エジプトといえば、スフィンクスを筆頭にネコっぽい生き物との繋がりが強い国として知られています。そんなエジプトのファイユーム低地と呼ばれるエリアから、約3000万年前の地層がたくさん見つかっているのですが、「幻の捕食者」の化石が発掘され、ネコ神由来の名前がつけられたと盛り上がっているとIFLSが伝えました。
見つかったのは、この時代に頂点捕食者として君臨していた「ハエノドン類」という一群です。その名前からハイエナを想像しがちですが、現生のイヌ科ともネコ科とも異なる系統なんです。
特徴的なのは、上下の臼歯のあいだに肉を断ち切る「刃」が並んでいること。イヌやネコの裂肉歯とも似ていますが、その進化過程は別物。まるで独自に生まれた肉食のプロフェッショナルと考えるのが妥当みたい。
これまで、これらの化石はヨーロッパ産の「プテロドン」と同じ仲間だと思われてきました。しかし、詳しい研究が進むにつれて系統的に別のグループだと判明したのです。
そこで新たに「バステトドン・シルトス」という属名が与えられました。
そう、エジプトのネコ神「バステト」が由来。ネコ科じゃないのにね。
ハエノドン類は小柄なイタチサイズからライオン級の大型種まで多種多様。住んでいたファイユーム低地には食料となる生き物も豊富に存在していたので、食べ物にも困っていなかったはずです。
ただ、地球の気候が変動したことで、より適応力の高い現生食肉目(イヌ科、ネコ科、ハイエナ科など)が台頭し始め、ハエノドン類は少しずつ追いやられ、ついには絶滅してしまったみたい。
適応できなかったのか…。進化できていたらどんな姿になっていたんだろう。
ネコ神由来のバステトドンが発掘されたファイユーム低地の地層には、まだまださまざまな動物の進化過程や古代の生態系の痕跡が残っているはず。大昔の生き物がどんな暮らしをしていたのかが解き明かされていくのは、純粋にワクワクしますね。
Source: IFLS, Taylor & Francis Online