二本脚で歩く三脚みたいな?
二足歩行するヒト型ロボのヒューマノイド、最近は各国での開発が進んでいますよね。デモ動画を見ると、アクロバットをするほど高い運動性能を生かさず、家事手伝いや工場での肉体労働をさせるものばかり。人類が求めていた労働力の自動化はできつつありますが、なーんか宝の持ち腐れ感があります。
Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)社のヒューマノイド「ATLAS(アトラス)」君に、新たな可能性が見つかりました。
広告代理店WPPがボストン・ダイナミクスとの協力で行なったのは、アトラス君に動画のカメラクルーをやってもらうこと。このメカは重さ20kgまでの荷物をバランス良く持てるうえ、腰をひねったまま歩いて移動が可能。人間と違って疲れ知らずで、文句も言わずプログラム通りに何度でも再撮影もできちゃいます。
カメラはキヤノンのEOS C400やEOS C80に、シネマレンズを付けたもの。 手ぶれ補正用のリグに装着し、安定感の高い撮影を可能にしました。
ロボットなら火山や洞窟など、危険地帯の撮影などにも向いています。それにLiDARなどセンサー類で現場の地形をスキャンするのも得意。スタジオなら重くてデカいクレーンなどの装置が使えますが、ロボに持たせれば設置やバラシもアっという間。撮影時間の短縮や確保にもつながります。
でも、ロケハンなしに現場に連れてって、いきなり撮影はできないのだとか。ロボットは先に周囲の環境に合わせて動けるよう大量のデータで訓練しないといけません。
訓練はNVIDIAのソフト「Cosmos」が作った、現実世界さながらの仮想世界でシミュレーションを行ないます。デジタル世界なら石につまずいてコケたりしても損傷はナシ。人間だとイメージトレーニングみたいなことを、予め済ませておけば本番に臨めるわけです。
巷では「AIやロボットが人間の仕事を奪う」なんて戦々恐々としている人もいるようですが、今回に限ってアトラス君は歩く三脚みたいなもの。人間が疲れそうだったり大変そうな撮影を代わりにやるだけで、自分で考えて自発的に名作が撮れるわけではありません。すべては人間の創造力を、いかに実現させるのにロボが必要か? という手段なのです。
仕事が奪われるどころか、ゆくゆくは撮影のためのロボットオペレーターなんて職業が生まれるかもしれませんよね。
Image: WPPドローンの活用が一般的になってきた今、ロボ撮影もスタンダードになるでしょうか? そしたら頭部がカメラになって、映画館で流れるCM「NO MORE 映画泥棒」みたいなロボットカメラクルーが活躍するかもしれません。
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