カリスマ書籍PR・黒田剛さんの“非効率”な仕事を支える〈働くのがもっと楽しくなる〉極上映画7選

  • 2025年5月5日
  • CREA WEB

ゴールデンウィークに制覇したい!

 大型連休でほっとしている人、連休明けからもっとがんばろう! と張り切っている人。気分転換に極上の映画はいかがでしょう。

 初著書『非効率思考』(講談社刊)を通して、その非効率ながらうまくいく仕事ぶりに注目が集まっている書籍PR・黒田剛さん。一歩を進める勇気が欲しいときや、壁にぶつかったときなどに同じ映画を何度も観るといいます。

 相手に「伝える」ためには“非効率”に動くべし、と語る黒田さんは、「仕事」という枠を超えて楽しく仕事をする名人。心の糧になり、働くことがもっとハッピーになる映画を紹介してくれました。

 連休明けの仕事を楽しくするためにぜひ観てほしい作品ばかりです!


人生に“変化”をつけて最高のゴールへ

『幸せのちから』


『幸せのちから』。

「僕は最初、営業マンとして働いていたのですが、31歳のときに転職しようと思い立ったんです。

  結婚して子どもも生まれた頃で、もちろんそのままでも十分幸せだった。ただ、営業として自分なりのやり方で成果を出し始められた頃で、次はもう少し大きな世界で挑戦してみたいと、思い切って転職活動をすることにしたんです。

 そのころに観たのがこの『幸せのちから』。主人公、ウィル・スミス演じるクリスも同じくセールスマン。ただ、彼の場合は奥さんが出て行ってしまってひとりで息子を育ててるんだから、もっと大変ですけどね。

 クリスは、もともとやっていた医療器具のセールスから一流の証券会社に転職するために、ひとりで子どもを守りながら、とにかく行動し、頭も使う。そして最後に、素晴らしいゴールが待っていた! これが実話をもとにしているというのも、転職をしようとしていた僕にはものすごく響きました。

 つまり、変化することってすごく大変なんです。死に物狂いで頭も体も動かす。だからこそ、素晴らしいゴールにたどり着けるんだと思います」(黒田さん)

●あらすじ●

1980年代。妻と5歳の息子と3人で暮らしていたセールスマンのクリス・ガードナーは家賃も払えず、どん底の生活を送っていた。ついには、妻が出て行き、家を追い出され、貯金も底をついてしまう。そんなクリスが最後に選んだ道は自分の才能を信じて、一流証券会社へ入社することだった。しかし6カ月の無給のインターンを経て、正式採用されるのはただひとり。愛する息子のため、奇跡を信じてクリスの過酷な戦いの日々が始まった。

『幸せのちから』

監督:ガブリエル・ムッチーノ
出演:ウィル・スミス、ダンディ・ニュートン、ジェイデン・クリストファー・サイア・スミスほか
2006年/アメリカ/117分

需要なくして供給はない! ディカプリオの“伝える力”

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』


『ウルフ・オブ・ウォールストリート』。

「レオナルド・ディカプリオがジョーダン・ベルフォートを演じ、若くして成功した彼の破天荒な半生を描いたストーリーです。

 彼の一番すごい才能は、いいことでも悪いことでも、人の心をつかみ、動かせること。

 名シーンのひとつに、彼が部下たちに『ここにあるペンを俺に売ってみろ』と言う場面があります。部下たちがペンの素晴らしさを必死に伝えようとするのですが、それじゃあ、売れない。彼の出す正解は『ペンのない人に名前を書かせる』、つまり、大事なのは“需要”なんです。

 これって、僕が営業時代から一貫して相手に聞いている“お困りごと”と一緒。だから、原点に返りたいときにはこの映画を観ます。営業やマーケティングの仕事をしている人にはぜひ観てほしい作品です。

 3時間ありますが、僕は何度観ても楽しくてあっという間に感じます。ただし、景気がいいときのジョーダンはひどいこともたくさんするので、そこは要注意(笑)」(黒田さん)

●あらすじ●

ウォール街には数々の金にまつわる逸話があるが、その中でも飛び抜けてドラマチックなのがジョーダン・ベルフォートの物語。26歳という若さで証券会社を立ち上げ、年収およそ49億円を稼ぎ出した彼は、一躍成功者の仲間入りを果たす。しかし、派手な浪費と放蕩の末、36歳で全てを失い、楽園から追放されることに。成功と破滅を極限まで体現した彼の破天荒な人生を映画化。

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、マーゴット・ロビーほか
2014年/アメリカ/179分

“常識を疑う”ことが未来を切り拓く!

