山梨と言えば、富士山や果物。だけではありません!
山梨の南西部に位置する「南山梨」エリアは、日本三大急流のひとつである富士川が中央を流れる南アルプスの山々が連なる自然豊かな地域。豊かな自然と親しむ、登山やハイキングといったネイチャーアクティビティを楽しむことはもちろん、南山梨特有の文化に触れることができます。
そんな南山梨をなんとファッションブランドのBEAMSがプロデュース! 南山梨を朝から目一杯楽しむ”朝活”ツアーが開催されました。心も身体もリフレッシュできる山梨の旅へと出発です!
身延山久遠寺(みのぶさんくおんじ・正式名称は身延山妙法華院久遠寺)は日蓮宗の総本山。鎌倉時代に日蓮宗の祖師・日蓮聖人によって1274年に開かれた古刹です。重厚な総門から参道を通り、278段の菩提梯と呼ばれる階段を上ると荘厳な本堂が現れます(バリアフリー対応として、斜行エレベーターや、山頂までつながるロープウェイも整備されている)。
境内には本堂の他、明治14年に再建された日蓮聖人を祀る「祖師堂」、2009年に明治ぶりに復元・再建された五重塔などがあります。境内にあるしだれ桜は有名で、桜の季節には多くの人でにぎわうのだそう。
750年もの長きにわたり歴史を紡いできた身延山久遠寺から朝活ツアーはスタートします。
朝のお勤めの際、是非みてほしいのが大鐘を鳴らす様子。徳川将軍の側室が寄進したという大きな鐘を全身を大きく使って撞くその姿は圧巻です。
鐘が鳴るのは朝と夕方の一日二回。大晦日のみ、除夜の鐘として一般の方も撞くことができるそうです。一般の人は複数人でないと重たくて鐘を鳴らすことができないのだとか。
身延山、そして身延の町に朝を告げる鐘の音。江戸の時代から変わらぬ鐘の音が、ひんやりとした朝の空気を伝って鳴り響きます。山の朝は春でも冷えるので、少し厚着することをおすすめします。
朝のお勤めは5時半から本堂で行われます。本堂に大太鼓の音が鳴り、法衣を着たお坊さんがそれぞれの位置につくと、お勤めの始まりです。
大太鼓のリズムに合わせ、参加者も一緒に「お題目」を唱えます。広々とした本堂に太鼓の音とお題目が響き渡り、体の芯が震えるような気分に。お題目は慣れていないと難しく感じるかもしれません。一生懸命文字を追いながら、ほかの人と声を揃えて読むことで自然と無心になっていくようでした。
読経を終えた後、本堂の天井を見上げてみると、なんとも立派な龍の画が。戦後活躍した日本画家・加山又造氏による『墨龍』が描かれているのだそう。八方睨みという画法を用い、本堂のどこから見上げても龍と目が合うように描かれています。これはすべての人に仏様の慈悲は届くということを表しているのだそう。金箔の上に描かれた龍は大迫力! ぜひ、本堂の中だけでなく、天井も見上げてみてください。
全ての朝のお勤めが終わると、花型の色紙「お経葩(おきょうは)」がいただけます。五色あり、かごの中でお花が咲いたようでした。どの色がもらえるかはその日のお楽しみです。
お勤めの後は、研修道場で写経体験。日蓮宗においては経典を書き写すことも、立派な修行のひとつです。
妙法蓮華経の一部が印刷されたお手本、小筆、和紙がセットになっています。和紙は地元で手すきで作られたもの。お土産として購入も可能です。マスクをつけ、作法に則って写経を行います。塗香と呼ばれる、お坊さんがつけるお香で身を清めてから、写経を始めます。
写経は「一文字一文字が仏様」。
丁寧に、集中しながらお手本を書き写していきます。筆者は筆を持つのは小学校の習字の授業以来。とめ・はね・はらいを思い出しつつ、なかなか苦戦した部分もありました。集中してひたすら文字と向き合っているとあっという間に30分経っていました。
完成したお経は持ち帰ることも、祈願を込めた上でお寺に納めることも可能です。せっかくなのでお納めしてきました。筆者がお経に書き添えたのは「除災得幸」(じょさいとっこうと読み、 災いを除いて幸せになりますようにという意味がある)。他にも「心願成就」(しんがんじょうじゅ)や「当病平癒」(とうびょうへいゆ)など、いろいろなお願い事を書き添えて納経できるそう。「家内安全」や「商売繁昌」はお馴染みですよね。墨で描いた文字は、なんだか願いが叶うような気分になるから不思議です。
デジタルが当たり前の今だからこそ、お経の意味を考えながら筆で文字を書く体験は貴重なものかもしれません。
身延山久遠寺
住所:南巨摩郡 身延町身延3567
電話番号:0556-62-1011(代)
公式HPはこちら
旧千円札の裏面を覚えていますか? 水面に富士が写っている「鏡富士」が透かしの左側に印刷されていましたよね。その光景を見ることができるのが、中ノ倉峠です。
お寺で心を整えた後は、自然の中で身体を動かしてリフレッシュ。久遠寺から車で30分ほど移動し、ハイキングへ出発です。
中ノ倉峠は標高1,082mの山で、トレッキングコースとしても人気。新緑や紅葉の季節は幅広い年代の人がハイキングを楽しむそう。今回登った時にも、お年を召したご夫婦やお子さんを連れたご家族などとすれ違いました。
気軽に登れる山だとはいえ、山道はなかなか急! いわゆる「つづら折り」が続きます。歩きやすく、滑りにくい山用の靴をおすすめします。雪が残っていたり、雨の翌日に登ったりするときはくれぐれもお気をつけて。悪天候の時は、中止する勇気も必要です。
登る途中にふと足を止めて見ると、木の間から富士山が見えたり、季節の移ろいを感じられたり。ハイキング・トレッキングの楽しみを十分に味わえます。
普段、運動不足の著者は少々息が切れ、汗をかくほどでした……。
それでも、頂上である中ノ倉峠展望地についた時見える、富士山と本栖湖の雄大な絶景、山の上でしか味わえない爽快感は格別。山登りの苦労も吹っ飛ぶ美しさと心地よさでした。昔の人もきっとその美しさに息を呑んだのではないでしょうか。旧千円札をかかげている人の姿もありました。
近くには峠に登らずとも富士山と本栖湖が楽しめるスポット・本栖湖展望公園があるので、時間のない方や、ドライブのついでに寄るにはこちらもおすすめです。
中ノ倉峠
問い合わせ先:身延町観光課 TEL: 0556-62-1116
昔から人々に愛されていた富士山や、心の支えとなってきた日蓮宗の総本山、写経や朝のお勤め。時代を超えて届くその美しさや心地よさは、私たちの心と身体をリフレッシュさせてくれます。
この春、南山梨の旅へ出かけてみませんか。
文=宇野なおみ