90年以上の経験と挑戦で月へ。
自転車からクルマ、馬車、スケボーまで、移動手段にとっていちばん大事なパーツは車輪だと思います。丸いものが転がるからこそ、重い荷物も容易く運べるわけです。
以前にもお伝えしましたが、日本のタイヤメーカー、ブリジストンは、2019年から月面探査車用のタイヤを開発しています。初代はラクダの足の裏を模した金属製の柔らかいフエルトでしたが、2代目はエアレスタイヤを参考に薄い金属製スポークを使ったタイプにフルモデルチェンジしました。
そして今度は2代目を発展させた2つのモデルが、コロラド州で行われる宇宙関連シンポジウム「第40回 Space Symposium」で発表されます。
新作は「軽量化を重視したモデル」と、「軽量化と走行性能のバランス型モデル」の2種類。ひとつめはスカスカで扇風機みたいですね。ふたつめは第2世代に似ていますが、それでも板状のスポークが減り中央の車輪部分もスカスカ。スポークがは短いほうが強度があるので、車輪との合せ技なのだと思います。
Image: Bridgestone両タイプとも、外周を取り巻くトレッドが第2世代だとお掃除ワイパーのパッドみたいだったのが、薄い金属板に変わっています。たくさん空いた穴も軽量化に貢献し、レゴリス(砂や小石)が食い込んで摩擦が増すのでしょう。
月面タイヤの構造は、空気を入れる必要がないからパンクもしない、それにチューブも不要なのでエコと良いこと尽くしのエアレスタイヤ「エアフリー」が元になっています。
月面はほぼ空気がないので、空気を入れるタイヤは非現実的ですからね。これを耐久性のある金属にして、レゴリスに埋まらないようさらなる軽量化が必要だったワケです。
Bridgestone will exhibit two second-generation lunar rover tire concepts at the 40th Space Symposium in Colorado Springs from Monday, April 7 to Thursday, April 10, 2025.https://t.co/B5yZq1INsq pic.twitter.com/q8thO27neH
— Bridgestone (@Bridgestone) April 2, 2025ブリジストンは、タイヤを作って90年以上の歴史があります。世界の道を知り、モータースポーツなどのエクストリームな走行を支えるため研鑽を積んできました。そして次の舞台として、新たな「極限」への挑戦ということで月を目指しているのだそうです。
これまでエアレスタイヤと第1・2世代も見てきましたが、世代ごとにデザインを大幅に変える決断力に毎度感心させられますね。実際に月面を走るはいつか分かりませんが、それまであと何回かメジャー・マイナーチェンジを繰り返すことでしょう。
Source: X, SPACE FPUNDATION, Bridgestone (1, 2) via INTERESTING ENGINEERING