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映画監督・足立紳、ついにAGA治療を始め、誕生日に妻から邪険に扱われ拗ねる6月

  • 2023年7月22日
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「足立 紳 後ろ向きで進む」第39回

 

結婚21年。妻には殴られ罵られ、ふたりの子どもたちに翻弄され、他人の成功に嫉妬する日々——それでも、夫として父として男として生きていかねばならない!

 

『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞、『喜劇 愛妻物語』で東京国際映画祭最優秀脚本賞を受賞。2023年のNHKの連続テレビ小説『ブギウギ』の脚本も担当。いま、監督・脚本家として大注目の足立 紳の哀しくもおかしい日常。

 

【過去の日記はコチラ】

 

 

6月1日(木)

午前中、いつもの喫茶店で仕事。

 

午後からAGA治療の無料カウンセリングに行く。とうとう私も治療をしてみようと思い立ったのだ。その理由としては周囲で治療している人たちのてき面な効果を目の当たりにしているのと、近ごろ急にまた「やっぱりハゲ、やだなあ……」と、このご時世にルッキズム丸出しの思いがニョキニョキと芽生えてきてしまったからだ。

 

私のハゲ歴は高校時代からなので、もうこの悩みと30年以上も付き合っていることになる。そりゃ若いころは嫌で嫌でたまらず、新聞の広告かなにかにあったカツラメーカーの相談みたいなやつに答えたら、もうバンバン電話がかかってくるようになって母親に怒られた。20歳くらいのころは1000円くらいの育毛剤を致死量なんじゃないかってくらい頭にふりつけて、3日で空にしていたが、30歳前くらいに急にどうでもよくなったというのか、まったく気にならなくなった。

 

そして2〜3年周期で「やっぱり気になる……」「いやもうぜんぜん気にならない!」という気持ちの浮き沈みを繰り返し、5、6年前の気になる期に「AGAやってみようかなあ……」なんて思ったが、思っているうちにまた気にならなくなりやっぱいいやって感じでやめた。で、去年くらいから冒頭に書いたような気持ちにまたなってきたのは、妻が私を見て今さら「……なーんか禿げたねえ……」と呟きだし、今では普通に「おい、ハゲ」と呼ぶようにもなってきたので、見返してやりたい気持ちもあるのだ(※言ってねーし。ゲーハーだし。by.妻)。

 

で、今日、無料カウンセリングを予約していたのだ。クリニックに入って行くと、いきなり美しいおネエさんが出て来て「ウッ!」と思ったが、生来のМ気質のために、楽しんでカウンセリングを受けられた。「へぇー、ハゲの仕組みってそうなのか! うーん、すごい! いや知ってたけどね、こちとらベテランだから」なんて思いながらも、丁寧な説明に好感を抱きながら聞いていると、いくつかの治療コースを紹介され、結局は高いコースへと誘導される。そして今日この場で決めてくれたら30%OFFに加えて独自のシャンプー付き! と来ました。なんだこれ……と思いながら「奥さんに相談しなきゃで……」と言うと、「今電話できます?」とぐいぐい来るので、電話しますと言って、「怒鳴られました」と言ったら、もう用なしみたいな感じになった。

 

なんだかどよーんとした気分でクリニックを出て、コンビニでアイスを買って気持ちを立て直し、セカンドオピニオン(とは言わないが)に2つほどのクリニックを予約して帰宅した。

 

6月2日(金)

今日は娘の高校の運動会だったため、私は朝からギンギンに気合いが入ってしまい(毎回運動会にこうなるのだが)、無駄に早朝から弁当を作っていたが、作り終えたタイミングで「台風のため月曜日に延期」と連絡を受ける。せっかくなので、そのまま早朝から家で仕事をする。

 

台風はワクワクするらしく娘も息子もスムーズに登校(息子、台風なのに気圧関係ないのだろうか?)。早々にキリが良いところまで進んだので、最寄りの映画館で『怪物』(監督:是枝裕和)鑑賞。終わると大変な暴風雨だったので、徒歩1分の映画館脇のスーパー銭湯へ。妻と暴風雨の中、屋外サウナと屋外温泉に浸り(我々しか居なかった)、一方的に色んなことを喋り倒す。大雨の中の露天風呂になんだかワクワクした。しゃべり過ぎて腹が減り、仕方なくこのスーパー銭湯で腹ごしらえをする。このスーパー銭湯の食事処は何を食べても美味しくないのだ。その後、1時間ほど爆睡して、夕方家に戻る。

