毎年ラスベガスで開催している世界最大の格闘ゲーム大会「EVO」の理念を受け継いだ、もう一つの世界大会「EVO Japan」。2023年4月に東京ビッグサイトにて3年ぶりに開催し、国内外より延べ7000人以上のプレイヤーがエントリー、3日間の来場者は延べ3万5000人にのぼり過去最大規模の大会となった。
今年は、2024年4月27日(土)〜29日(祝)の3日間にわたり有明GYM-EXにて開催する「EVO Japan 2024 presented by ROHTO」(以下、EVO Japan 2024)。メインタイトル7作品の賞金総額は1400万円で、各タイトルでTOP6に入った選手が賞金を獲得できる。
今回、初開催時よりすべての「EVO Japan」運営に携わってきた松田泰明さん(大会運営委員長)にインタビューを実施。「EVO Japan」の目標、メインタイトル選考の舞台裏など、気になることを全部聞いてみた。
■「EVO Japan 2024」メインタイトル
・「グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-」
・「GUILTY GEAR -STRIVE-」
・「THE KING OF FIGHTERS XV」
・「ストリートファイターIII 3rd STRIKE -Fight for the Future-」
・「ストリートファイター6」
・「TEKKEN 8」
・「UNDER NIGHT IN-BIRTH II Sys:Celes」
■格闘ゲーマーの目標となる“五輪”のような大会にしたい
――「EVO Japan 2024」とは、どのようなeスポーツ大会なのでしょうか。
【松田泰明】2018年から始まった大会で、我々の認識としては“日本最大の格闘ゲームの祭典”です。ゲーム業界における“五輪”といいますか、プロ・アマチュアを問わず、すべての格闘ゲーマーにとって目標となる大会になればいいなという思いで運営に当たっております。
――今回は会場の規模や、エントリーされる選手の人数など、あらゆる面で過去最大のスケールになりますが、開催に向けての意気込みを聞かせてください。
【松田泰明】「競技タイトルの総エントリー数は8000人を超えています。今年のEVOは絶対に盛り上がると思っていたので予想通りです。メインの大会だけでなく、サブイベントも多数用意しているので、総来場者数はさらに増えると思います」
――昨今のeスポーツの隆盛には目覚ましいものがあります。こうした状況について、何か思われるところはありますか?
【松田泰明】私がeスポーツ関係の仕事を請け負うようになったのは8年ほど前からなのですが、盛り上がりはその頃から感じていました。コロナ禍でオフラインのイベントを開催できない時期が続きましたが、それでもオンラインでゲーム大会を楽しむ文化は確実に広まっています。ゲームに精通していない方たちに対しても、地上波でゲーム関係のテレビ番組が放送され、ここ数年でeスポーツ人口は急増し、いまなお増加し続けていることを実感しています。
■“背水の逆転劇”20周年!「ストIII 3rd」はレガシー枠
――続いて、「EVO Japan 2024」の出展タイトルについてもお聞きします。やはり今、格ゲー界隈でいちばん注目されているのは若者をうまく巻き込んで盛り上がっている「ストリートファイター6」だと思うのですが、同作に対する松田さんのご意見をお聞かせください。
【松田泰明】インフルエンサーを起用したメディア戦略に加え、ゲームの中でも初心者が遊びやすいようにモダン操作(※)を導入するなど、すそ野を広げるための施策が奏功していると思います。ガチユーザー以外の層にも作品の魅力を訴求することに取り組んだ結果が、今日の成功につながっているという印象です。
(※)複雑なコマンド入力をしなくてもワンボタンで必殺技が出せる新操作方法。
――これまでの「EVO Japan」では競技種目は6タイトルでしたが、今回は7タイトルに増えています。その理由を教えてください。
【松田泰明】今回から「EVO Japan」は有料化することになりました。料金を払っていただくからには、来場者に少しでも楽しんでもらえる要素を増やしたいと思い、サプライズ枠として「ストリートファイターIII 3rd STRIKE -Fight for the Future-」(以下、「ストIII 3rd」)を追加しました。
――数ある格闘ゲームの中から「ストIII 3rd」を選んだ理由は何なのでしょうか。
【松田泰明】定期的に開催しているコミュニティ大会で、もっとも人気の高いタイトルだから……というのもありますが、2024年は「ストIII 3rd」の発売25周年であり、「EVO」史上もっとも有名な出来事である“背水の逆転劇”(※)の20周年です。これは入れないわけにはいかない……となり導入しました。
※「EVO 2004」のストリートファイターIII部門・準決勝で、梅原大吾さん(白ケン)がでジャスティン・ウォンさん(春麗)に大逆転勝利した試合。
――“背水の逆転劇”は20年も前の出来事なんですね!
【松田泰明】あのときの盛り上がりは本当にすごくて。私は現場にいたので、逆転の瞬間は地震と間違えてしまうくらい会場が激しく揺れたことを覚えています。「EVO」は本国でもサプライズ枠、あるいはレガシー枠といった形で、最新タイトルのほかに、ゲームファンに刺さるタイトルも種目に盛り込んでいます。そうした取り組みは「EVO Japan」でも大事だと思い、会議の場で「ストIII 3rd」を推させてもらいました。
■歴史が動く!「有料化」は業界全体の悲願
――話題に上がりました「EVO Japan」の有料化についても聞かせてください。
【松田泰明】公式サイトにも記載していますが、「国内最大規模の大会運営を継続させ、より魅力的なコンテンツ・高品質なトーナメントを提供していくために必要」と判断し、有料化に踏み切りました。
――有料イベントが行われるのは画期的だと聞きました。
【松田泰明】30年にわたってゲーム業界に携わってきましたが、有料イベントを行うのは業界全体の悲願でした。なので、有料イベントができるかもしれないと聞いたときは痺れました。「ついに歴史が動くぞ!」という感覚です。
――貴重なお話をありがとうございます。最後に「EVO Japan」の今後の展望をお聞かせください。
【松田泰明】まず、初の有料化に踏み切った「EVO Japan 2024」を成功させることに注力しています。今回はいろんなものを詰め込んでいて、来場者数も過去最大の人数になりそうなので、とにかく無事に終わらせることが大前提です。これを成功させて「次はもっと規模を大きくしてやりましょう!」と提案できるようにする、それが目標です。
――さらなる規模の拡大は夢がありますね。
【松田泰明】いろいろと詰め込んでいると言いましたが、それでもかなりの数のサブイベントを制限しています。それらも全部、いっせいに開催できるくらいの規模にまで成長させたいです。
取材・文=ソムタム田井