衝撃的なタイトルで、制作が発表された途端各方面で話題を呼んでいるドラマ『夫よ、死んでくれないか』(テレ東系)。安達祐実さん、相武紗季さん、磯山さやかさんのトリプル主演で、人生をリスタートするために、「夫を消したい」と思う妻たちの共闘が描かれます。
トリプル主演のひとりを務める安達祐実さんが演じるのは、人生の優先事項はキャリアアップで、結婚生活や妻であることよりも仕事を優先してきた女性、甲本麻矢。家庭ではほとんど夫との会話もなく、会社では便利屋扱いをされる日々の中、ある日、夫に不倫疑惑が浮上、口論の末そのまま失踪されてしまう……という、四面楚歌な状況に陥ります。
安達祐実さんに、そんなピンチな状況の役を演じるにあたって意識したことや、役と同様に働く女性として、妻として、また母親としての思いを伺いました。
――合同取材でも、タイトルを聞いた際のことについて「演じがいがありそう、すごくそそられた」とおっしゃっていましたが、「死んでくれないか」とは本当に強い言葉ですね。
安達祐実さん(以下、敬称略) びっくりしますよね(笑)。私はすでに、夫に「死ね」と言う場面の撮影を終えたんですけど……。
――いかがでしたか?
安達 本当にブチギレて言いました(笑)。ああ、こういう感情になって、絶対言ってはいけないことを口走ってしまうのか……っていう、なにか人間の愚かさというか。でもやっぱり相手があって、相手と自分のことを思うからこその怒りだったり、悲しさだったりするから、そういう感情の尊さなんかが全部その吐き出すものに詰まっている感じがして。バーッと言ってしまうんだけど、同時にものすごく寂しい、みたいな感情がわきましたね。
――ただただ怒りのみ、で言っているわけではないという。
安達 表面に出ている態度と、心の中にあるものの温度差、みたいなものがすごく渦巻いていて、「人間ってやつは……」と思いながら撮っていました(笑)。面白かったですね。
――安達さんは今までにも、かなり色々なタイプの“妻”を演じてこられましたが、今回の妻、はその中でも強烈でしょうか? もしくは共感できる感じでしょうか。
安達 基本的には共感できる部分があります。だけどなんかちょっとスイッチが入ってしまう瞬間がある人なんだな、というところは理解しながら。ただ、あまりにも周りの人がおかしすぎるので、自分(の役)がすごくまともに思えていますね(笑)。撮影していて思うのは、光博(夫・竹財輝之助)のどんなところを好きになって結婚したのかな? ということです。今も、もしかしたら愛情もあるのかもしれないけれど、どこでこんな風になったのかな、って思いながら暮らしていて、その糸口みたいなものを、麻矢も、私も探している感じなのかなって。
――他のふたりのキャラクターについてはどう感じていらっしゃいますか?
安達 他のふたりの気持ちも結構わかるというか、そうなってしまう、そうしてしまう気持ちはわからなくはないなと思います。璃子(相武紗季)はすごくサバサバしていて、男気がありそうなタイプに見えるんだけど、本当は一番女性的というか、か弱さを持っている人なのかなと。そして友里香(磯山さやか)は、怖いタイプだと思います(笑)。結構、二面性持ってるな、みたいな。
――友里香さん、怖いですね(笑)。
安達 怖いですよ、そうなっちゃうんだ!? みたいな(笑)。
――読者の方たちに、ご主人に対して「死ねばいいのに」とまで思うに至らないように、何かアドバイスはありますか?
安達 そうですね……、何事もほどほどに(笑)、っていう感じかな。あとはやっぱり、特にうちの、麻矢と光博の夫婦に関しては、会話が足りないなと思います。別にそんなに深く話し合うとかでなくても、日々こう、何か会話をすることを心がけていないと、相手が何を考えているのかがわからなくなってしまうというのは、本当によくあることだなと。
――そうですね。
安達 夫婦に限らずだと思うんですけど、やっぱり言葉って大事だなって思います。
――麻矢は、キャリアアップ、仕事を優先してきたというキャラクターですが、女性が働くことにおいて、最近は昭和の時代よりも社会が少しは変化してきている、働きやすくなってきているなどの実感はありますか?
安達 そうですね。変わってきている部分もあるなとは思いますけど……。そうは言いつつも、女性にとって、お仕事、出産、家庭のバランスみたいなことっていうのは、まだまだ難しい課題なのかなと。男性も今、育休を取ったりはできると思いますけど、それって選択できるじゃないですか。でも女性は出産となったら、どうしても休まなければいけない期間がもう絶対にあるので。
――安達さんもすでに経験されていますものね。
安達 私も出産して、2カ月くらいで復帰したんですけど、やっぱりその後も、子育てしながら働くってすごく大変だなと思っていますし、その辺の環境の整備とかはまだまだだと感じています。例えば、もっと子供を職場に連れて行ってもいいようなシステムとかがあったりしたら、さらに能力を発揮できる人も多分たくさんいるんじゃないかなと。
――周囲のスタッフさんたちを見ていてもそう思われますか?