 

6月3日(土)

午前中、いつもの喫茶店で仕事。仕事に行くときはスマホを置いて行くから、喫茶店に置いてあるスポーツ新聞を読むのだが、行きつけのところには私のもっとも信用している「日刊スポーツ」がないのが残念だ。ということは前にも書いたかもしれないが、「日刊スポーツ」の占いは本当によく当たるのだ。ということも前にも書いたかもしれないが、占い好きの同好の士は是非に試していただきたい。

 

午後、AGA治療セカンドオピニオンへ。と言ってもまだ治療を受けたわけではないのだが。しかし、本日伺ったところも、先日のクリニックと流れがほぼ一緒。こうなってくると「え、だいたいこうなの!?」と思わざるをえない。とりあえず、もう一件予約しているところはあるからそこには行ってみようと思う。

 

その後、田端に移動してCINEMA Chupki TABATA(シネマ・チュプキ・タバタ)で、『雑魚どもよ、大志を抱け!』のトークイベントを共同脚本の松本さんと。暴風雨のお足元の悪い中、満席のお客様。感謝しかない。

 

 

6月4日(日)

今日はレンタル先生だが、気圧がおかしいのか息子の脳調もよくない。息子をレンタル先生に託し、送りボランティアをしているYちゃんの運動会を見に行く。保護者ではないので校庭には入れないが、門にへばりついてみているとYちゃんの徒競走が始まった。若干フライング気味だったが、ぶっちぎりの1位。Yちゃんは勉強や集団生活は苦手なのだが、身体能力が高いので、この強みを活かせるとよいなと思う。

 

30分で帰宅すると、息子の調子すこぶる悪し。急遽、レンタル先生と面談。3桁の割り算と漢字に対し、著しい嫌悪感が出ている。気圧の影響もあるし、自我の芽生え、反抗期の入り口の兆しもあり、丁寧に対応していきましょうと話す。息子はひたすら腹ばいになって寝そべっていた。

 

午後から、劇団普通の『風景』を観に三鷹へ。茨城弁の独特のイントネーションの中で、妙に生々しい会話劇が面白かった。親戚付き合いの中で、踏み込んでいそうで、一線は踏み込まないリアルさ。多くの家庭や親族の集まりに見られる風景だろう。これが私の実家、親戚だったら、皆が一線をガンガン越えて踏み込みまくるので絶対にケンカになってしまうシチュエーションだ。しかし、そんな踏み込みまくりの会話劇というのも書いてみたいなあとは思う。

 

せっかく三鷹まで来たのでなにか美味しいものを食べたかったが、家に娘も息子も籠っているので急いで帰宅。

 

6月5日(月)

台風一過。めちゃくちゃ暑い中、娘の運動会へ。娘の出番に間に合えばいいじゃん、とダラダラ用意している妻にめちゃくちゃ腹が立つ。私は運動会には開会式から行きたい派なのだが、妻は全くの正反対。これは運動会に限らずほぼなんでもだ。私はそのイベントなりなんなりに参加するときは最初からいたい。が、妻はできれば参加時間を短くしたいと考えている。お互い歩み寄れない。

 

高校生にもなるとみんな体が大きいので、小学校中学校と違い、迫力があり見ごたえがある。全員リレーや棒倒し、騎馬戦などにかなり興奮してしまう。娘も相変わらず足は速く、全員リレーで2人抜いていた。走り方は美しくないのだが、迫力があるのだ。応援合戦はダンスバトルとお遊戯のコラボで、全国大会に出場するほどのダンス部の子たちの踊りはカッコよくて、「ああ、俺も踊れるようになりたいなあ」と思った。LL BROTHERSのファンだった妻に、「あんたも踊れるようになりなさいよ」と寒いこと言われた付き合い始めのころのことも思い出した。

 

※妻より

中学生時代にファンだった人をバラすのはやめて欲しい。少なくとも足立よりは断然かっこいいことは確かです。

 

6月7日(水)

