火星で発見された大きな有機分子。かつて火星にいた生命の痕跡か?

  • 2025年4月1日
  • Gizmodo Japan

火星で発見された大きな有機分子。かつて火星にいた生命の痕跡か?
Image: NASA/JPL-Caltech

2020年代後半の肝入りプロジェクトとして探査が進められている火星ですが、はたして人類は地球外生命体にいつ接触できるのでしょうか?

2025年3月24日、PNAS(米国科学アカデミー紀要)に公開された論文で、大きな有機分子を火星で発見したことが報告されました。発見された有機分子は、かつて火星にいた生物の兆候だと期待されています。

緑豊かな惑星だった火星

47億年前に誕生した火星は、太陽系の4番目の惑星です。初期の火星に厚い大気と海があり、温暖温潤な気候だったとされていますが、現在の火星の環境は過酷で、昼と夜の温度差は70度ほどと激しく大気は地球の100分の1、液体の水はほとんど存在しません。現在のところ、火星はあまりにも生物には適さない惑星と考えられていますが、かつては生命を維持することができたとみています。

火星探査機「キュリオシティ」は、何年もこの惑星を探索し、惑星の古代環境に関する新たな詳細を明らかにしてきました。そして今回、これまでで最も長い有機炭素を発見したのです。この炭素は、炭素原子が鎖状に結合した炭素鎖と呼ばれるもので、最大12個の炭素原子が連なっていました。

さらに、地質活動や湿気、熱などの影響をほとんどを受けずに37億年前から火星に保存されていると考えられ、この年代は地球の生命が誕生した時期とほぼ一致しています。

生命にとって不可欠である炭素は、DNAやRNAなどの分子を結びつけるためにも重要な元素で、研究を進める大きな手がかりとなります。フランス国立科学研究センター(CNRS)は「この長い炭素鎖は、地球上の生物活動によって生産される脂肪酸に似た特徴を示す可能性がある」と発表しました。

太古の火星には生命がいた?

この有機分子の発見は、初期の火星での生物学的プロセスに関する重要な手がかりを提供していますが、現在、生命がいるかもしれない証拠ではないことに注意が必要です。あくまでも、かつての火星には生命を支えるために適した条件があったかもしれないことを示唆しています。

NASAゴダード宇宙飛行センターのサンプルリターン担当上級科学者かつこの論文の共著者でもあるDaniel Glavin氏は、

今回の研究では、火星のこれらの有機分子の起源は特定できませんでしたが、これらの有機物は、火星の地質プロセス(たとえば熱水活動などの非生物的化学反応)によって生成された可能性があり、または隕石によって火星の表面に運ばれたか、古代の火星生物学の有機的な残骸である可能性もあります。

と、米Gizmodoに対しメールで述べています。

2023年には、火星探査車「パーサヴィアランス」が火星で有機分子を発見しましたが、これは火星にかつて生命が存在したことを証明するものではありませんでした。しかし、生命に必要な条件が過去に存在していたことを示すデータにはなります。

「生命の証拠ではないが、生命に必要な構成要素があった可能性がある」というのは、科学的に慎重でありながらも希望を抱かせる内容です。

キュリオシティも現役ですが、火星探査に向けて次のミッションがすでに計画されています。2028年には、ESA(欧州宇宙機関)とロシアの共同火星探査計画「エクソマーズ」が打ち上げ予定。さらに、NASAとESAによる火星サンプルリターンミッションは、火星の古代の組成をより詳しく評価し、古代の生命の可能性を探る手がかりになりそうです。

さらにさらに2028年には、土星の衛星の一つであるタイタンに向けてドローン探査機「ドラゴンフライ」が打ち上げられます。この探査では、生命以前の化学の痕跡が調査されますが、CNRSによると、同じ研究チームは、ドラゴンフライ用にSAMと同様の機器を製作するとのことです。

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