安達 そうですね。違うご家庭もあると思うんですけど、やっぱり“子供の面倒は女がみるもの”みたいな感覚が、根強くあるのかなっていうのは感じますね。
――少し話は変わりますが、ここのところ安達さんは、ほとんど間を空けず、ドラマや映画に出演されています。それだけ忙しい中で、健康や美容のために心がけていらっしゃることはありますか?
安達 それが本当に……全然ちゃんとできていなくて(笑)。自分のケアを一番最後にしちゃうんですよね。具合が悪いなぁと言ってると、マネージャーにも「またか」と言われたりして。
お肌のケアは、自分で化粧品を作っているので、もうほぼそれだけですし、美容クリニックも本当に肌荒れがひどい時にだけ行くくらいで。
――お肌の調子が悪い安達さん、という覚えがないのですが。
安達 いえ、あるんです! 食べ物も制限せず好きなものを食べてますし、ストレッチとかも、サボり始めると何カ月もサボるし(笑)。
ただやっぱり、40代に入ってからは、今までは「何とか根性で、やりきれる!」みたいな感覚があったんですが、それがもう利かなくなってきているな、と感じるところはあるので、自分の体にも内面にも目を向けないと、とは思っています。心の声を聞くというか、「ちょっとそろそろ休んだ方がいいんじゃない?」って自分自身に相談しながら進めないとね、って。
――共演のおふたりと、健康や美容の情報を交換されたりはしていますか?
安達 「何も知らなすぎなんですけどー」って言われました(笑)。「ダメですよ!」って。教えてもらったサプリメントを早速注文したので、それを取り入れたいなと。
あとはやっぱり、ストレスをかけないっていうことが一番大事で、自分には合っているのかなと思っています。「〇〇しなきゃ」というのが本当に向いていないので。自由にしているのが心身ともに私にはいいのかなと思って。
――CREA WEBの読者の皆さんも、日々仕事や家庭、子育てのことで悩んだりしながら、たくさん頑張っています。今現在色々と悩みを抱えている方に、メッセージをいただけたら。
安達 そうですね、私自身もすごく悩むこともたくさんあるんですけど、多分、「完璧にやろうと思わないこと」が大事なんだろうなと思ってます。結局自分がパンクすると、それは子供にとってもよくないし。自分のできる範囲で頑張ればいい。
私も人に頼ったりしますし。頑張りすぎない、適当にやるということを、“それが悪いことじゃない”と知ることがすごく大事だなと思います。例えば私も、「他のお母さんはできてるのに、なんで自分はコレができないの?」って思うこともあるんですけど、それはもうしょうがない、っていう風に、ちょっと“自分をあきらめる”。
“あきらめる”という言葉を使うと、ネガティブな印象だけど、でも「自分を少しだけあきらめてみる」というのも、心を軽くするひとつの手段かなと思います。皆さん本当に頑張りすぎるくらい頑張っていて、心配になっちゃうので。
――ドラマはかなり多くの女性の共感を呼ぶのではと思います。ここを見てほしい! という見どころを教えてください。
安達 タイトルも強いですし、起こっている出来事が極端だったりはするのですが、でもそれぞれが感じている孤独感などの感情は、見ている方たちにも共感してもらえると思います。あちこち思い当たることがあるかなって。夫との行き違いや考え方の違いは、結婚している方だったら誰しも多少あるのかなと思いますし、結婚していなくても、誰かと一緒にいても寂しいと感じたりすることもたくさんあると思うんです。だから誰が見てもスッキリする部分があるんじゃないかなと。自分だけじゃないなって思えたり。
それと、あまりにもいろんな展開があるので、心をかき乱されながら見てもらえたら嬉しいなと思います。
『夫よ、死んでくれないか』(テレ東)
4月7日スタート、毎週月曜・夜11時06分〜11時55分放送
原作 丸山正樹
脚本 的場友見
監督 佐藤竜憲、進藤丈広、柿原利幸
プロデューサーいわく、「テレ東『夫シリーズ』の集大成で最大の問題作」。結婚を機に、理想の自分や理想の人生、理想の家庭とのギャップが大きくなっている、高校時代からの親友3人。しかもそれぞれの夫は、不倫、束縛、モラハラとそれぞれに問題だらけ。3人ともに人生のリスタートを目指して、障壁であるクセ強の「夫」を消すために共闘することになるが……。共闘、衝突、マウンティングを繰り返しながら、失った幸せを求めて3人が奮闘する、マリッジサスペンスドラマ。
https://www.tv-tokyo.co.jp/otoshine/
文=斎藤真知子
写真=佐藤 亘