朝から仕事。夕方AGAクリニック3つ目。いちばんやる気のなさそうなこのクリニックに決めた。過度な営業も特にはしてこない。治療法のコースも1つだけ。ただひたすらに薬を飲んでつける。

 

正直、クリニックの雰囲気はいちばん暗く、なんだかジトっとしていて、先生もとても暗い感じの方で、何人にも説明して沢山の線とか丸とかで訳が分からなくなっている用紙のさらにその上から書いて何やら説明するという状況であったが、とにかくここに決めた。効果が出るまでは半年かかるという。半年後、どうなっているか、ビフォー・アフターの写真を載せたいところだが、露悪的すぎる気もするので今回はやめておく。ただ、是非ともビフォー・アフターやってくれ! という声が届いたらやろうと思います。

 

※妻より

夫はこの期に及んでどこを目指しているのでしょうか……デブ禿げを気にするところは前からあったのですが、最近の気にし方は常軌を逸しています。ジムもサウナもよく行ってるし。何かのスイッチが入ったっぽいです。乞うご期待!?

 

6月8日(木)

この日もCINEMA Chupki TABATAにて松本稔さんとトークイベント。多くのお客さんに来ていただいて感謝。夜、帰宅すると娘がスマホを落として画面バリバリに壊してしまったと半狂乱パニック。部活の連絡も、学校の提出物も、はたまた友達とのコミュニケーションも取れないと泣き叫んでいた。

 

6月9日(金)

夕方、息子の担任の先生より電話をいただく。

「今週は廊下で過ごす時間が長かったです……。勉強への苦手意識がかなり強くなってますね……」とのこと。

 

廊下で過ごせるメンタルの強さはたいしたものだと思うが、社会に出てこれでは通用しないと、つまらないことを言う高校野球の監督みたいなことを思わず思ってしまった。しかし、「仕事イヤだから廊下に座ってまーす!」と言って笑って許して給料もくれる会社はそうそうはないだろう。

 

妻、いろいろと画策していたようだが、娘のスマホは買い替えないと無理という結論に至る。

 

6月10日(土)

私の51回目の誕生日。

 

朝起きて、トイレに行こうとすると、トイレの床に水たまりができていたとのことで、妻が半狂乱になって掃除していた。誕生日の私に「おめでとう」も言わず「お前がウォシュレットレットを長時間使っているからこうなってんだ!」といきなりくる。そんな訳はないと思うし、誕生日にいきなりそんなことを言われて腹も立ち、今日はオンライン会議もあるし、妻を無視することに決める。

 

午後、息子と『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3』(監督:ジェームズ・ガン)を観に行く。キャラクターを1人も知らないにもかかわらず楽しかった。

 

夕方からオンライン打合せ。終わって階下の部屋におりると、妻が手作りのケーキを作ってくれていた。午前中の態度を少しは反省したのかもしれない。ここで食べるのが大人の対応なので、私はここぞとばかりに食べた。とても美味しくて正直びびった。だが24歳のときからずっとくれていたカードがついになしになった。

 

※妻より

反省なんかするわけないです。せっかくケーキの準備をしていたので、もったいないから作ったまでです。カルディのスポンジケーキに生クリーム塗りたくって果物を乗せただけですが

 

6月11日(日)

午前中、いつもの喫茶店で仕事。日曜でもまったく混んでないのが素晴らしい。

 

妻は息子の中学校説明会&娘のスマホ買い替えの手続きで朝から横浜方面へたまたま横浜方面の中学校説明会を申し込んでいたら、妻の友達が横浜方面のソフトバンクSHOPで働いていることが判明し、わざわざ鴨居駅まで行ったらしい)。

 

午後、娘と息子と「M3GAN/ミーガン」(監督:ジェラード・ジョンストーン)鑑賞。面白かったが昔からこの手の映画はよくあったような気もして、もう少しだけ「ああ、もうこんな世の中になってしまっているのか……」というような怖さもほしかった。その後、中野のまんだらけへ行き、息子と娘はなにかマンガを買っていた。

 

17時から私の誕生会ということで、いつも行く中野の焼肉屋を予約していたが、妻は娘のスマホ手続きが遅れていて、予定通りには到着できないと連絡が来た。妻が来るまでに、上タン塩とか特上カルビとか上ミノとか特上ハラミとか5等級なんとか肉とか、とにかく「上」がつくものを徹底的に注文しまくる。

