山火事発生から約1カ月。史上最大規模の被害を出した炎がやっと消えました…。
南カリフォルニアのロサンゼルスで発生し、29人の死者を出した山火事がやっと完全に鎮火。新たに公開された地図は、近年の気象現象が山火事の燃料になったことを物語っています。
アメリカ航空宇宙局(NASA)のランドサット衛星のデータによると、2024年の後半2/3(約8カ月間)にわたって続いた温暖で乾燥した気候が、ロサンゼルスの植生に火がつきやすく、燃え始めると一気に拡大する下地をつくっていたそうです。ロサンゼルスの山間部は燃料たっぷりで、あとは火がつくのを待っていただけということになります。
1月7日に発生した最大規模の火災は、パシフィック・パリセーズやアルタデナを含むロサンゼルスの広い範囲に甚大な被害をもたらしました。火災は乾燥した気候と東からの強風にあおられて急速に拡大し、新たな火災を引き起こしていきました。
カリフォルニア州森林保護防火局(CAL FIRE)によると、最も大きかったパリセーズ火災とイートン火災の2件は、合計で150平方キロ以上を焼失しました。上の地図は、気候変動の影響で火災の種がまかれていたことを雄弁に語っています。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究チームは、2022年から2024年にかけての植生の増加に続く昨年後半の乾燥状態が、ロサンゼルス郡を巨大な火薬庫のような状態にしていたことを突き止めたそうです。
2022年と2023年は南カリフォルニアにとって特に雨の多い年でした。NASAのEarth Observatoryのニュースリリースによると、1877年以降のデータでロサンゼルス中心部の年間降水量を分析したところ、両年とも降雨量がほぼ平均の2倍に達していたとのこと。
アメリカの西海岸、特に太平洋岸北西部では、大気の川(全長2000km以上、幅1000km未満に及ぶ大気中を流れる水分の回廊)と呼ばれる現象が発生するのですが、これがたまに太平洋から流れてきては、とんでもない量の雨を降らせて、洪水や地滑りを引き起こすんです。
この大気の川が降らせた雨のおかげで、2022年以降に植生が増えまくってしまいました。上の地図が示すように、2024年夏にはロサンゼルス郡全域で植生が増加。いくつかの地域では、最大で平均の30%も植生が増えていた(上の地図の赤い部分)そうです。
この増えすぎた植生が、異次元の山火事の燃料になりました。全米省庁合同火災センターは昨年7月、山火事の燃料になる植生が平均を上回っていると報告していました。
2024年後半に状況が最悪な方向に一変します。平均以上の雨が降った2年間で増えまくった植生が、降るはずの雨(秋以降は雨期)が降らないせいで完全に干からびてしまいました。
The Los Angeles Timesによると、2024年5月から2025年1月までの期間は、1877年以降で2番目の乾燥ぶりだったとのこと。
Image: Michala Garrison ロサンゼルス郡の土壌水分量を示す地図上の地図は、ほとんどの植物が根を張る、土壌の深さ1mの水分量を示しています(火災が発生した1月7日時点)。赤が濃くなるほど土壌が乾燥しているんですけど、ご覧のとおり南カリフォルニアは真っ赤っかのカラカラです。
住民にとっては突然の火災だったかもしれませんが、この2つの地図は、燃え始めたら手がつけられなくなる、火にとってはもっとも適した状況になっていたことを示しています。
降るときは降りまくる、乾くときは乾きまくるという両極端な気候が新しいノーマルになっていく中で、衛星などの科学データを活用して地域を監視し、可能な限り正確な災害予測と早期の警告がますます重要になっていくと思われます。
容赦なく進む気候変動の影響で、備えあれば憂いなしの時代は終わり、どんなに備えても憂いありの時代になってきました…。
Reference: Forbes, CAL FIRE