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「時間結晶」ってなに? 未来のコンピューターに応用できるかも

  • 2024年2月16日
  • Gizmodo Japan

「時間結晶」ってなに? 未来のコンピューターに応用できるかも
時間結晶の測定結果(各点が実験値)
Image: Alex Gerilich / TU Dortmund

独ドルトムント工科大が、40分持続する時間結晶の創出に成功しました。

これは従来の結晶の寿命の1000万倍。それだけでも大躍進なのに、もっと何時間も持続する時間結晶の創出も夢じゃないと、研究班は張り切っていますよ。

時間結晶って何?

「結晶」といえば、身近なところでは雪の結晶や食塩(塩化ナトリウムの結晶)が思い浮かびますよね。原子が一定の空間で、ピシッと規則正しく並んでいる状態をいいます。

これに対し「時間結晶(time crystal)」というのは、一定の時間と空間に低エネルギーで規則正しく並ぶ状態のこと。条件が変わったりの外的要因がなくても、ある時間が来ると、ふと我に返ったように解散する不思議な性質を持っています。その意味では、「時間対称性」(安定した状態の物質は時間が過ぎても変わらないという概念)を破る存在でもあります。

これまでの記録は数ミリ秒

2012年に提唱されたのが始まりで、ラボでいろいろ作り出されてきました。2022年6月に超低温の量子的状態で実現したボース=アインシュタイン凝縮においては、一定時間継続する時間結晶が報告されましたが、持続時間はほんの数ミリ秒でした。

それが一気に40分ですから、ざっと1000万倍に伸びた計算です。

成果はNature Physicsに掲載中。

どう実現したの?

使ったのは、半導体で知られるインジウムガリウムヒ素(三元合金)。

これに原子核スピン系で偏光レーザー光を当てて躍起させ、系内の原子核のスピンを偏極させたんですね。

するとインジウムガリウムヒ素から振動が起こり、これが「時間結晶に相当する」状態と判断されたのだといいます(同大プレスリリース)。

で、何に役立つの?

同大チームの論文には、「この種のハードがいずれは、小型で柔軟性の高いオンチップ周波数*のスタンダードになる」ことを視野に入れて研究に取り組んでいるとあります。

*編注:いまのコンピューターは、チップの中を流れる信号のタイミングを同期させるために、シリコン(ケイ素の結晶)や水晶(二酸化ケイ素の結晶)などを利用した周波数発振器を使っています。時間結晶は、シリコンなどを超える性能の発振器に応用できるかもしれません。

もっとも実験では、一部が「解けて」時間結晶状態が失われたので、完璧ではないですけどね。「この時間結晶の寿命は少なくとも数時間、事によるともっと長くなると結論付けていいだろう」と書かれていて、何やらすごそうです。

しっかし量子論レベルの話は、怒涛の専門用語で頭割れますね。シートベルト締め直さないと。

米Gizmodoにも「何回読んでもわからん」「これ読むまで自分は頭いいと思ってた」「へー初耳!ちょっと読んで頭に入れようと思ったけど秒速で挫折した」「量子のシートベルトはとっくの昔に締めてるし、締めてないともいえる」といった声が集まってます。シュレディンガーの猫かいな。

量子もつれを使えば、時間旅行のシミュレーションができるかも? 量子粒子が相互作用するときのもつれを利用して時間旅行を可能にするというシミュレート実験のレポート。 https://www.gizmodo.jp/2023/11/quantum-entanglement-time-travel.html

Source: TU Dortmund University

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