 

ガンガン食べていると妻が到着。息子が開口一番「ママー!ボク、特上タン塩が食べられるようになったよ!」とうれしそうに言う。偏食の息子はカルビ以外は食えなかったのだが(というか、食べてみようともしない)、今日はなぜか「僕もそのお姉ちゃんが好きなやつ食べてみたい」と言い出し、食べさせたら「おいしい!おいしい!」とペロっと食べてしまう、4皿くらいおかわりしてしまったのだ。(息子の特性はその場でおいしいと思ったら、ほぼその日はそれしか食わない)。

 

そんな息子に妻は「食べられるようにならなくていい!」と言いながら、娘にスマホのことを説明すると、途端に口論が始まった。

 

娘は「iPhoneSEなんてありえないから!最低13以上じゃなきゃ嫌だ。今すぐ返してきて!」と酷い態度を取り、妻はコーン茶ハイを一気飲みすると、「お前、アウト! アウトッ!!!! 明日解約!!!!」と大きな声で言って店を出て行った。この間、約10分。

 

「はいキレたー!」と娘も息子もなれたもので、私だけがこの後の展開を思うとドッと疲れてしまったのだが、とにかく3人で焼き肉を食い続ける。

 

※妻より

疲れているのはあなただけではありません。あーいう時は家族全員疲れているのです。

 

3人で帰宅しても妻はいなかった。「本当に解約されたらどうしよう。ママは本当にやるよね」と娘が言うので、まずはメールでいいからさっきの態度を謝れと言うも、娘もなかなかに頑なではあり(私とケンカになったときもそうだ)、「私も悪かったけど〜〜」みたいな出だしのメール。「そもそも自分がスマホを落として壊したくせにその態度はないだろ」という妻の言葉を娘も受け止め、妻もわりとすんなり娘を許して解約は免れた。

 

6月12日(月)

朝、送りボランティアでYちゃんを送っている途中に、Yちゃんが激しい癇癪。自分の思い通りにならなかったことが原因だ。Yちゃんのそんな様子を目の当たりにしたのは初めてだったから、やや驚いた。息子とはまた違った癇癪の出方だ。息子の場合は泣き叫び放心して動けなくなる(そう言えばもう泣き叫ぶことはほとんどなくなり、動けなくなるだけになった)のだが、Yちゃんは激しい怒りをこちらにぶつけてくる感じで、これは大人によっては、手が出てしまうのではないかと感じる。育て辛さからの虐待は、言葉としてはよく聞くようになったが久しぶりに実感した瞬間だった。こういうときに、自分自身のもっとも見たくない部分を見てしまう。

 

その後、喫茶店で仕事をして、昼飯を食いに家に戻ると、トイレの水漏れが直らないため、妻がネットで調べた業者さんが来ていた。一体型の便器のため、便器ごと交換しなければならないらしい。それしか方法がなかったのかは分からないが、17年使った便器なので寿命だそうだ。パッキンの交換で済むと思っていた妻は凹んでいる。便器交換16万5000円(工事費込み)。それだけあればなにができるのか思わず考えてしまった。便器のような必要不可欠なものは医療費のように保険がきけばいいのに。家と食べ物はこの世に生まれた瞬間から持つべきという考えに賛成だが、そこに便器も加えてほしい。

 

誕生日から2日遅れて、「渡し忘れていた」と言って、妻がカードを投げてよこしてきた。渡し忘れていたのか、書き忘れていたのかは妻のみぞ知るだが、うれしかった。内容的には例年以上に説教クサくなっていた。

 

6月13日(火)

午前中、いつもの喫茶店で仕事。午後、シナリオ作家協会の会議に参加して、その後、何人かの方々と飲みに行った。久しぶりに同業者の方々と話すと楽しい。だが、これからシナリオライターがどのように生き残っていけばいいのかという話になると、途端に明るい未来は見えなくなる。映像を作る部署ではいち早くAIにとってかわられる部署でもあるし。

 

6月17日(土)

