2024年の再エネ、過去最高の成長ペースに。それでもまだ目標には届かず

  • 2025年4月14日
  • Gizmodo Japan

2024年の再エネ、過去最高の成長ペースに。それでもまだ目標には届かず
Photo: Shutterstock.com

もっと速く、もっと広く。

2024年も再生可能エネルギーの勢いが止まりませんでした。新たに追加された容量は585GW(ギガワット)と過去最高を記録し、世界で新規導入された容量の90%以上を再エネが占めました。が、これでもまだまだ足りないみたいです。

2024年も再エネの勢いは止まらず

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が発表した報告書によると、新規増設分を加えた世界全体の再エネ容量は4,448GWに到達。太陽光や風力といったクリーンな電力が「特別なもの」から、世界の標準に向かって進んでいることがうかがえます。

Image: IRENA

特に、昨年に新規増設された585GWは、世界全体で新たに導入された容量の92.5%を占め、年間成長率も過去最高の15.1%に達し、再エネにとって記録ラッシュの年になりました。総容量に対する再エネの割合は46%と、全体の半分に迫るいきおいです。

でも、浮かれてばかりはいられません。2030年までに再エネ導入量を3倍にするという国際的な目標を達成するには、毎年16.6%ずつ増やしていく必要があるそうです。つまり、現在のペースでもまだ足りないということになります。

中国とアメリカが牽引も、大きい地域格差

Image: IRENA

再エネの拡大が進むなかで、地域ごとの偏りも目立っています。再エネの伸びはアジアが顕著でしたが、特に中国が圧倒的で、中国だけで世界全体の新規導入容量の約64%を占めたとのこと。インドが中国に次ぐ24.5GWを追加し、存在感を見せています。

アメリカも昨年は太陽光発電の成長が著しく、新規導入容量は38.3GWと、前年から54%増加しています。ただ、アメリカの再エネ導入ペースは、トランプ政権によって洋上風力プロジェクトが一時凍結された影響などもあって、2025年は少しブレーキがかかるかもしれません。

一方で、中南米やカリブ地域ではわずか3.2%の成長にとどまるなど、再エネの恩恵がすべての地域に平等に行き渡っているとはいえない状況のようです。

世界全体の新規導入量に対して、G7諸国は14.3%、G20諸国は90.3%を占めました。G7の年間成長率は8.6%で、世界平均のおよそ半分のペースで再エネ導入が進んでいます。G20の年間成長率がちょうどG7の2倍にあたる17.2%であることからも、G7がまだ化石燃料への依存から脱却できておらず、再エネ導入に関しては後発国になっているといえます。

太陽光と風力が2トップ

もっとも著しい成長を見せたのは、やはり太陽光と風力。この2つだけで2024年の再エネ増加分の96.6%を占めるほどでした。太陽光は前年から32.2%増となる451.9GWを増設して合計が1,865GWに、風力も11.1%増の1,133GWに達しました。太陽光の新規導入量は、再エネ全体の4分の3以上を占めています。

中国は太陽光だけで278GWも追加する相変わらずのスケール感。風力でも中国とアメリカが主役だったとのこと。

そのほかにも、バイオエネルギーは前年比を上回る成長を見せ、中国とフランスがそれぞれ1.3GWを追加。地熱ではニュージーランドやインドネシアなどが導入を進め、オフグリッド(送電網につながない)電力も太陽光を中心にぐんぐん伸びています。

日本の成長率が低すぎる件

日本に目を向けると、2024年に新規導入した再エネの容量は3.5GWで、再エネの総容量は132GWとなっています。再エネの年間成長率は2.7%で、世界平均(15.1%)からも、世界から後れをとっているG7諸国からも置き去りにされており、日本の人々もまた、本来なら導入が進めば安価になる再エネの恩恵を十分に受けていないといえそうです。

「スピード」と「公平さ」がこれからのカギ

IRENAのフランチェスコ・ラ・カメラ事務局長は、再エネの進展をこう語っています。

「毎年の継続的な発電設備容量の伸びは、再生可能エネルギーが経済的に実行可能であり、容易に導入可能であることの証拠です。設備容量増加の新たな記録が毎年更新されている一方で、私たちは依然として大きな地域格差の課題にも直面しており、かつ2030年の再生可能エネルギー3倍のグローバル目標期限まで限られた時間しかありません」

さらに

「私は各国政府に対し、各国が決定する貢献(NDC 3.0)を再生可能エネルギーに関する野心を描く機会として活用するよう呼びかけ、国際社会に対してグローバル・サウス諸国の目標を支援するための協力強化を求めたいと考えています」

と、国際社会に呼びかけています。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長も、再エネのめざましい成長とそれに伴う世界的な格差を次のように評価しています。

「再生可能エネルギーは化石燃料の時代を終わらせつつあります。記録的な成長により雇用が創出され、エネルギー価格が下がり、大気汚染も軽減可能であり、再生可能エネルギーは経済を再生します。しかしながら、クリーンエネルギーへの移行はより迅速かつ公平に行なわれなければならず、各国が安価でクリーンな再生可能な電力から十分に利益を得る機会を与えられる必要があります」

今後の課題は「広く、速く、すべての人に」

去年の記録づくめの成長は、再エネの未来に明るい光をともしました。とはいえ、目標達成にはまだまだスピードも工夫も足りないのが現実。

再エネを取り巻く政治的な環境の先行きが不透明になるなか、クリーンな電力を「一部の国だけのもの」ではなく、「だれもがあたりまえに使えるインフラ」にしていくために、国際社会の協力が不可欠です。

Source: IRENA, Reference: Axios

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