絶滅危惧種よりも石油利権を保護。トランプ政権でクジラが絶滅の危機に

  • 2025年3月5日
  • Gizmodo Japan

絶滅危惧種よりも石油利権を保護。トランプ政権でクジラが絶滅の危機に
Image: NOAA Fisheries

人間の扱いを見てきたので、クジラの扱いにも納得です。悲しいことですが。

トランプ政権の“知ったこっちゃないリスト”に、絶滅危惧種のクジラが新たに加わりました。トランプの実績を考えると驚きナッシングです。

絶滅危惧種のクジラよりも石油ガス利権を保護

アメリカ内務省の海洋エネルギー管理局(BOEM)は2月20日、ライスクジラの生息域を通る船の速度を10ノット(時速約18.5km)以下に制限するよう求めていた勧告を撤回すると発表しました。

このルールはもともと2023年に導入されて、メキシコ湾のかなり広い範囲で適用されていたもの。絶滅危惧種のライスクジラを守るための措置だったわけですが、どうやらBOEMはライスクジラを守る気がなくなっちゃったようです。

ライスクジラの正確な個体数は不明ですが、アメリカ海洋大気庁(NOAA)によれば100頭未満とのこと。ライスクジラは地球上でもっともレアなクジラの一種で、海洋哺乳類保護法によって守られています。

そんな貴重なライスクジラの個体数は、2010年メキシコ湾原油流出事故によって22%減少したと考えられています。

勧告はまた、保護区域内を航行する際に、訓練を受けた監視員を配置してライスクジラがいないかどうかを目視で確認し、クジラを発見した場合は最低でも500m以上の距離を保つよう船舶運航者に求めていました。

BOEMの声明によると、今回の撤回はダグ・バーガム内務長官(全米で3番目の石油産出州であるノースダコタ州の前知事で、シェールガス開発を推進)が掲げる「アメリカのエネルギー解放」政策の一環として行なわれました。

この政策は、「バイデン政権の厳しい規制が、アメリカの豊富なエネルギー資源の開発と利用を妨げている」として、その障害を取り除くことを目的としているそうです。物は言いようですね。

対立する環境保護団体と石油団体

環境保護団体はこの決定に強く反発しています。

天然資源保護協議会(NRDC)の海洋哺乳類保護ディレクターであるMichael Jasny氏は、タンパベイ・タイムズの取材に対して次のように述べています。

「この(撤回された)勧告は『常識的なもの』です。致命的なミスの結果はあまりにも深刻で、軽視できません。そして、地球上でもっとも絶滅の危機にひんしているクジラの一種を保護するために船の速度を制限するのは、学校に近い通学路で速度を落とすのと同じくらい理にかなっています」

アメリカ石油協会の広報担当者は勧告に対してこう反発しています。驚きゼロの被害者しぐさです。

「(勧告は)沖合の石油・ガス生産業者だけに大きな負担を強いており、この地域で操業する他の船舶の運航状況を考慮していません」

石油開発と船舶がライスクジラの主な脅威に

超希少なライスクジラは、正式に認識されたばかりの新種でもあるんです。1960年代にメキシコ湾で初めて確認されたものの、当初はニタリクジラの仲間だと考えられていました。それが2021年になってようやく、遺伝子や形態の分析によって別種であると判明したのだとか。

全長約12.5m、体重約27.7トンにもなる巨大な海洋哺乳類のライスクジラは、その生息環境を人間の産業活動によってかなり脅かされているみたいです。

NOAAによると、ライスクジラの個体数が減少している主な原因には、エネルギー開発や石油流出事故、漁具の絡まり、海洋ごみ、船舶による騒音などが挙げられるとのこと。

日中は深海でエサを探すライスクジラですが、夜になると水深12m以内まで浮上することが多いため、船舶との衝突リスクがかなり高くなるといいます。

実際、2009年にはタンパ湾で死んでいるクジラが発見され、検視の結果、その個体がライスクジラで、船舶との衝突が死因だったと判明したそうです。

トランプ政権移行後に続く大規模な粛清

勧告の撤回が発表されたのは、BOEMの局長だったElizabeth Klein氏が解任されてからほんの数週間後。Klein氏は、2023年にバイデン前大統領によって任命されていました。

第二次トランプ政権の序盤は官僚の大規模な粛清が続いており、伝統的に政治と距離を置いていたポジションにも、忠実なトランプ支持者が起用される動きが目立っています。

結局のところ、環境を保護するための良い政策がなかなか続かないのは、こうした政治の影響が大きいのかもしれないですね。

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