朝から猛暑の中(35度超え)、息子の中学校説明会へ(片道1時間半かかった)。授業も見学させてもらったがディベートや水泳の授業を見る限り、生徒個々のペースに寄り添った風景が見受けられたのと(このディベートの輪に息子が入れるのか? とは思ったが、見学したのは中学2年の授業だった)、外見もみんな私服で金髪や紫色の髪、腰までの長髪の子などもいてうるさいルールはなさそう。見た目だけでなく生徒の考え方や特性を先生方も受け入れているような雰囲気もあり、公立のような「皆と同じでなきゃダメ」という同調圧力はあまり感じない学校だった。

 

息子を集団生活できる子に変えるのは、息子も親の私たちも大いにストレスがかかるので、とにかく「うーん、君ねえ、5年生になって廊下に寝そべるのはちょっとあれだけどねえ、まあでも君みたいな子もぜんぜんありっちゃありだよ。うん、まあ多分」などと言ってくれるような中学を見つけたいなと思う。いろいろ調べてはいるが、なにか情報ありましたら是非いただけたら幸いです。

 

一度帰宅し、娘と息子にご飯を作り、夕方から妻と横浜シネマリンにて『にわのすなば』(監督:黒川幸則)鑑賞。

 

黒川幸則監督と、妻の黒川由美子さんが製作した映画で、そこはかとないユーモアに包まれた散歩とまどろみの映画というのか、なんだか心地の良い夢を観ているような感覚になる映画だった。前作の『ビレッジ・オン・ザ・ビレッジ』のときにも似たような感覚に陥ったことを思い出した。黒川夫妻と出演者の方々の舞台挨拶も楽しかった。大﨑章監督もいらしていた。

 

皆さんと一杯飲みたかったが、仕事も残っていたので泣く泣く帰宅。23時過ぎに家に着くと、娘は爆睡、息子はギンギンでYouTubeを観ていた。

 

私にとっては今までにあまり観たことがない雰囲気の映画でとっても面白かったです! 左から黒川幸則監督、カワシママリノさん、村上由規乃さん、黒川由美子さん(by.妻)

【映画 にわのすなば GARDEN SANDBOX (garden-sandbox.com)】

 

6月18日(日)

暑い。あまりに暑いので、今日は涼しい映画でも観に行こうと、息子が観たがっていた『ブラック・デーモン 絶体絶命』(監督:エイドリアン・グランバーグ)を観に行く。娘も誘ったが試験間際なので遠慮するとのこと。サメ映画好きの息子は楽しんだようだが私はイマイチだった。サメに迫力がなさ過ぎたのと、崩壊寸前の油田というワクワクするシチュエーションがいきてなかった。

 

観終わり、「昼はなに食べたい?」と聞くと即答で「寿司!」と答えたため、寿司屋に入る。飲み込むように寿司を食べる息子の姿が可愛い。

 

帰宅すると、妻と娘が銭湯に行っていたため、私と息子も銭湯へ。近所の銭湯のロビーには、常連のおじいちゃん達がいつも5、6人で酒盛りしているのだが、息子はその場が好きで、ニコニコしながらおじいちゃんたちとテレビを見て、ジュースを飲んで、つまみをもらっている。私は早く帰りたいのだが……。

 

6月19日(月)

苦手な月曜日にくわえて曇り空低気圧のダブルパンチで息子は起きられず学校はお休み。我々親がいると、どんどん攻撃的になってしまうため(多分、自分でも学校に行けないことが嫌なのだろう)、私と妻も早々に家を出て、いつもの喫茶店で仕事。

 

夕方帰宅すると、息子の調子は回復していた。習い事の柔術にも行って、ゲームの攻略を聞いてきたとのことで機嫌よくベラベラ喋っている。「明日は学校行くから」とのこと。

 

それにしても、現代が不寛容になった感覚もあれば、息子のように学校を休んでも外で遊んだり、習い事に行くのはぜんぜんOKな世の中にもなっているのはうれしい。ただ、「お前、学校休んでたのに、遊んでんじゃねえよ」という同年代の子たちはいるが、親世代でそれを言う人はほとんどいない感覚だ。

 

息子は朝に不調なことが多いのだが、夕方になると元気になるのが、鬱病っぽい症状でちょっと心配になる。とりあえず、夏休みに発達支援センターの予約が取れたので、行って相談してみようと思っているが、発達支援センターといえばあの時の悪夢が蘇らないでもない。(2021年12月7日の日記)

