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町をまるごと楽しむディスティネーションホテル「NIPPONIA 佐渡相川 金山町」

  • 2025年5月28日
  • CREA WEB

 金銀山の町として知られ、最盛期には10万人が暮らしたと言われる佐渡・相川。今では人口は5000人を切る小さな港町に、静かに再生の灯がともりつつあります。その町に生まれた一軒のホテル「NIPPONIA 佐渡相川 金山町」は、ただ泊まるための場所ではありません。町全体を“ミュージアム”として再発見し、歩き、触れ、感じることを楽しむための拠点。その滞在は、きっと記憶に残る時間になります。


通過型の観光地から、“3日間の物語”が生まれる町へ


相川のメインストリートだった京町通り。今もなお、昔の面影を残している。

 かつて金銀の採掘で栄えたこの町には、江戸時代に全国から多くの人々が移り住み、にぎわいを見せていました。いま、相川地域での観光は主に「佐渡金山」を中心とした“3時間の通過型”が主流だと言われていますが、NIPPONIAを開発運営した相川車座ではそれを“3日間の滞在型”に変えていこうという構想があります。

 金銀山をひとつのきっかけに、町を歩き、路地を曲がり、人と出会いながら、旅人自身が物語の主人公になるような体験をつくっていきたい。その想いから生まれたのが、「町ごとミュージアム」という発想でした。

 町を歩いてみると、金の採掘で使われていた石臼が石垣に転用されていたり、全国から集まった人々が築いた坂道の町並みがそのまま残されていたり、佐渡の能文化の発祥とも言われる春日神社能舞台があったり。さらには、佐渡おけさの唄声が今もどこかから聞こえてくる。そうした日常はまるでミュージアムのよう。


相川金銀山から奉行所を結ぶメインストリートには、18世紀から明治の初頭まで200年渡り、相川に時刻を知らせてきた鐘楼も。

 もちろん、相川の夜を彩る飲食店やスナックもまた、“町の展示物”のひとつです。地元の味を求めて、浴衣姿でそぞろ歩く。そんな旅の風景を取り戻したいという思いから、宿の浴衣も“昔ながら”の柄を採用しているのだそう。


歌人であり文筆家の上坂あゆ美さんは、実は大のスナック好き。佐渡市相川下戸町にある「スナックJ1」にて乾杯。店内には街の人たちが集まり、楽しいトークが飛び交いぎわっていました。

まるでタイムスリップしたかのような「スナックJ1」の店内。

チェックインは、町の“玄関”であるシアターから


「きらりうむ佐渡」では4つのシアターで佐渡金銀山を代表する3つの鉱山とその歴史がわかる映像を放映するなど、多様な展示で金銀山を解説。私たちを金銀山の世界へ誘ってくれる。

 チェックインを行うのは、町の観光案内所を兼ねた施設「きらりうむ佐渡」。ここでは、金銀山の成り立ちや町の歴史を、臨場感あふれる映像で知ることができます。実はこの施設も、宿泊プランの一部。入館チケットは宿泊料に含まれているため、客室へ向かう前にこの“町のシアター”を体験すれば、ぐっと豊かな旅へと変わっていきます。

「着いたらすぐにお部屋へ」という旅の常識は、ここでは少しだけお休み。チェックインのあと、希望すれば地元のガイドさんと一緒に、客室までのわずか3分の道のりを、ゆっくり約1時間かけて歩く“まちあるきツアー”に出かけることもできます。

時間のレイヤーを重ねて。細部に宿る、暮らしと美の記憶。


相川の町の中心に位置する「NIPPONIA 佐渡相川金山町」は相川観光の拠点に最適だ。

「NIPPONIA 佐渡相川金山町」は、古民家を改造して作られた4棟7室の分散型ホテル。中心となる建物の客室に用いられているのは、かつて瀬戸物を焼き、販売していた町家。相川に残る典型的な長屋造りの建物で、通りに面した土間は店舗として、奥には神棚や階段を備えた住居空間が続いていたといいます。その伝統的な構造は、現代的なリノベーションの中にも丁寧に残されています。


土間、神棚、船箪笥、火鉢の名残……空間のあちこちに、その家が生きていた時間が静かに息づいている。

「ここにあるものは、できるかぎりこの家、この町の中から再利用しました」と語るのは、ホテルを運営する株式会社相川車座の雨宮さん。新しい壁材にも、佐渡を代表する樹木「アテビ(正式和名はヒノキアスナロ)」を利用。佐渡産の素材を選んでいます。


