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スタバも行けず…年収1千万円でも生活苦しく 3割は税金等に、各種手当も対象外

  • 2023年9月23日
  • Business Journal

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 年収1000万円でも生活が厳しい――。国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査」によれば、日本人の平均年収は443万円、300万円超400万円以下の給与所得者が17.4%と最多となった。対して、年収1000万円以上を超える給与所得者の割合はわずか4.9%となっており、多くの庶民にとって年収1000万円クラスは雲の上の存在であることがわかる。そのため年収1000万円ともなれば、セレブな暮らしができると淡い期待を抱く人も少なくはないだろう。しかし、年収1000万円でもそれほど生活が楽ではないという声も聞かれる。たとえば7月にX(旧Twitter)に投稿された以下のつぶやきは、一部で話題を呼んだ。

<言っておくけど子育て中の年収1,000万世帯なんてど庶民だから。成城石井もスタバも常連じゃないから!!!たまのたまの本当に年に何回かあるかないかのたまのご褒美だからね??1,000万に夢見過ぎよ!!!稼ぐ分だけ納めるもの多いし、所得制限は何重であるし、割と踏んだり蹴ったりなんだから>

 年収1000万円は平均年収の2倍以上の額となるが、それだけ稼いだとしても多額の税金や社会保険料が差し引かれ、おまけに手当の支給なども対象外。はたして本当に、年収1000万円の人は不条理な目に遭うことが多く、セレブとはほど遠いのだろうか。そこで今回は、経営戦略コンサルタントで百年コンサルティング代表取締役の鈴木貴博氏に話を聞いた。

独身だとさらに手取り減…共働きだと税負担は軽くなる

 まず、実際に年収1000万円の手取り額はどれくらいになるのか考えてみよう。年収1000万円の給与所得者が配偶者と子ども2人を扶養するケースを基にシミュレーションしてみると、所得税、住民税、健康保険、厚生年金、雇用保険を差し引いて750万円程度が手取り額となる。3割近い額が税金と社会保険料で消えてしまうのだ。独身であるか、共働きであるかによっても手取り額は変わってくると鈴木氏はいう。

「子どもや親などの親族を養う場合は『扶養控除』を受けることができ、課税所得額を減らすことが可能です。ですが独身の場合、控除の対象外となるので、子持ちの方よりさらに手取り額が減ります。年収1000万円だとすると、手取り額は720万円ぐらいが相場でしょうか。一方、共働きでお互いが500万円ずつ稼ぎ、世帯収入が1000万円となる場合、所得税の累進課税率が片働き1000万円よりも低くなります。手取り額としては子持ちだと想定すると、780〜800万円に落ち着き、片働きよりも少し得になるでしょう」(鈴木氏)

 年収1000万円を超えると、国による手当などの支給も対象外になることが多く、子育て中の世帯からすると特に痛手になりやすい。

「まず国による高校教育の授業料無償化の対象外となることを忘れてはいけません。片働きで子どもが2人いるケースを例に、高等学校等就学支援金の支給額を考えていきましょう。私立高校への進学には最大年間39万6000円の支給があるものの、対象が世帯年収590万円までと厳しめ。また公立高校の場合だと、世帯年収910万円相当までの家庭が最大11万8800円の支援を受けられるものの、年収1000万円世帯は支援されないラインに位置しています。また住宅ローンの控除も1000万円以上が対象外です。床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の物件の場合、前年の所得金額が1000万円以下であることが条件ですので、少しでも所得が多ければ控除は受けられないのです」(同)

年収1000万円と1799万円は同じ税率、住む場所も関係か

 税金や社会保険の差し引き額が少なくなく、手当などの支給も対象外になりやすい年収1000万円クラスだが、国の制度設計はどうなっているのか。

「国は年収1000万円以上の世帯ではないと、十分に税金を取ることができないという設計思想の下で制度を作っていると考えられます。日本人の年収別の割合を見てみると、年収700万円以下の割合が、全体の85.8%とかなり大きい人口ボリュームとなっています。政治家としては選挙の得票を考慮し、なるべく彼らを敵には回したくありません。したがって国の制度では、年収700万円以下までの税収を低く見積もり、代わりに年収1000万円以上の世帯から大きな税収を得ようとする傾向にあります。

 代表的なのが、所得税の累進課税率でして、具体的に見ていくと195万円から329万9000円までは税率が10%、330万から694万9000円までは税率が20%、695万円から899万円9000円までが23%となっています。しかし、900万円から1799万9000円までとなると税率は一気に33%と上昇。累進課税率を見るに、国が年収900万円、ないしは1000万円以上の税収を充てにしていることは明白です。また大企業における平均年収も1000万円を超えることが珍しくなくなってきていることから、彼らを基準として各種手当や制度の所得制限を設けている節もあるでしょう」(同)

 年収694万9000円までの税率は4段階あるが、1段階あたりの収入の開きは130万円から360万円ほどだ。対して、年収1000万円が該当する税率33%の年収幅は約900万円となっており、収入の開きが目立つ。高収入であればあるほど収める税金が増えるとはいえ、税率33%の層は最高で900万円近くも上の年収帯と同じ税率であること、下の段階の収入の開きが比較的小さいことを踏まえると、納得できない人も多いかもしれない。

 こうして見ると、年収1000万円世帯は貧乏くじを引かされていると思ってもおかしくはない。たしかにセレブのような生活を送るのは難しいかもしれないが、彼ら・彼女らが不満を叫ぶ背景には住む場所も関係してくるという。

「ネット上の意見を拝見しますと、年収1000万円で生活が苦しいと訴えているのは、土地代、物価が高い地域に住んでいる方々が目立ちます。都内で言えば港区や渋谷区、世田谷区のような地域が該当しますね。そうした地域に住んでいて、なおかつ子どもを私立高校に通わせようとすると、残ったお金で上流階級的な生活を送ることは難しいかもしれません。もし少しでも優雅に暮らしたいと考えるのであれば、より土地代や物価が安い地域に引っ越しましょう。通勤や子どもの通学時間が伸びるなど懸念点はあるものの、八王子や立川など西東京のほうに引っ越せば、だいぶ生活水準を上げられるはずです」(同)

(取材・文=A4studio、協力=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

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