 

息子は学校休んでも元気になるわけではなく、鬱々とどんよりしている。でも、そんな息子の近くにはいつも婆さん猫たちがいるので頼もしい(by.妻)

 

6月21日(水)

朝から仕事。久々に息子の療育に付きそう。息子は療育の一環で3Dプリンターで作品を作っているのだが、なんだかよくわからないもの作ったなと見ていると、なんとかいうマンガのキャラクターらしい。

 

夜、娘の好きな人へのLINE返信文面に時間をとられる。「パパはセンスがない」とまで言われる。さっさと告白しちまえばいいのに……と思うが、告白はあり得ないとのこと。かくいう私も、いわゆる告白というものをしたことがなく、それはこれまでの人生でかなり大きな後悔として残っている。

 

6月22日(木)

朝から仕事。その後『aftersun/アフターサン』(監督・脚本:シャーロット・ウェルズ)鑑賞。すごく良かった。内容とは関係ないが、まだ娘が小さかったころに、2人で岡山県にシナハンに行ったことがある。そのころはまったく仕事がなくて、瀬戸内を舞台とすることが条件のシナリオコンクールに応募しようと思ったのだ。自転車のカゴに娘を乗せてブラブラとしていたのだが、この子を幸せにできるだろうかと川沿いの土手を走っているときに泣いてしまったことを思い出した。4歳くらいだった娘は記憶にないだろうが、もう少し記憶に残るような年齢にときに行っておけば、「あの時のパパってなんだったんだろう」などと少しは思ったりすることもあったかもしれないなどと思ったりした。

 

それにしてもこういうバカンス映画が欧米には多いが、どんなジャンルにせよバカンス映画はなぜか好きだ。

 

6月23日(金)

朝から仕事。夕方、仕事でお世話になったI監督夫妻と夫婦で会食。飲んだりするのは初めてに近いのだが、あっという間に時間も過ぎ、終電間際までとても楽しく過ごさせてもらい、運転免許を取る約束だけはした。

 

6月24日(土)

早朝の5時から仕事。本日は茨城県のあまや座さんに舞台挨拶に行くためなのだが、疲れも溜まっていたので10時にいつも行くマッサージに行ってしまった。90分、ひたすらに右肩甲骨の身をほぐしまくっていただく。私は疲れの90%が右の肩甲骨にたまるのだ。

 

マッサージが終わりスマホを観ると妻より「JRのサイトがダウンしてるから、池袋のみどりの窓口並んでくる」とのLINEあり。本日行く「あまや座」の最寄りの瓜連駅が無人駅だから紙の切符を取る必要があり、ネット予約していたが発券できないかも、とのこと。それは妻に任せ、家で青汁とユンケルを飲んで駅に向かう。無事、チケットが取れたとのことで、上野駅構内で寿司を食べ、特急に乗車。瞬間爆睡。

 

2時間後、あまや座に着き、松本稔さんとトークイベントを。あまや座は「スーパーあまや」の跡地に作ったミニシアターだ。事務所は廃バスを改装した秘密基地のような雰囲気で、そこに住みたくなるようなところだった。若い大内支配人が1人で立ち上げたらしい。素敵な作品のラインナップの中に、『雑魚〜』を入れていただき大変ありがたい。その後、大内支配人と司会をしてくれたタポシさん、いつもいろんな映画祭でお会いする小薗夫妻たちと共に、酒蔵がやっている蕎麦屋さんで蕎麦をいただき、閉店まで話して帰宅。今日は終電前に帰れた。

素敵な映画館でした!お客様も温かくて嬉しかったです。是非また来たいです(by.妻)

 

左から脚本の松本稔さん、司会の山田タポシさん、大内支配人です(by.妻)

 

6月25日(日)

今日は息子と映画に行く約束をしていたのだが、昨晩泊まらせていただいていたママ友から「映画やめて遊びたいって」とLINEが来たので、午前中は仕事をして、午後から『私、オルガ・へプナロヴァー』(監督:トマーシュ・ヴァインレプ、ペトル・カズダ)鑑賞。

 

