いつか人類が移住する「かも」しれない星、火星。
とはいえ、現時点では人類が暮らすことは不可能。火星に生命は存在しない可能性も高いです。しかし、その過酷環境で生存できる生き物として、新たな研究で視線が注がれているのが…地衣類。
地衣類(ちいるい)。耳慣れない言葉ですが地球の生き物。
「菌類(主に子嚢菌や担子菌)のうち、藻類(主にシアノバクテリアあるいは緑藻)を共生させることで自活できるようになった生物」(Wikipediaより)のことです。菌類がその体の一部に藻類を住まわせ、藻類の光合成から活力を得て生きている状態。例えるなら、藻類が収める家賃で、生きる菌類が大家のシェアハウスでしょうか。
この地衣類、極寒・酷暑・乾燥・高湿度と、いろんな環境で生きることができる強い生き物です。
地衣類に着目したのは、ポーランドの研究チーム。地衣類のヤドリキッコウゴケ(Diploschistes muscorum)、タチクリイロトゲキノリ(タチクリイロトゲキノリ)で実験しました。
上記2種を、気圧や温度などを火星の大気に似せた擬似火星環境にいれ、さらに火星にて1年間に浴びるであろうX線放射も実施。この状態で5時間放置という、まさにTHE過酷実験です。その結果、ヤドリキッコウゴケは、タチクリイロトゲキノリよりも著しく適応し、菌類は生命維持に必要な化学反応、つまり代謝反応を継続することができました。
今回の研究で、火星表面で地衣類が生存できる可能性が高いことはわかったので、今後はさらに放射線に関しての耐性を研究していくとのこと。
ポーランドのヤギェウォ大学の生物学者で研究論文を率いたKaja Skubała氏は「擬似火星下で生物がどう活動するのかの理解を広げ、火星居住に必要不可欠な条件である水生生物が、放射線にどう反応するのかも明らかになるでしょう」とプレスリリースでコメント。地衣類の理解を深めると共に、過酷環境化でのポテンシャルにも期待しているといいます。
火星の大地が、深緑の地衣類で埋められる日が来るかもしれません。
IMA Fungusにて研究が公開されています。
街なかの地衣類ハンドブック 1,540円 Amazonで見るPR