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3000kmのデスロードを太陽光だけで疾走! 世界最高峰のソーラーカー耐久レースで世界一奪還を誓うチームの秘策とは?

  • 2023年10月20日
  • GetNavi web

ブリヂストンがタイトルスポンサーを務める「2023 Bridgestone World Solar Challenge(以下、BWSC)」は、オーストラリアのダーウィンからアデレードまでの約3000キロの道のりを、太陽光のみで走行する世界最高峰のソーラーカーレース。

 

2021年は新型コロナウイルスの流行により中止されましたが、今年4年ぶりに復活します。2023年10月22日から5日間をかけて競われるBWSCは、全世界20以上の国と地域から43チームが参加し、日本からも大学や高校など複数がエントリーしています。とくに2009、2011年と連覇経験のある東海大学は、人気・実力ともにトップクラス! 世界一を期待されているチームのひとつです。

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今回は、レースを前に先日、東京都小平市にあるBridgestone Innovation Parkで開催された「Bridgestone Solar Car Summit 2023」の様子を紹介。東海大学の新型マシン「2023年型Tokai Challenger」のお披露目と試走会の様子から、チームやサポートするブリヂストンが4年ぶりのBWSCへかける意気込みまでをレポートします。

 

ソーラーカーの進化は「タイヤ」にあり!?

↑ブリヂストンは新技術によって生まれた再生資源・再生可能資源比率63%の新タイヤをモータースポーツに初めて供給する

 

BWSCは、1987年に第1回大会が開催された世界で最も歴史があるソーラーカーレース。2013年からブリヂストンがタイトルスポンサーを務めています。大会期間中は、毎朝8時〜夕方17時までオーストラリアの公道を太陽の力だけで走行。砂漠の中を走るため、風や激しい気温変化に対応しながら、チーム一丸となってゴールを目指します。

 

1996年から東海大学ソーラーカーチームに所属する東海大学 木村英樹教授によると「ソーラーカーレースは、ブレインスポーツ。常にベストなコンディションで走行するためには、気象条件の把握やドライバーとのコミュニケーションが必須。チームで戦わないと勝てません。BWSCは、若手エンジニアの育成だけでなく、テクノロジーの共創といった観点からも大変重要な大会です」といいます。

↑東海大学ソーラーカーチームを率いる、同大学工学部機械システム工学科・木村英樹教授

 

またレーシングカーや飛行機などに用いられるカーボンコンポジット技術を開発する東レ・カーボンマジック株式会社の奥明栄氏も「ソーラーカーは、走る実験室。これらの経験や実験が、ものづくりに貢献する」と語り、未来のモビリティ開発との関係性を強く訴えていました。

↑東レ・カーボンマジック株式会社の奥明栄代表取締役社長

 

さらに株式会社ブリヂストン モータースポーツ部門長である堀尾直孝氏は「BWSCは、世界中のハイレベルな技術と人が集結する大会。サステナブルなモータースポーツとして価値あるプラットフォームにしていきたい」と、大会の意義について語ります。

↑株式会社ブリヂストン モータースポーツ部門長の堀尾直孝氏

 

そんなソーラーカーレースの歴史の中で、大きく進化しているのはどこなのでしょうか?

 

木村教授によると、一番の進化はタイヤにあるとのこと。というのも大会の初期には、自転車のタイヤが代用されており、ソーラーカー専用のタイヤは開発されていませんでした。ソーラーカーレースでは、なるべく少ない電力で効率よく走行することが求められます。タイヤが大きく重たいと、タイヤを動かすために必要以上の電力が使われてしまうため、非効率に。しかし軽さにこだわりすぎるとパンクしてしまうリスクが上がります。軽くて摩耗しにくい、そんなタイヤが求められていました。

 

このような背景を踏まえ、タイトルスポンサーであるブリヂストンでは、2013年大会からソーラーカー専用のタイヤ供給を開始。2023年大会では、35チームにタイヤを提供する予定です。

 

↑メディアに初公開された、東海大学ソーラーカーチームの新車「Tokai Challenger」。採用するタイヤには、ブリヂストンの商品設計基盤技術「ENLITEN」を搭載している。左端は工学院大学の濱根洋人教授