『きっと、うまくいく』


『きっと、うまくいく』。

「この映画が作られたインドは、教育システムを改善して、テクノロジーで世界に挑んでいます。ただ、一方では、そのひずみによって精神的に追い込まれたり、自殺してしまったりする人も多いんです。

 この物語は、インドの名門工科大学で出会ったランチョー、ファルハーン、ラージューの3人を中心に進んでいきます。その学生生活で起きる物語と、10年後、卒業してから行方不明になってしまったランチョーを、あとのふたりが捜すという物語が並行して描かれます。

 ランチョーは大学生活の中でさまざまな“発明”をして、仲間を救います。僕が特に好きなのは、秀才だらけの大学でも天才と呼ばれるランチョーが、あんまり先生の話をこねくり回すので、『じゃあ、お前が2時間講義を受け持ってみろ!』と命じられるシーン。

 ランチョーはもちろん何も用意してきていませんが、黒板にものすごく長い英単語を書き、生徒たちに『この2語から例文を書いてください』というお題を出します。でも、誰もその意味をわからない。だって、それはランチョーが友だちの名前をもじって作ったオリジナルの言葉なんですから! 教室は大爆笑に包まれます。

 “発明”は権威主義の大学で多くの人の運命を変えていきます。そして、10年後のランチョーも……。

 大事なのは“常識を疑う”ってこと。ゼロをイチにするのに欠かせません。まあ、難しいことを抜きにしても、タイトル通りとってもハッピーな作品なので、すべての人に観てほしい!」(黒田さん)

●あらすじ●

インドの名門工科大学ICEで出会った型破りな自由人ランチョーと、夢に悩むファルハーン、神頼みのラージュー。彼らの学生時代の友情と成長を描きつつ、10年後、行方不明となったランチョーを捜す旅が始まる。学歴社会や教育問題を背景に、人生の本質を問いかける感動の物語。「きっと、うまくいく」という前向きなメッセージが心に響く。

『きっと、うまくいく』

監督:ラージクマール・ヒラーニ
出演:アーミル・カーン、カリーナ・カプール、R・マーダバンほか
2009年/インド/170分

やっぱりデータは大事。でも扱うのは人間

『マネーボール』


『マネーボール』。

「大好きなブラッド・ピットが主演です。僕はこの作品のブラピみたいに話すために毎日英語の勉強をしています(笑)。かっこいいだけじゃなくて、これもまた素晴らしい作品なんです。

 データを重視して資金に乏しい野球チームを盛り返すというストーリー。
 データって、とても大事なんですよ。本だって、購買層の把握やメディアPRの効果測定など、感覚ではなくて、データ分析が必要です。この工程は、僕も大切にしています。

 ただ、データを扱うのは人間なんです。データもちゃんと使えて、感覚も感情もある。それが理想だということを教えてくれる映画なんです。

 もうひとつ、電話での交渉のシーンもぜひチェックしてほしい。
 今はメールでのやりとりも多いですが、電話のほうが話が早いこともありますよね。野球チームのGMも僕も、AさんとBさんをつなぐことが多い仕事ですが、その2本の電話の間でどんなふうに動くものなのか、ちょっと参考にしてもらうと面白いかもしれません」(黒田さん)

●あらすじ●

オークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャー、ビリー・ビーンが統計学「セイバーメトリクス」を用いて、資金難のチームを改革する実話をもとにした物語。従来のスカウト手法を覆し、データ重視で選手を選抜。周囲の反発を乗り越え、前例のない20連勝を成し遂げた。スポーツと経営の革新を描いた作品。

『マネーボール』

監督:ベネット・ミラー
出演:ブラッド・ピット、ジョナ・ヒル、フィリップ・シーモア・ホフマン、ロビン・ライトほか
2011年/アメリカ/133分

変化を求め、人とつながろう!

『AIR/エア』


『AIR/エア』。

「最近観て、ビジネスパーソンとしてぐっときた映画です。

 この映画で描かれるのは、あのエアジョーダンが誕生するまでの実話。ナイキ側と、若かりし日のマイケル・ジョーダン側との交渉劇がいいんです! この交渉の結果、ある大革命が起きる。それまでのスポーツ界の歴史がひっくり返った瞬間に興奮します。意外なんですが、このエアジョーダン誕生までは、ナイキは米国でも人気がなく業績不振の会社だったんです。

 そして、そのブレイクスルーにあったのは、変化を求める人間同士がつながったことだったんですよ。それこそが起爆剤になっているんです。

 出版界も厳しい時代といわれるけれど、突破口はある、と僕は信じています。もちろん他の業界も同じです。『どうせ何をやっても変わらない』ではなくて、変化を求める人同士でつながって動いていくことで、未来はよくすることができる、と勇気をもらえる映画です!」(黒田さん)

●あらすじ●

1980年代、ナイキのバスケットボール部門は業績不振にあえいでいた。立て直しを命じられた社員ソニーは、無名の新人だったマイケル・ジョーダンに目をつける。しかし彼はNBAデビュー前で、他社のファンという不利な条件。ソニーは情熱と独創性で彼を説得し、前代未聞の契約に挑む。負け犬と呼ばれた男たちが挑む、運命をかけた逆転劇が始まる。

