荷物が世界中どこからでも90分以内に届く世界が実現するかもしれません…。今のところ、軍事貨物だけの話ですが。
2025年3月24日に、アメリカ空軍が太平洋沖の離島に2つのロケット発射台を建設する意向があることを発表。貨物を積んだロケットを宇宙に飛ばし、輸送する計画である「ロケットカーゴ・プログラム(the Rocket Cargo Vanguard program)」の一環として、発射実験を実施することが明らかになっています。
この計画が実現すれば、アメリカ空軍は地球上のどこからでも、どんな貨物でも90分ほどで届けられるようになる可能性があることを示唆しています。発射実験に使用するロケットの提携先は発表されていませんが、SpaceXのロケットを使用するのではないか、と予測されています。
Stars and Stripes誌によると、アメリカの官報では、ハワイから約700海里離れたジョンストン島で発射実験が行なわれる予定であることも記されているようです。
Image: Air Force artジョンストン島は、サンゴが周囲を環状に取り囲んでできた環礁で、国立の野生生物保護区を含んでおり、また太平洋諸島海洋国定記念物の一部であることも知られています。
アメリカ空軍は発射実験を行なう前に、まずはロケットの発射行為が魚類の生息環境や付近を飛ぶ渡り鳥などの生態系にどのような影響を及ぼすのか、調査する予定とのこと。
実際にロケット発射実験が行なわれるのは、もう少し先になりそうです。
アメリカ空軍はロケットを利用した貨物輸送実現のため、少なくとも5年におよんで取り組みを進めてきました。
米国輸送軍の司令官を務めた経験もあるスティーブン・ライオンズ元陸軍大将は、2020年に行なわれた国防輸送会議において、ロケットを利用した貨物輸送に関する匂わせ発言をしていた様子。
「C-17(アメリカ空軍の軍用貨物輸送機)が輸送するような貨物と同等のものを、1時間もかからずに輸送できるような世界を想像してみてください。そんなスピード感で、人や貨物を運べるようになるかもしれません。
本当に大きな可能性を秘めていますし、SpaceXと協力しているチームにはとても期待をしています。
もしかすると、早ければ2021年にもPoC(概念実証)を行なえる可能性もあります」
確かに、どこからでもどんなものでも90分で運べるような世界を考えると、少し浮き足立ってしまう気持ちもわからなくもありません。
ただこの計画にも懸念が。それは、とてつもなくコストがかかってしまうということ。
SpaceXは、発射済みのロケットの一部を再利用することで発射コストを下げることを目指していますが、それでも1回の発射で数千万ドルかかると見込まれています。
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