対人関係の築き方が苦手な主人公の若い女性が、どんどん孤立していき、最終的には「復讐してやる」と言ってトラックで集団殺人をする実話。どうすればその人を孤立させずに済むのかが大変難しい。本人が人付き合いが苦手で、攻撃的に出てしまいがちだから、周囲も関わらないように避けてしまう。でも、放っておくと、本人はどんどん孤立し、被害者意識も増幅し、恨みや怒りの感情に発展してしまう。とにかく暗澹たる気持ちになる映画で、私はやはり映画というのはこういった現実をこのくらいきつく描きながら、でも、なにか希望という言葉を使うと安易だが、とにかく絶望と現実を見せつけるだけでは、人に響かないような気がするのだ。

 

「それを誰が観たいの?」とプロデューサーから言われかねない(しかし、この「誰が観たいの?」って死ぬほど嫌いな言葉だ。その企画を出した本人が観たいに決まっている)。

 

今、私も「イヤな人」(仮)というタイトルの物語を考えている。(こうしてこの場に書けば、書ききらないと恥ずかしいから書く)。「あの人って、どうしてあんなにイヤな人なんだろう? 人に対してなんであんなに攻撃的なんだろう? しかも弱い人に」という人が人生の周囲にいたことがある。当時は「なんだこいつ? ただのバカで最低の奴かな」などと思っていた(ざっくりとだがアメリカンニューシネマの主人公たちは、このような人間をちょっとヒロイックに書き換えていたものが多いと思う)。だが、いろんなことが解明されてきて、もはや人間を正体不明のなにかで描くことは無理だと思うし、したくない。そのスタート地点から、ではイヤな人がどう生きているのか、生きていくのかという話を書きたくて、モヤモヤと悩んでいるのだが、なかなかエンターテインメントとして書くのが私の脳では難しい。でも、今やるテーマなのではないかと思っているからどうにか、最低でもシナリオの形にしたいと思っている。

 

帰りにスーパーでタイムセールになったホタテとマグロと鯛と青ソイとヒラメなどのお刺身を大量に買って帰った。娘と息子も大喜び。夜、息子のおすすめの韓国ホラー映画『第8日の夜』(監督:キム・テヒョン)を鑑賞。

 

6月26日(月)

昨晩はご機嫌な息子だったが、やはり月曜の朝は不調で鬱モード。仕方がないので学校は休み。なので、妻も私も終日、外で仕事。とにかく脳が不調なときは妻も私も、息子と距離を置くようにしている。お互いが傷つけあってしまいそうで。それが正解かどうかは分からないが。

 

6月27日(火)

午前中、いつもの喫茶店で仕事。午後、近所のチョコザップに行き、YouTubeで高校野球を見ながら30分走って、チョコザップの近くの銭湯でサウナ。その後、再度違う喫茶店で仕事。バナナジュースを飲む。

 

夜、坂田聡さん、宇野祥平さん、清水伸さんと飲む。話題はエロ、ハゲ、愚痴、たまに熱き語り。皆さんだいたい同年代なので話もはずむ。とても楽しいひと時でした。

 

【妻の1枚】

意中の人へのLINEの返信相談が長すぎる娘に、「もうあきらめちゃいなよ」と余計なことを言い、その後フルボッコされた息子。 私と夫は返信のネタが尽きました。 暑くて猫達は溶けてます(by.妻)

 

【過去の日記はコチラ】

 

【プロフィール】

足立 紳(あだち・しん)

1972年鳥取県生まれ。日本映画学校卒業後、相米慎二監督に師事。助監督、演劇活動を経てシナリオを書き始め、第1回「松田優作賞」受賞作「百円の恋」が2014年映画化される。同作にて、第17回シナリオ作家協会「菊島隆三賞」、第39回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。ほか脚本担当作品として第38回創作テレビドラマ大賞受賞作品「佐知とマユ」(第4回「市川森一脚本賞」受賞)「嘘八百」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」「こどもしょくどう」など多数。『14の夜』で映画監督デビューも果たす。監督、原作、脚本を手がける『喜劇 愛妻物語』が東京国際映画祭最優秀脚本賞。現在、最新作『雑魚どもよ、大志を抱け!』は2023年3月24日に公開。著書に『喜劇 愛妻物語』『14の夜』『弱虫日記』などがある。最新刊は『したいとか、したくないとかの話じゃない』(双葉社・刊)。

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