 

今大会から使用されているブリヂストンのタイヤは、カスタマイズが可能な「ENLITEN」技術を採用。ソーラーカーで重視される「低転がり抵抗」「耐摩耗性能」「軽量化」に特化したタイヤになりました。さらに再生資源・再生可能資源使用率(MCN比率)も向上し、より環境にやさしいタイヤを実現しています。

 

リサイクル可能な再生材料を利用し、よりサステナブルなソーラーカーを実現

↑「Tokai Challenger」を前に勢ぞろいした東海大学ソーラーカーチームのメンバーたち

 

大きく変わった点は、3つ。まず、四輪から三輪への変更です。こちらはルール変更により、これまで四輪のみ走行可能だったものから、三輪も選択できるようになったとのこと。東海大学では、初の試みとなる三輪(前2輪、後1輪)を選択しました。

 

東海大学の佐川耕平総監督は「最後まで悩んだ部分でしたが、さまざまなシミュレーションを行い、経験値も踏まえつつ空気の絞りが利く三輪を選択しました。大きなチャレンジではありますが、正しい選択だったかはこれからわかること。楽しみですね」と話します。

↑新車で東海大学が採用したのは、新レギュレーションの三輪。後輪が1本で、軽快さが増した

 

2つ目は、軽量化。2023年型は強度・剛性を保ちながら、車体全体重量を24.6kgにまで軽減! これは前回大会の車体から約50%の軽減に値します。軽くなった分、バッテリーやモーターなど駆動に関わる部分の向上にも貢献することができました。

↑軽量化が進んだコンポジットパネル

 

最後は、環境への配慮。これまでリサイクルが難しいとされていた炭素繊維をリサイクル可能な再生材料へと変更しています。

↑リサイクル材からなる炭素繊維

 

走行時、二酸化炭素を排出しないソーラーカーですが、使う素材にまでこだわるのは、BWSCが持続可能なソーラーカーレースに変化しているとも言えますね。

 

コロナ禍の悔しさと走れる喜びを胸に、目指すは世界一奪還!

↑2023年型「Tokai Challenger」

 

今回は新型マシンが披露されただけでなく、実際に走行する様子も見ることができました。快晴の中、滑るように走り抜けるソーラーカーは、太陽の力だけで走行しているとは思えないほどの力強さがありました。

 

BWSCでは、5日間ドライバーを交代しながら時速約90キロで走行し続けます。砂漠の中を走ると聞くと気持ちよさそうに感じてしまいますが、車内にクーラーは搭載されていないため、ドライバーは体力勝負になることも。またコース付近にはホテルがないため、参加者は自分たちでキャンプ地を決め、料理など身の回りのことも全てチーム内で行います。非常に過酷な大会のため、いくら技術があったとしてもチーム力がなくてはゴールを目指せません。

 

今大会でチームリーダーを務める東海大学大学院2年生の宇都一朗さんは、2019年のBWSC経験者。今大会に向けて以下のように話してくれました。

↑東海大学ソーラーカーチームのリーダー、宇都一朗さん。右は佐川耕平総監督

 

「2019年大会は、1位と僅差で負けてしまいました。残念ながらすぐにリベンジとはいかず、悔しさを晴らせないまま卒業していった仲間も多くいます。その仲間のためにも、2011年以来となる首位奪還を目指したいです。この4年間でいろんな経験ができました。たくさんのスポンサーさまにも支えていただきやっと大会に参加できるという嬉しさと、リベンジしたい気持ちを胸に頑張ります」

↑この日は、スポンサーの東レ株式会社、東レ・カーボンマジック株式会社、大和リビング株式会社、株式会社ブリヂストンが参加

 

大学生は4年間という限られた時間の中で、BWSCに挑戦しています。2021年大会が中止になったことで、BWSCに参加できないまま卒業してしまった学生も多くいます。悔しい時期を乗り越え、さらにパワーアップした学生たちを応援しましょう。大会はこの週末から来週にかけて、現地での静的・動的車検などを経て、いよいよ10月22日に北端のダーウィンでレース初日を迎えます。10月29日に南端のゴール地点アデレードで予定されている表彰式では、一番高いところに上れるか? 期待が高まります。

 

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