2022年6月14日の記事を編集して再掲載しています。
なんかもう、マイクロプラスチックが自らの意思で移動しているような気がしてきた…。
もはや見つかっていない場所を探すほうが難しいんじゃないかってくらい、どこにでも行ってしまうマイクロプラスチック。研究によると、南極由来と思われるマイクロプラスチックが南極大陸の新雪の中から見つかってしまいました。悪いことに、微粒子が南極の食物連鎖に入り込むだけでなく、暗い色のマイクロプラスチックは雪解けを加速させる可能性もあるそうです。そうなると海面上昇も加速する恐れが…。
ニュージーランドのカンタベリー大学に所属する研究チームが西南極のロス棚氷に積もった新雪の上部2cmから採取した19のサンプルを分析したところ、すべてのサンプルからマイクロプラスチック(直径5mm以下のプラスチック粒子)が見つかったとのこと。これまでにもマイクロプラスチックは南極で発見されていますが、新雪の中から見つかったのはこれがはじめてなんだとか。
科学誌The Cryosphereに掲載された論文で主執筆者を務めた博士課程のAlex Aves氏は、同大学によるリリースで今回の発見について次のように述べています。
南極の新雪からマイクロプラスチックが見つかったことは、悲しいことに世界で最も隔離された遠い地域にまでプラスチック汚染が広がっていることを浮き彫りにしました。
研究チームはサンプルを解凍後、顕微鏡を使って発見したマイクロプラスチックの組成を赤外線分光法によって測定しました。その結果、13種類のマイクロプラスチックが109個見つかったそうです。雪解け水1リットルあたりの平均は29.4個だったとのこと。もっとも多かったポリエチレンテレフタレート(通称PET)は、ペットボトルや合成繊維によく使われていることで有名です。
カンタベリー大学環境物理学准教授で共著者のLaura Revell氏は、リリースでこう話しています。
2019年にAlexが調査のために南極を訪ねたときは、こんな人里離れた遠隔地でマイクロプラスチックが見つかるようなことはないだろうと楽観的に考えていました。いまとなっては、まったく驚きはありません。
マイクロプラスチックの主な発生源はというと、観測基地の近くで採取されたサンプルからもっとも多くのマイクロプラスチックが見つかったことから、プラスチックは旗や調査機器、ジャケットのような合成衣料、あるいはごみに由来する可能性があると考えているそう。また、北極での調査結果のように、風に数千キロ運ばれたり、南極海で水しぶきに巻き上げられたりしたマイクロプラスチックが南極大陸に降下した可能性もあるみたいですね。
マイクロプラスチックは、ピレネー山脈の頂上からマリアナ海溝の底まで、地球上のもっとも離れた場所からも発見されています。この研究結果は、調査場所へ直近にたどり着いたマイクロプラスチックがどこからきたのかを知る手がかりを与えてくれる点で重要です。その一方で、とてつもなく大きい南極大陸の比較的狭い範囲でサンプルが集められるなど、結果は限定的なんですよね。
今後、規模の大きな調査につなげていくことによって、マイクロプラスチックが南極に与える影響もより明らかになっていくことでしょう。そしてたぶん、南極のあちこちでマイクロプラスチックが発見されちゃうんでしょうね。ペンギンが運んだりしてないのかな…。