「うちのスタッフはAIです」はもう実現できます

  • 2025年2月27日
  • Gizmodo Japan

「うちのスタッフはAIです」はもう実現できます
Photo: 小原啓樹

デジタル苦手な人間とだって「話せばわかる」AIです。

一般財団法人デジタルスマートシティ推進財団が、画面に表示されたリアルなアバターとの会話を通してAIを利用できる新サービス「Smart Talk AI」を発表しました。

主な想定利用シーンは受付業務。たとえば観光案内所や企業、行政施設、ホテル、病院などでの各種案内から、イベントおよび展示会まで、人間のかわりに受付案内を行なってくれる「対話型窓口AIサービス」です。

さっそく、実際に動作するSmart Talk AIと会話をしてみたところ、アバターが伊豆の観光案内や観光地への交通情報などを自然な会話形式で教えてくれました。ちなみに、日本語、英語、中国語、韓国語、タイ語、スペイン語、フランス語、インドネシア語の8カ国語がペラペラな、マルチリンガルAIです。

使う側のイメージとしてはAmazonのアレクサやAppleのSiriと同じような感覚ではあるのですが、その裏側では、AIと人力での学習を融合させた独特の仕組み「ハイブリッド対話AI」が動いているとのこと。マルチリンガルな上にハイブリッドな対話AI、なんだか気になりませんか?

事前学習で誤回答を防ぐ「ハイブリッド対話AI」

Smart Talk AIの想定問答(シナリオ)管理画面

Smart Talk AI最大の特徴であるハイブリッド対話AIとは、自動生成AIの仕組みに、人間がテキスト入力した想定問答を学習させるシナリオ型学習の仕組みを組み合わせ、一般的なチャットボットよりも柔軟な対応ができるようにしたもの。必要な情報を人間が事前学習させられるのがポイントで、ここには2つのメリットがあります。

ひとつめのメリットは、会社の受付で「トイレはどこですか?」「廊下の突き当りを右折です」と案内するような、インターネットから取得する情報だけでは答えられない質問にも、シナリオ(想定問答)の事前学習によって正確な回答ができること。

固有の業務フローやFAQなどを学習させておけば、社内向けのマニュアルなどにも応用できるとされています。

ふたつめは、従来のAIチャットボットの懸念点でもあった「ハルシネーションリスク」の回避。AIが持っていない知識や不確かな情報についての質問に答えようとして、誤った回答を作り出してしまうハルシネーション問題を、想定問答を事前学習させておくことで回避しようという狙いがあるのです。

リップシンクにも対応したフォトリアルなAIアバター

一方、利用者の立場から見たSmart Talk AIの特徴は、あたかも人間と話しているかのようにリアルなアバターとの会話で、誰でも簡単にAI利用ができるということでしょう。

表情の動きがリアルなだけでなく、話している言葉に合わせて口元が動くリップシンクも精巧。発話と口の動きがちょっとでもズレていると、けっこう気になりますもんね。よくできています。

アバターは20種類、背景は10種類が用意されたプリセットデータから選択、あるいは実在する人物の写真を用意して、それをもとに作成することもできます。なお、音声も8カ国語の音声パターン31種類から選んで設定可能とのことでした。

アバター管理画面(デモ用に標準プリセットにないデータが追加されている)

諸外国より遅れている日本のAI環境をSmart Talk AIで改善したい

デジタルスマートシティ推進財団 副理事長 兼 専務理事 落合 正和(おちあい まさかず)氏

Smart Talk AIを作ったデジタルスマートシティ推進財団は、多言語観光情報サイト「Guidoor(ガイドア)」や全国の自治体や観光協会と連携しての地域振興業務に取り組んできた一般財団法人。

同財団の副理事長、落合 正和氏によれば、AIアバターによる対話型窓口AIサービスを生み出したきっかけは、日本がデジタル技術の活用で業務改善するDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進はもとより、AIの活用でも諸外国に比べ遅れているという危機感があったからだといいます。

生成AIを業務で利用している企業の割合は、首位の米国が84.7%なのに対して日本では46.8%(「総務省 2024年版 情報通信白書」より)。個人ともなると、首位の中国では56.3%の人が生成AIを利用しているのに対し、日本はわずか9.1%にとどまるのだそう。

落合氏は、キーボードでのプロンプト(命令)入力を含め、日本人にはAI利用に苦手意識を持つ人がとても多いとも語り、画面に話しかけるだけでAIアバターによる対話型窓口サービスを受けられるSmart Talk AIが、日本のAI利用環境改善につながることへの期待感をにじませていました。

左より、株式会社AI HYVE CIO 小澤 健祐(おざわ けんすけ)氏、同 代表取締役CEO 津本 海(つもと かい)氏、デジタルスマートシティ推進財団 落合 正和氏

また、サービス発表会ではAI専門家との座談会形式のセミナーも行なわれ、落合氏とともに登壇した株式会社AI HYVE 代表取締役CEOの津本 海氏からは「(Smart Talk AIで)役所の手続きや行列に代わりに並んでくれる“最強のアレクサ”みたいなものができるかも」、同CIOの小澤 健祐氏からは「今年はAIエージェント元年。Smart Talk AIはその(新しい時代の)入口になりえる」といったコメントが。

対話型窓口AIサービスが月額5万円

チャットで使える対話型AIの普及が進んできた現在。でも、キーボードで命令を入力することに抵抗がある人や、そもそもデジタルが苦手という人にとって、AIはまだまだ遠い存在かもしれません。そんな人も、顔を見ながら自然に会話をしてAIとコミュニケーションできるとしたら、もっと利用する機会が増えるのでは。

Smart Talk AIは、Androidが動作する大画面モニターやタブレット端末で動作し、導入コストは初期費用55万円(税込)、月額費用5万5000円(税込)から。業務用のAIサービスとしては比較的安価な部類であるため、対話型窓口AIサービスの導入で業務効率化をはかりながら、同時にコスト削減も狙えるかもしれません。

日本発のAI業務サービスとして、今後に期待したいところです。

Photo: 小原啓樹

Source: Smart Talk AI │ AIアバターによる対話型窓口AIサービス

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