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髪の長さと靴から、筆者のニール・ヤング好きをズバリ的中! 老舗ロックバーとは?

  • 2023年10月20日
  • コロカル

音楽好きコロンボとカルロスがリスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは宮城県仙台市。

51年の歴史。お客さんと敵対した関係から寄り添う関係へ

コロンボ(以下コロ): レコードバーのご主人って、お客さんの音楽の嗜好を探り出すのがうまいよね。

カルロス(以下カル): 初めて飲みに行った店でも、連れとの会話から推理して、さり気なく好きな曲をかけたりしてくれると、驚く。

コロ: ここ〈Peter Pan〉の店主の長崎英樹さんに、それについて尋ねたら、40%はドンピシャで、15%はハズレ、残りは当たらずしも遠からずだってさ。

カル: やっぱ会話からなの?

コロ: もちろんそれもあるけど、身なりと髪の長さもポイントらしい。ボクがうかがったとき、試しにボクの場合は誰が好きそうですか? と聞いてみたら、これが気持ち悪いくらいドンピシャなの。

カル: まさに創業51年の所業。どんな推理だったの?

コロ: 靴をチェックするのを忘れちゃったからと、「うーん」と考えていたんで、「白いアディダスのスーパースターです」と教えたところ……。

カル: まさかニール・ヤングと?

コロ: そうなのよ、そのまさか。熟考の末、タンテに置いたのが『ハーヴェスト』。

カル: まさにドンピシャだ。

コロ: 悔しいから、いちばん好きなアルバムは『ZUMA』だって悪態ついたら、それもかけてくれた。

ドンビシャで取材者の嗜好を探ってかけたニール・ヤングの『ハーベスト』。

ドンビシャで取材者の嗜好を探ってかけたニール・ヤングの『ハーベスト』。

〈Peter Pan〉創業は1972年5月3日。今年で創業51周年。

〈Peter Pan〉創業は1972年5月3日。今年で創業51周年。

 

カル: やさしい。老舗ロックバーだから、お客さんに寄せたりしないのかと思ったよ。

コロ: 昔はお客さんと好みが敵対していたらしいよ。ロックバーのくせにレッド・ツェッペリンとかのハードロックが全然ダメだったらしくて。

カル: それはまずいね。ビートルズなんかはどうなの。

コロ: ジョンが冴えないって理由で、『アビイ・ロード』だけは買わなかったらしい(笑)。影がないとダメなんだって。ビートルズのメンバー、ひとりひとりには興味がないなんだって、なのでポールのライブも見る気がしないそう。

カル: かなり偏っているけど、どの辺がストライクゾーンなのかな。

ビートルズでいえばジョンの影が薄い『アビイ・ロード』にまったく興味がないとか。

ビートルズでいえばジョンの影が薄い『アビイ・ロード』にまったく興味がないとか。

以前は嗜好がかなり偏向していて、お客さんと敵対していたそう。

以前は嗜好がかなり偏向していて、お客さんと敵対していたそう。

 

コロ: リトル・フィートは当時、ビートルズを超えると信じていたらしい。あとはジョニー・ミッチェルとかジェイムス・テイラーとか。ジェイムス・テイラーでいちばん聴いたのは『スウィート・ベイビー・ジェイムス』だって。

カル: 『ワン・マン・ドッグ』とか『マッド・スライド・スリム』じゃないんだね。

コロ: ジェイムス・テイラーは本来、いたってまじめでシリアスで凝り性。このアルバムはスケジュール的に凝るひまがなかったみたいで、彼にしては雑になってしまったのが、逆に良かったそうだ。

カル: ジェイムス・テイラーってちゃんとし過ぎてたんだ。たしかにニール・ヤングとは違う気がするよね。でも、さすがに今はお客さんとは敵対してないんでしょう。

コロ: 媚びるくらいにお客さんに寄せていて、お客さんの様子を見ながらかけているそうだ。

最も好きなジェイムス・テイラーの『スウィート・ベイビー・ジェイス』。本人のサイン入り。

最も好きなジェイムス・テイラーの『スウィート・ベイビー・ジェイス』。本人のサイン入り。

リトル・フィートはビートルズを必ず超えると存在だと信じていたとか。

リトル・フィートはビートルズを必ず超えると存在だと信じていたとか。

 

カル: そうそう、その昔は「デモテープ・デイ」っていうのが名物だったんでしょう。アマチュアバンドが宅録したカセットテープを聴いて、優勝者を決めるイベント。

コロ: 何回目からの優勝者に〈センチメント〉というユニットがいたんだって。デペッシュ・モードもみたいなサウンドで、結局、リリースできず仕舞いだったんだけど、そのユニットを坂本龍一さんが、大絶賛してくれたんだって。彼らの良さをわかってくれた業界人は教授ひとりだったそうだよ。

カル: そんな伝説のイベントがあったりするんで、いまでもオープンリールのテープデッキがあるんだ。

コロ: それはまた別みたい。昔は、関係者にサンプル盤がプレスされる前に、オープンリールで聴かせたんだって。それはそれはいい音だったようだよ。

カル: オープンリールって聴いたことないかも。カセットすらギリギリなんで。オーディオはどんな感じなの?

いまだ現役なオープンリール・テープデッキ。

いまだ現役なオープンリール・テープデッキ。

旅先でのアーティストのスナップ。ニューヨークで偶然会ったミック・ジャガーも。

旅先でのアーティストのスナップ。ニューヨークで偶然会ったミック・ジャガーも。

 

コロ: 店主いわく、機械はまったくわからないから、オーディオに詳しいお客さんに「直してみます?」って任せちゃうんだって。そうすると、よろこんでやってくれるみたい。

カル: 他力本願(笑)。お客さんがつくってくれたカスタムのJBLはとってもクリアな音なんだってね。

カル: 見事なくらい忠実だった。地震で3回落ちても無事だったんだってさ。

カル: 店内も震災を経ているのに、昔のままを留めているよね。パリの古い、プチホテルに迷いこんだみたいな感じがする。

コロ: 長崎さんの旅の記憶がそのままお店になったみたいで、これまた味が出ているんだよ。

カル: ミシンのフタがテーブルになっていたり、主人の好きなものしかない空間って最高だよね。

コロ: いい空間って、大体そういうことだよね。好きなものといえば、姓名判断の腕前もすごくて、ボクが名刺を出したとき、じーっと長い間、見ていたから、前にどこかで会っているのかなって思ったら。字画を数えていたんだと、あとで気がついたの。

カル: まじで? ロックと姓名判断(笑)。どんな性格だって?

コロ: それは内緒。

ヨーロッパの古いプチホテルに迷い込んだような時代を感じる空間。

ヨーロッパの古いプチホテルに迷い込んだような時代を感じる空間。

最近は自家製ケーキを目当てに訪れるお客さんも多いとか。

最近は自家製ケーキを目当てに訪れるお客さんも多いとか。

 

information

ROCK CAFE Peter Pan 

住所:宮城県仙台市青葉区国分町2-6-1

TEL:022-264-1742

営業時間:15:00〜24:00

定休日:月曜

Web:ROCK CAFE Peter Pan

 

【SOUND SYSTEM】

Speaker:JBL (custom mage)

Turn Table:TRIO KP-7600、Victor TT-81

Power Amplifer:Victor M-2020

Pre Amplifer:Accuphase C-11

Open Reel Deck:TEAC A-7010

旅人

コロンボ

音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。

旅人

カルロス

現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。

writer profile

Akihiro Furuya

古谷昭弘

フルヤ・アキヒロ●編集者『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。

credit

photographer:深水敬介

illustrator:横山寛多

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