ここ数年、植物由来の食材が増え、肉だけでなく魚やチーズ、卵など、さまざまな新食材が登場してきた。さらに改良を重ねて味わいや食感なども進化し、当初言われていた物足りなさも感じない商品が増えてきている。そんななか、代替肉の研究開発などを手掛けるDr.Foodsから植物性の世界三大珍味が登場した。
■カシューナッツが原料の世界初の植物性培養フォアグラ
Dr.Foodsが最初に商品化したのがフォアグラ。2022年に約1年半の期間を経て世界初の植物性培養フォアグラを開発し販売。フォアグラはフランス料理で使われる高級食材。世界三大珍味ともいわれ、世界中で珍重されるフォアグラだが、一方でその生産方法が議論の対象となっている。フォアグラはガチョウやアヒルに強制給餌を行って育てるため、欧米では生産や販売を禁止する動きもあったという。そこで着目したのが“植物性”。
Dr.Foodsのフォアグラは“植物性培養フォアグラ”。原料になっているのはカシューナッツ。これを麹によって特定の温度で発酵。さらに特定の温度によって再度発酵させたものが原料となっている。フォアグラはパテとしてバケットなどに塗って食べる食べ方とロッシーニのように焼いて食べる食べ方が主流。それに合わせ、Dr.Foodsが開発したフォアグラもパテタイプと焼いて食べるタイプの2種がある。実際にパテタイプを食べてみると、濃厚な味わい。植物性ということであっさりしている感じかと思ったが、フォアグラを食べたときに重たい感じがないぐらいで、満足感はある。
■約1年かけて開発した植物性キャビア
次に着手したのが植物性キャビア。先に開発したフォアグラとのシナジーや、キャビアの食品としての希少価値、持続可能という観点などから開発がスタート。岩手県の食品会社マーマフーズとの協業で約1年かけて完成させた。
Dr.Foodsの植物性キャビアは、主に海藻の抽出成分をはじめとした多糖類を原料とし、独自の技術で油脂を内包。人口いくらのように凝固液の中に滴下して製造する。一般的な植物性キャビアはプチッとした食感にやや人工的な印象を感じることがあるが、最高級キャビア「ベルーガ」の特徴として100グラムあたり約17~19%の脂質が含まれていることに着目し、こちらの植物性キャビアでも20%以上油脂を内包。食感もなめらかなので、より高級感のあるキャビアに近づけている。塩味の加減もほどよく、トッピングとしてほかの食材とも合わせやすい。
■トスカーナ州産最高級トリュフ使用の植物性トリュフバター
これらに続き、最後に登場したのが植物性トリュフバター。トリュフはそもそも植物性だが、単体では高価で使えるシーンが限られるため、植物性バターを合わせることでより料理に使いやすくなり、用途の幅を広げるのが狙いだ。最もこだわったのはトリュフ。イタリア・トスカーナ州産のサマー黒トリュフを100%使用。全体の5%という含有量もあり、芳醇な香りが高級感を感じさせる。
トリュフの芳醇な風味を味わうならシンプルにパンやクラッカーにつけて食べるのがおすすめ。顔に近づけた時点で何とも言えないいい香りが鼻を抜ける。もちろん料理にも活用でき、料理のソースベースやパスタの風味付け、卵と合わせても本格的なトリュフ料理になる。最近ではトリュフフレーバーの調味料や菓子などが増えてきているが、香料を使用しているものも多い。だが、この植物性トリュフバターはとにかく香りのよさに驚かされる。
熟練のトリュフハンターが専門に訓練されたトリュフハンティング犬を連れて山に入り、1粒ずつ地中深くから手で掘り出した黒サマートリュフ。フリーズドライをすることなく、生のトリュフをそのまま独自のレシピで商品化し日本へ直送し、自社開発の完全植物性バターと合わせて植物性トリュフバターに仕上げている。
このトリュフバターを使用したメニューは、東京・表参道のハンバーガーショップ「WAYBACK BURGERS」で2024年8月31日(土)まで食べることができる。「ネクスト トリュフバターチーズィー」(シングル2200円、ダブル3200円)は大豆などを主原料とする代替肉のパティ、植物性チーズ、植物性トリュフバターを使用したプラントベースフード。生地にホウレン草を練り込んだグリーンのバンズを使用し、ヘルシーに仕上げている。植物性ながらトリュフの香りが食欲をそそり、食べ応えも十分。
フォアグラ、キャビア、植物性トリュフバターと植物性の世界三大珍味が出そろったが、現状、業務用としての販売で、一部ホテルやレストランなどで食べることができるそうだ。植物性の食材は動物性食材にどれだけ近づけるか、どこまで代わりとして満足できるかに注目しがちだが、新しい選択肢として考えるほうが楽しみは増える。味もよくて満足感もある植物性の世界三大珍味。外食シーンで出会ったら、新しい食材としてチョイスしてみるのもいいかもしれない。