サウジアラビアの国家プロジェクトで誕生した[チームラボボーダレス ジッダ]。世界の“芸術と文化の中心地”を目指して。

  • 2025年4月5日
  • CREA WEB

チームラボ「花と人、コントロールできないけれども共に生きる - A Whole Year per Hour」。

 イスラム教の三大聖地、メッカ、メディナ、エルサレムのうち、メッカとメディナを擁する国がサウジアラビアです。イスラム世界の盟主といわれ、例えば、国内では外国人であっても飲酒が禁じられているなど、特に戒律に厳格な国として知られています。

 それゆえ、長年にわたりイスラム教徒以外の外国人が観光で訪れることは難しい国でもありましたが、2019年9月に観光ビザの発給が始まり、日本からも旅行で訪れることができるようになりました。


湖のほとりのロケーション


サウジアラビア市街の眺めも楽しめるアルバイン湖。

 そんなサウジアラビアで、今、足を運びたい場所が「チームラボボーダレス ジッダ」です。日本のチームラボによるこのデジタルテクノロジーを使ったアートのミュージアムが、昨年サウジアラビア第二の都市ジッダにオープンしました。

 ロケーションも素晴らしく、世界文化遺産ジッダ歴史地区であり、周辺一帯を見渡せるアルバイン湖のほとりに「チームラボボーダレス ジッダ」はあります。

中東らしい外観が日本人には新鮮


「チームラボボーダレス ジッダ」。

 この中東初のチームラボボーダレスミュージアムは、チームラボがサウジアラビア王国文化省とともに主導し、さらに現代アートを扱う現地のATHRギャラリーのサポートによって作られたもの。その目的はアート作品を楽しむだけにとどまりません。

 サウジアラビアによる生活の質をあげる「クオリティ・オブ・ライフ・プログラム」の取り組みの一環であり、また、同国が掲げる「サウジ・ヴィジョン2030」のひとつである、芸術文化への貢献を強化すべく、文化・芸術の展示インフラの開発・育成のために作られたミュージアムなのです。

1万平方メートルの敷地に約80点の作品が展示


チームラボ「増殖する無量の生命 - A Whole Year per Year」、「Walk、Walk、Walk」、「Moving Creates Vortices and Vortices Create Movement」

 国家プロジェクトの一端を担うミュージアムだけに、そのスケール感は驚くべきもの。延べ床面積はおよそ10,000平方メートル。デジタルテクノロジーを駆使した作品の数は約80。それらがボーダレスの名前の通り、“地図のないミュージアム”として境界なく展示され、作品と作品が影響し合い、時には混ざり合いながら、全体としてひとつの世界を形成しているのです。

吹き抜けの空間にジッダ限定作品


ジッダ限定のアート作品。チームラボ「Persistence of Life in the Sandfall」。

 作品は、新作に加えて「チームラボボーダレス ジッダ」のために特別に制作された、ここでしか味わえないインスタレーション作品もあるなど、見どころが満載。

 鑑賞者はこの境界のない世界に身体ごと没入し、さまよったり、探索したりしながら、インタラクティブに絶えず変化する作品を全身で鑑賞することができます。

瞬間ごとに生まれては、消えていく作品風景


チームラボ「あおむしハウスの高速回転跳ね球」。

 作品は周囲にいる鑑賞者のふるまいによっても変化していくため、地球上の世界が絶え間なく変化し、すべての人の配置や動きが二度と同じ状況になることがないように、作品も変わり続け、二度と同じ風景が描かれることはありません。

 また、東京とリアルタイムでつながっている作品があることも特徴です。「チームラボボーダレス ジッダ」で鑑賞者によって起こった変化が、そのまま麻布台ヒルズにある「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」の作品に影響を与えるなど、現実の世界でも国境を超えるボーダレスなミュージアムとなっています。

周辺地域と世界における芸術と文化の中心に


チームラボ「Memory of Waves:Flowing Beyond Borders」。

 チームラボとの共同プロジェクトとして実現したこのミュージアムについて、サウジアラビアの文化的景観にとっての新たな章の一部だと話すのは、サウジアラビア王国文化省のブドゥルラフマン・アルモタワ氏です。

「地域、そして世界に響く革新的な芸術表現の育成に対する文化省の取り組みに共鳴していただいたチームラボに感謝いたします。チームラボボーダレス ジッダは、来館者が創造性の未知の領域を探索し、王国の豊かな伝統と現代アートとの対話に参加できるダイナミックな出会いの場です。文化省が“ビジョン2030”の文化的目標の達成を推し進める中、私たちはこのミュージアムが、サウジアラビアの地域と世界における芸術と文化の中心地となることを目指しています」とアルモタワ氏。

大人も子どもも楽しめるミュージアム


チームラボ「こびとが住まうテーブル」。

 今、まさに変革の最中であるサウジアラビアが国を挙げて実現した「チームラボボーダレス ジッダ」。実際に現地で見た限りでは、来場者に家族連れが多く、特に子どもたちが目を輝かせながら、作品にはしゃぎ、楽しむ姿が印象的でした。

 作品群が素晴らしいだけではなく、そこに集う現地の人々が作品に驚き、喜び、感動する様子から、次代のサウジアラビアの姿まで感じ取ることができる。「チームラボボーダレス ジッダ」は、まさに「サウジ・ヴィジョン2030」が目指す世界を体現できるミュージアムなのです。

チームラボボーダレス ジッダ

所在地 Culture Square, Jeddah Historic District, Jeddah(F5VM+V73, Culture Square, Jeddah 22235, Saudi Arabia)
営業時間 土〜水13:00〜23:00、木・金15:00〜深夜2:00
※最終入館は閉館90分前
休館日 月
https://www.teamlab.art/jp/e/jeddah/

文・写真=石川博也

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