『AIR/エア』

監督:ベン・アフレック
出演:マット・デイモン、ベン・アフレック、ジェイソン・ベイトマンほか
2023年/アメリカ/112分

どんな仕事にもスポットライトを当てる

『スクール・オブ・ロック』


『スクール・オブ・ロック』。

「無職の主人公・デューイが、教員免許を持つ友人になりすまして名門小学校の先生になり、勉強は教えられないから音楽やるぞ! バンドやろうぜ! って周りを巻き込んでいくお話。感動のサクセスストーリーなんだけれど、僕が『うわ〜っ』と思ったところはもうひとつあるんです。

 それは、デューイが、クラスのひとりひとり全員に役割を与えたところ。バンドってギター、ベース……って割り振ってもすぐ終わってしまうじゃないですか。

 彼らはとてもまじめな子どもたちなんで、『私はなにをやればいいでしょうか』となる。そこでデューイが、服を作れるなら衣装係をやってくれ、校長先生が来るかもしれないから見張りを頑張れ、と役割を与えると、みんな張り切っていくわけです。

 最高なのはラストのバンドコンテストのシーン。当日の急な曲変更で不安になっている照明係の男の子に、『お前ならできる。自分でアレンジしてやってみろ!』とデューイは背中を押すんです。そして演奏が大成功をおさめたあと、デューイは『やったな!』と照明係の子を抱き上げる。

 僕のPRの仕事も、そして多くの人の仕事も、自分にスポットライトが当たるわけではない。でも、みんな一生懸命やっている。リンクレーター監督が、そういう普通は見えない努力をしっかり描いてくれたのがうれしいですよね。どんな仕事も必要とされていて、それが喜びあることを改めて感じさせてくれる映画です」(黒田さん)

●あらすじ●

落ちぶれたロックミュージシャンであるデューイが、小学校の教師になりすまし、友人の代わりに授業を行うコメディ映画。デューイは、生徒たちにロック音楽を教え、バンドを結成させる。彼は音楽を通じて、生徒たちに自己表現やチームワークの大切さを伝えるとともに、彼らからも多くのことを学んでいく。最終的に、生徒たちの成長とデューイの情熱が感動的に描かれる。

『スクール・オブ・ロック』

監督:リチャード・リンクレイター
出演:ジャック・ブラック、ジョーン・キューザック、サラ・シルバーマン、マイク・ホワイトほか
2003年/アメリカ/108分

相手にイメージさせることの大切さ

『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』


『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』。

「『スクール・オブ・ロック』と同じリチャード・リンクレイター監督の作品ですが、こちらはしっとり。はじまりのシーンから、名画の予感しかしません。『非効率思考』にも書いたんですけれど、繰り返し何度も観ている作品です。

 列車の中で偶然出会った男女、ジェシーとセリーヌの物語。僕が最高に好きなのは、セリーヌに一緒に列車を降りてほしいジェシーが、彼女を誘うのではなく『もし君が僕と一緒に列車を降りたらどうなるか?』と彼女に想像させるシーン。結果、彼女は彼と一緒に列車を途中下車して、朝まで過ごすことを選びます。

 つまり、相手に想像させることが、相手を動かすことにつながる。だから、僕は、打ち合わせやメール、企画書では、本の内容の説明はしません。『もし、この企画を実現させるとしたら、何が必要か?』ということを相手がつい想像してしまうような提案を心がけてるんです。これはPRはもちろん、どんな仕事でも大切なことだと思っています。

 この作品は『ビフォア・サンセット』『ビフォア・ミッドナイト』と続きます。どれも、大きなドラマが起こるわけではない会話劇です。だからこそ、日々のなんということもない会話の中で、いかに相手の心を動かすか、というヒントが満載なんです。ぜひシリーズで観てみてください」(黒田さん)

●あらすじ●

パリ行きの列車で偶然出会ったアメリカ人青年ジェシーとフランス人女子大生セリーヌ。翌朝の飛行機で帰国するまでのひと晩を共に過ごすことになるというものだ。ウィーンで下車したふたりは街を歩きながら、人生や恋愛について語り合い、次第に惹かれ合っていく。限られた時間の中で育まれる感情の変化が、自然な会話と美しいウィーンの風景とともに描かれている。

『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』

監督:リチャード・リンクレイター
出演:イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー、アーニ・マンゴールド、ドミニク・キャステルほか
1995年/アメリカ/105分

黒田剛(くろだ・ごう)

書籍PR/非効率家。株式会社QUESTO代表。1975年、千葉県で「黒田書店」を営む両親のもとに生まれる。須原屋書店学校、芳林堂書店外商部を経て、2007年より講談社にてPRを担当する。2017年に独立し、PR会社「株式会社QUESTO」を設立。講談社の『妻のトリセツ』(黒川伊保子)は、シリーズ70万部を超えるヒットを記録。『いつでも君のそばにいる』(リト@葉っぱ切り絵)をはじめとする葉っぱ切り絵シリーズは30万部を突破。『続 窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子)は、発売2ヵ月で50万部突破。その他、KADOKAWA、マガジンハウス、主婦の友社、岩崎書店など、多くの出版社にてPRを担当。非効率ながらも成果を出す独自の仕事術をセミナーなどを通して伝えている。


非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方

定価 1,760円(税込)
講談社

文=CREA編集部

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