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八王子発のリキュール「八王子クラフトリキュール」が5月1日、蒸溜酒(スピリッツ)を対象とした英国の専門誌「Spirits Business」が主催するコンペティション「The Asian Spirits Masters 2025」の「Liqueurs Made in Asia」部門で金賞を受賞した。(八王子経済新聞)
金賞を受賞したクラフトリキュール
「八王子クラフトリキュール」は、「Bar 洋酒考」(八王子市三崎町)のオーナーで、バーテンダーの島村悟さんが昨年立ち上げたリキュールのブランド。今回は同ブランドのリキュール「mulberry & hops 28%」(500ミリリットル、2,700円)がアジア産リキュールの部門で金賞を受賞した。日本企業として唯一の受賞で、桑の実とホップを材料としていることから、「esoteric and unusual, but pleasant(難解で珍しいが心地良い)」と評価された。
島村さんはバーテンダーの仕事をしながら、昨年6月に酒造免許を取得。万町にあるアパートの一室で酒造りを始めた。昨年9月に同リキュールと、ジン「翠靄(すいあい) ~sui-ai~wet Gin 40%」(500ミリリットル、2,900円)の2商品の販売を始めた。
リキュールの材料には八王子産の桑の実とホップを使う。ラベルのデザインは八王子で活動する高校生アーティストのsaoriさんが手がけた。八王子の地域振興を意識しており、3月には日本遺産「霊気満山高尾山 ~人々の祈りが紡ぐ桑都物語~」の関連商品に認定。八王子市は現在、「ふるさと納税」の返礼品として登録するよう国に申請しているという。
酒造は5年以上前から考えていたという島村さん。「コロナ禍前から考えていたが、コロナ禍で飲食店がかなりの打撃を受けていた時にはリスクヘッジの意味合いも込めて、より強く製造側に立ちたいと思うようになった。リキュールの最低生産量が6000リットルなので、それを造ることができる場所を免許の申請をする前に押さえておかないといけないし、作る機材や販路も目論見書の中に入れないといけない。1年がかりで製造にこぎ着けた」と話す。
今回、島村さんはリキュールを同賞に応募した。「カシスほど甘くなく、カンパリほど苦くないリキュールに仕上がっている。一度飲んだ方であれば親近感を持ってくれるが、手に取ってもらうには知って貰う必要がある。オリンピックと一緒で参加することに意義があると思い、金賞が取れるとはまったく思っていなかった。品評会などにも出展してこなかったことからお客さまも『いきなり海外か』などと驚かれることが多い。賞を取ったことで引き合いも増えた」と話す。
今回のリキュールを生かしたオリジナルカクテル「八王子Geisha(ゲイシャ)」のレシピも開発・公開しており、「お客さまからは見た目や味わいが芸者のイメージとマッチしていて、おいしいと評価いただいている。八王子に来ると『八王子Geisha』をどこの店でも出しているようになればうれしい」と島村さん。
八王子の中心市街地に醸造所を設けていることについて、「八王子の広いエリアの中でも、人が集まる場所に工場があることは価値があのではないかと思った」と島村さん。バーテンダーの仕事との両立については、「飲食業と製造業を並行として進めていくのは、時間の面でも身体面でも難しいところがある。しかし、農家から仕入れ、私が加工し、その意志を継いで店が販売してくれており、この人から人へと継いでいくところは大事にしていきたい」とも。
当初はリキュールのみを作る予定だったが、「バーテンダーとして店に立つ中、桑の実が知られておらず、リキュールが何か分からない人もいるのを知って、リキュール一本では勝負にならないかもしれないと思った。クラフトジンは注目を集めているジャンル。試作を繰り返し、世の中の物とは逆転の発想をする製造工程を見つけることができ、桑の葉を使ったクラフトジンを商品に入れることにした」と島村さん。
「地産地消として八王子の周辺で消費されることが良いと思っている。全国、世界へと広範囲に広めようとはあまり思っていない。八王子の周辺で売り切れるのが理想だし、多摩に来なければ飲めない、買えない形にしたい。八王子を知っていただくきっかけになれば。周辺の市町村であればどんな店でも良いので、使いたい所があったら声をかけてほしい」と話す。