
下町情緒あふれる中崎町に佇む「珈琲舎 書肆アラビク(コーヒーシャ ショシ アラビク」。昭和初期に建てられた長屋をリノベーションした空間には、推理小説から大阪の歴史をたどるものまで、幅広いジャンルの本が並んでいます。レトロな空間でいただけるのは、多彩なアレンジコーヒーと自家製のフィナンシェ。奥にはギャラリーがあり、店の片隅には店主のコレクションである市松人形も。個性が光るブックカフェです。
戦前の木造建築や長屋が残り、古民家ショップも多い中崎町で2007年にオープンした「珈琲舎 書肆アラビク」。地下鉄谷町線中崎町駅2番出口から徒歩3分の場所にあります。
植物に囲まれた軒先は、界隈でも目を引く存在です。
昭和初期に建てられた長屋をリノベーションした空間は、手前の土間の部分がカフェスペースで、奥が靴を脱いであがるギャラリースペース。家具類もできるだけ同じ時代のものを設えているので、古き良き時代の空気感が漂っています。
本棚には店主の森内憲さんがセレクトした本がずらり。推理小説、幻想小説を中心に幅広いジャンルの本を販売しています。
「作家さんに還元できるように」と、新刊で扱えるものは新刊で、古本は主に絶版になったもの扱うようにしているそうですよ。
「大阪を深掘りしたい」と、大阪出身で江戸時代に活躍した文学者・井原西鶴や上田秋成、俳人の与謝蕪村にまつわる書籍も。本を通じて、300~400年前の大阪を垣間見ることができるかもしれません。
コーヒーはスタンダードなものが約10種、アレンジコーヒーが約10種とかなり豊富なラインナップ。なかでも看板メニューとして長く親しまれているのが、ハプスブルク家唯一の女帝の名が名付けられた「マリアテレジア」。フランス生まれのオレンジのお酒・コアントロー入りコーヒーにホイップクリームを浮かべ、キャンディをのせたドリンクで、深煎りのコーヒーとオレンジのハーモニーはオランジェットのような味わい。
こちらではキャンディの代わりに金平糖をトッピング。かわいらしいビジュアルにときめきます。
レトロな空間に似合う「G.C.S.珈琲」もおすすめ。G.C.S.はジンジャークリームソーダの略で、浅煎りの水出しコーヒーにジンジャーシロップを加え炭酸で割り、バニラアイスクリームを浮かべています。
アイスの上には、リキュール漬けのチェリーが。細部にまでこだわりが詰まっています。
コーヒーとセット販売している自家製デザートは杏仁豆腐、テリーヌショコラ、ラム酒のフランベプリン、フィナンシェなど。
フィナンシェは2025年4月に生まれた新作です。伝統的なレシピを忠実に再現しつつ、ホイップクリームや食用花をトッピングしてひと工夫。食用花は砂糖漬けにして、バター香るフィナンシェとの相性を高めています。
カフェの奥にあるギャラリースペースでは、2か月に1度のペースで企画展を開催。現代作家が手がける球体関節人形の展示が主で、貴重な作品が並びます。
ギャラリースペースにも人形関連の資料や美術書が並んでいますが、こちらは閲覧専用です。
市松人形は、森内さんのコレクション。明治、大正、昭和と制作された時代ごとに並んでいるので、どう変遷してきたのかが鑑賞できます。
カフェは利用せず、ギャラリーの見学のみも可能なので、気軽に足を運んでみてください。
ひとひねり加えたコーヒーに、独自目線でセレクトした本、人形を主としたギャラリーと独創的な世界観に満ちていますが、店の雰囲気はとてもアットホーム。興味がある本や作品があれば、気軽に森内さんに話しかけてみてくださいね。