防菌・防虫効果もある、森林浴のような清々しい香りのヒノキアスナロの壁。壁前に飾られている船箪笥も、改装前のこの建物から出てきたものだそう。

建物の木材をところどころ再利用し、もともとあった土壁も生かしている。

建物自体が語りかける、過去と今が交差する客室たち


客室「格子街道−KOSHI KAIDO−」。

 客室のあちこちに、過去と現在が重なり合うような“手の跡”がそっと残されています。たとえば、天井を見上げると気づく、独特な木の重なり。「鎧張り」と呼ばれるこの工法は、板を段違いに重ねていくことで、雨を防ぎながらも美しい陰影を生み出します。


客室「舟−FUNE−」は相川の古民家に特徴的な船底天井の客室。

 本来は外壁に使われることが多いこの手法を、あえて天井に取り入れたのは、地域の大工さんのアイデアから。光と影がゆるやかに揺れるその天井は、どこか舟底を思わせるような穏やかなラインを描いていて、見上げるたびに静かなやすらぎを感じさせてくれます。


客室「眺蔵−NAGAME GURA−」。風が強い相川特有の「内蔵づくり」をリノベーションした客室。

客室「眺蔵−NAGAME GURA−」。1階の蔵の重厚な内蔵入口から入室し、内蔵を抜けて、客室から蔵全体をのぞむ。

客室「眺蔵−NAGAME GURA−」。かつて内蔵として使われていた空間は、当時の面影を丁寧に残しながら、特別な場所へと生まれ変わっている。

 障子の代わりにそっと設えられた「すだれ障子」も、かつてこの家に眠っていた素材を使って、大工さんがひとつひとつ手作業で仕立てたもの。風を通しながら、やわらかく光を受け止めるその姿には、エアコンのなかった時代の知恵と、暮らしに寄り添う工夫が息づいています。


客室「窯−KAMA−」。ここが無名異焼の窯元だったことを活かし、客室にしつらえられた。この特別な一角は、もともとの電気窯を活かしてつくられたもの。

 ここで紹介した、フロントにあたる棟にある客室4室の他に、1棟貸しの離れが3室。それぞれが、元々あった古民家の個性を活かした設えになっていて、個性豊かな客室ばかり。何度も佐渡を、そして相川を訪れたくなる理由にもなってくれます。

海を望む茶屋でいただく、籠入りの朝ごはん


京町亭で景色を眺めながらの朝食は贅沢のひとこと。自室で朝食をいただくこともできる。

 朝の澄んだ空気の中、海を見渡せる「京町茶屋」まで運ばれてくるのは、地元の食材で丁寧に作られた籠膳の朝ごはん。島内でしか手に入らない「お達者米」を使用し、ふっくらと握られたおにぎりや出汁のきいた味噌汁を、波音をBGMにゆっくりと味わえば、目覚めたばかりの体と心に、じんわりと滋味が染み渡っていきます。


お米の確かな旨みを味わえる塩むすび、味噌汁、4種類のおかずは日替わりで毎日違う味を楽しめる。

京町茶屋から見える海。波音がただただ心地よい。

町とつながる滞在は“また帰ってきたくなる”宿に。


離れの一棟貸「時鐘楼−JISHORO−」。

 NIPPONIA 佐渡相川金山町には、もうひとつの大きな特徴があります。それは、“町ごとホテル”という考え方。フロント業務は観光案内所に、ドリンクの提供は近くの酒店に、食事は町の飲食店に──。ホテルの機能をあえて町のなかに分散させることで、宿泊する人と地域のあいだに、自然な関わりが生まれていくのです。

 ホテル運営を行うまちづくり会社相川車座には相川の町を知り尽くした多くのキーパーソンが関わっています。そんな相川の未来を思う人たちが、人と町、人と人とのつながりを大切にしながら、静かに、丁寧に、宿の時間を紡いでいます。


NIPPONIA 佐渡相川金山町の目の前にある、「リカーショップきたむら」。チェックインのときにもらったドリンクチケットを持っていき、「これに合うおつまみって、どんなのがありますか?」なんて会話も。そんな何気ないひとときに、旅人と町との新しいつながりが生まれていきます。

 NIPPONIA 佐渡相川金山町に泊まるということは、この町の時間の流れを、自分の中に取り込むことなのかもしれません。まち全体が舞台となり、宿が町と旅人の橋渡しをする──。この場所でしか得られない時間と出会いが、あなたの旅の記憶をやさしく照らしてくれるはずです。

NIPPONIA 佐渡相川金山町

所在地 新潟県佐渡市相川2-23
電話番号 050-1720-9976
部屋数 7室
料金 1泊2食付き2名1室利用時(1名様)20,000円〜
チェックイン15:00〜21:00まで/チェックアウト11:00
https://nipponia-sado.jp

文=齊藤美穂子
写真=佐藤 亘

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