のように、自然な周波数で共鳴しています。
この振動は特別な観測装置を使って測定することができます。その振動を天文学者たちは星の「音」と表現したのです。なんとロマンチック。
この研究分野は「星震学(asteroseismology)」と呼ばれるもので、地震によって地球の内部構造を知れるように、恒星の振動を研究することで星の内部構造について調べることができます。
2025年5月6日、『The Astrophysical Journal』に掲載された研究論文の筆頭著者であり、ハワイ大学マノア校の研究者であるヤグアン・リー博士は、
恒星の振動は、その星の固有の歌のようなものです。その振動を聴くことで、恒星の質量、半径、年齢を非常に正確に測定することができます。
と語っています。
研究チームは、ハワイ島マウナケアのW. M. ケック天文台にある最新鋭装置「ケック・プラネット・ファインダー(KPF)」を使って4晩にわたり、「HD 219134」と呼ばれる恒星の超高精度な速度測定データを2,000件以上収集しました。これまでにも太陽より高温の恒星の振動は、NASAのケプラーやTESSのような宇宙望遠鏡を使って測定されていましたが、HD 219134のような冷たい恒星の年齢と半径を星震学で導き出したのは本ケースが初めてです。
そして、振動データをもとに研究チームが算出したHD 219134の年齢は102億歳。これは太陽の2倍以上も古い恒星ということが判明しました。
さらに、HD 219134のような恒星の振動を測定できることで、恒星の老化に関する理解もより進むと考えられます。これまで天文学者は「ジャイロクロノロジー」と呼ばれる方法を使い、恒星の回転速度から年齢を推定してきました。若い恒星は高速で回転しますが、時間が経つにつて徐々に回転が遅くなります。回転するコマが徐々に止まる様子に似ています。
しかし、HD 219134のような恒星では年を取るにつれて、回転の遅れが鈍化するという奇妙な現象が観測されます。この現象は恒星が何十億年もかけてどうやって減速していくのかを導く基準点になり、他の恒星の年齢推定方法の精度向上にもつながります。
また、研究チームは星震学を使ってHD 219134のサイズも導き出しました。すでにHD 219134のサイズは、干渉計という複数の望遠鏡で観測する手法により測定されていましたが、星震学を用いて測定した恒星の半径は、従来の手法で測ったデータよりも約4%小さいという結果になりました。
この差異が大気の影響や磁場、あるいはモデルの根本的な問題によるものなのかは謎ですが、今後の研究で判明することが期待されています。
Source: phys.org
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