まだまだ知らないことや、わからないことがいっぱい。
「ブラックホール」という名前にもかかわらず、謎めいたその物体は空虚とは正反対です。ブラックホールは宇宙で最も密度の高い天体であり、その質量はほかの星の数億個分ほどのものも存在しています。
また、ブラックホールの重力場は非常に強力なため、ある領域より先は光さえも逃れることできません。私たちは、「事象の地平面(ブラックホールの重力により光でさえ逃れられず、その先を観測することができない境界)」を超えて現実がどのように現われるのか、推測するしかないわけです。
このような簡単な説明だけでも、ブラックホールが想像力をかき立てるものであるといえるでしょう。専門家ではない私たちでもスリリングに感じ、惑わされるようないくつもの秘密を持っているのです。
そんなブラックホールについての謎や、まだ知らないかもしれない興味深い雑学を掘り下げていきましょう。
さて、「光がブラックホールから逃れられないのなら、なぜブラックホールの画像を撮影できるのか?」という素朴な疑問を抱く方もいるかもしれません。
実際、2019年にイベントホライズンテレスコープ(EHT)が世界初のブラックホール画像の撮影に成功したとき、世界中で大きなニュースとなりました。重力に引き寄せられて過熱状態となった物質の光に囲まれたそのシルエットは、多くの人に知られるものとなったのです。
このブラックホールの画像も、実際にはブラックホールそのものではなく、重力に引き寄せられ事象の地平面の周りに満ちたガスや、粉砕されて過熱状態となった物質の塵によるものといえます。
2022年には、上記の画像のような現象が観測されました。それは、ブラックホールが引き寄せた天体や物質を吐き出した現象です。これは潮汐破壊現象といわれ、物質がブラックホールによって引き寄せられ過熱された後で、電磁放射と共に放出されるというもの。いわば事象の地平面を超える前に、吐き出されて光を放ったものです。
2015年に研究者たちが初めて重力波を観測しました。重力波とは、ブラックホールや高密度の物質の相互作用や運動によって生じる波で、それは時空の伸縮という歪みを発生させるものです。
さて、昨年複数の国の共同研究により、超大質量ブラックホール連星による「背景重力波」の存在を証明するような観測がされました。
この背景重力波は、互いを周回する超大質量ブラックホールのペアによって生まれると考えられる重力波です。さらに背景重力波というものは、今この瞬間にもあらゆる方向から地球に到達している絶え間ない重力波であると考えられ、常に引き起こされている可能性が高いといいます。
物体がブラックホールに引き寄せられていくと、その重力場によってそれらは引き伸ばされて細長い形状になるといいます。それが「スパゲッティ化現象」です。
このスパゲッティ化現象という言葉は、かの有名な理論物理学者の故スティーヴン・ホーキング博士によって作られました。この言葉は、ホーキング博士が専門家ではない一般読者向けにわかりやすく宇宙論を語った本として日本でも大ヒットした『ホーキング、宇宙を語る』に出てきた用語なのです。
銀河の中心にあるブラックホールは、巨大なブラックホールであることが知られています。銀河の中心にあるような太陽の質量の数十万倍以上のものは、超大質量ブラックホールと呼ばれます。一方で超新星爆発によって生まれた恒星ブラックホールは、太陽の質量数十倍くらいのものです。
ブラックホールには「質量ギャップ」があり、これに対して上記の「?」の範囲にあたる部分には、「中間質量ブラックホール」というものが存在しているとされています。ですが、研究者たちはこれらを見つけるのに苦労しているといいます。
これまでにいくつか中間質量ブラックホールの可能性があるものが発見されています。超大質量ブラックホールも何かしらから成長していると考えられるので、存在するとされていますが、まだ解明できていないようです。
さて、次は最も古いブラックホールについてです。
先日、134億年前には存在していたとされる観測史上最古のブラックホールが発見されました。こうしたビッグバンの直後に形成されたブラックホールは、「原始ブラックホール」と分類されていますが、理論上はもっと小さいものであると考えられています。
原始ブラックホールは小さく、銀河の中心にあるといったこともありません。その代わりに宇宙に無数に存在しているとされているわけです。しかも直接観測できないものでもあります。そうしたこともあり、原始ブラックホールがダークマターの存在を証明する可能性もあると言えるのです。
私たちの宇宙は無数の星や系外惑星、小惑星、分子雲、中性子星、その他含めて構成されています。超大質量ブラックホールは、銀河の中心に存在していると考えると、ブラックホールは天体の中でも数少ないものと思ったりします。しかし、ブラックホールはものすごくたくさん存在しているのです。
2022年、天体物理学者チームが「観測可能宇宙」には4000京ものブラックホールが存在する可能性があると計算したといいます。もちろん「宇宙は広い」と認識していますが、このスケールはまったく新しい次元と思えますね。
2年前に大爆発が宇宙を揺るがせました。そして昨年、この爆発がこれまで観測された中で最も明るいガンマ線バーストであったことがわかりました。
NASAによると、ガンマ線バーストは超大質量の恒星が崩壊するときや高密度の物体の衝突といった際に発生し、その後のブラックホールの誕生を告げるものと考えられています。遠い宇宙の奥深くであっても、その明るさによってその存在を知らせてくれるのです。
今月の初め、科学者たちを困惑させる謎の天体が発見されました。その天体の質量は、太陽の2.09倍〜2.71倍とされ、巨大な中性子星か非常に小さなブラックホールと考えられます。ですが、中性子星にしては大きすぎ、ブラックホールにしては小さすぎるという天体なのだそうです。
研究チームは、この天体は2つの中性子星が合体してできたものである可能性を指摘しています。もしブラックホールだと考えるのであれば、観測された中で最も軽いものとなるでしょう。いずれにしても、中性子星やブラックホールの形成や銀河の成長に関して、新たな事実がわかる手がかりになるかもしれませんね。
2024年は、ブラックホール研究において素晴らしいスタートを切ったといえるでしょう。
先述の観測史上最古のブラックホールは、134億年前に存在していたことが発表されました。しかし、この発見により新たな疑問も生まれました。
この最古のブラックホールは、これまで宇宙の進化における初期段階に形成されたと考えられるブラックホールの大きさをはるかに超えたものだったのです。
ビッグバンから4億年後には存在していたとされるこのブラックホールですが、これまでの理論に照らし合わせると、この規模のブラックホールが形成されるには10億年はかかるのです。つまり、形成速度はこれまで考えられていたよりもっと速い可能性、あるいはブラックホール形成に関して新たな可能性も考えられる発見となりました。
これからもっと多くの古いブラックホールが発見されたり、ブラックホール形成に関しての研究が進んでいけば、私たちが知っている(そして存在している)宇宙についても、より多くの事実がわかるかもしれません。この先そうした期待をしつつ、新たな発見を待つことにしましょう。
銀河の謎を解明するヒントになりそう。不思議な天体を発見 理論にあてはまらない存在が、新たな答えを編み出していく。地球から約4万光年の距離に、謎の天体が発見されました。何が謎かっていうと、中性子星にしては巨大すぎ、ブラックホールにしては小さすぎて、それが何なのか専門家でも判定できずにいるのです。「質量ギャップ」の中の天体その天体の質量は太陽の2.09〜2.71倍と推定されてるんですが、これは大きさ的に「質量ギャップ」の範囲内にあたります。質量ギャップと https://www.gizmodo.jp/2024/01/mystery-space-object-biggest-neutron-star-black-hole.html