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キャンプの恵み

Vol.73 故きを温ね新しきを知る

  • 2015年1月15日

 年の初めには、多くの人が今年の目標を立てます。たいてい早々に挫折するのですが、それでも懲りずに、「今年こそは‥」とおもいます。
 私の、とりあえず今のところキープしている目標は、「古典に触れる」ということです。年末年始には『古事記』や能、建築など、歴史的な文化を扱うテレビ番組が多く放送されていて、何気なしに見ていたのですが、私たちの自然観を理解するヒントがたくさんあるように感じました。
山  たとえば、『古事記』に五穀の起源の物語があります。須佐之男命が殺した女神の死骸から、蚕や穀物の種が生じたという内容です。この女神は「鼻や口や尻からおいしい物を取り出して」提供したために、須佐之男命の怒りを買って殺されました。ずいぶん無茶な展開ですが、排泄物からおいしい食物が生まれるというのは、有機農業そのものです。人が自然の恵みを受けるために必要な循環が物語られていることは、ずいぶん科学的だなぁと感心します。『古事記』には自然現象を司る神々の誕生物語が次々と語られますが、そこにも古い時代の日本人が自然をどうとらえていたかを知るヒントがあるのではないでしょうか。
空  能は、『竹生島』という演目が放送されました。これは醍醐天皇の臣下が琵琶湖に浮かぶ竹生島の弁才天にお参りに行き、天女と龍神に出会うというお話です。竹生島は古くから神聖な場所とされていたそうですが、そういった場所のそれぞれに神様や天女のような存在を当てはめている背景には、自然に対する強い畏敬の念があるのでしょう。

 キャンプでは、活動を豊かにしてくれる舞台として自然を重要視します。だから、私たちにとって自然がどのような存在であるかを考えることには意味があるようにおもいます。今の私たちの中に『古事記』や能が成立した古代や中世の人々の心性がどれほど残っているかはわかりません。それでも、古典に触れることで、新しい発見があるような気がしてならないのです。


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