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“花が開けたタイミングが一緒だった”声優・上田麗奈が語るキャラクターとの縁、桜との縁 アニメ「わたしの幸せな結婚」インタビュー

  • 2024年3月27日
  • Walkerplus

明治大正の雰囲気を感じる架空の時代を舞台に、家族から虐げられる境遇にあった少女と、孤高の軍人の二人が紡ぐ和風シンデレラ・ストーリー『わたしの幸せな結婚』(顎木あくみ著)。テレビアニメ第二期の制作も決定している同作の主人公、斎森美世を演じるのが声優の上田麗奈さんだ。原作PV、朗読劇、そして二期のテレビアニメと一貫して美世の声をつとめ「長いお付き合い」と表現する上田さんに、美世や作品を演じる上での思い、さらに世界観を象徴する花である桜にまつわるエピソードまで話を訊いた。

■「弱々しいけど頼もしい」演者が語る美世の人物像

――主人公の斎森美世はテレビアニメで演じる以前、2020年の原作PVから上田さんが声を担当されています。PVでの役が決まる前から、読者として作品に触れていたんですよね。

【上田麗奈】たまたまSNSで『わた婚』の情報が流れてきて気になって、最初は漫画から読み始めたんです。その時から好きだなあ、美世に感情移入できるなと思って追いかけてきた作品だったので、原作のPVで美世役に決まったメールを見た時はこの作品に携われるんだ、しかも美世なんだとすごくうれしかったです。

それをきっかけに原作小説にも目を通して、こんなにきれいな言葉遣いで単語一つ一つに繊細さとはかなさと色が乗っているんだって感じました。

――演じる前は美世はどんなキャラクターに見えていたんですか?

【上田麗奈】自己肯定感がすごい低くて、自分のことを可愛がれないというか、認められない、優しくできない。だからこそ他人の言葉も素直に受け入れられなくて悩んでしまったり……。

その上で美世は素直で澄んだ心を持っている子だから、卑屈になることなく、恐る恐るながらも人とコミュニケーションをとって変わっていって、周りの人も美世の姿に影響を受けて心がほぐれていって。私もこんな風に素直に物事を受け入れて頑張りたいなって勇気をもらえるキャラクターだなって思っていました。弱々しいけど頼もしい、見守りたくなるけどついていきたい、そんな絶妙なキャラクターだなって。

――上田さんは原作PVにはじまり、アニメ化前には朗読劇でも美世を演じられています、アニメでまた一から美世を演じる上での変化はありましたか?

【上田麗奈】美世の内面的な部分はあまり変わらないんですが、アニメは絵があって背景があって演出があって、画面が先にお芝居してくれているから、朗読劇の絵がない状態でのお芝居とはちょっとした体の動きや距離感が違うというところで、ニュアンスに変化があったりもしたかなあと思います。朗読劇の時はうつむいて言った台詞だったんだけど、『ああ、アニメでは目を見て喋っている台詞になったんだな』みたいな。

――そうした役への入り方は、事前にイメージを作り上げるタイプですか?それとも収録の流れの中でだんだんとそのキャラを掴んでいくタイプですか?

【上田麗奈】事前に細かく考えていくタイプですね。よく「役に憑依するタイプ」だって言われるんですが、私自身はそういう印象はなくて。ただ、キャラクターのことを考えて、インプットして、こういう背景だったらこの台詞はこうなるだろうなぁとか、視線はこうなんだろうなぁとか、練習をしすぎるぐらいするから多少は身に入るというか。だから感覚でやっているように見えたり、実際は感覚でやる余地が生まれたりしているかもしれないです。

――そうしたスタンスになったきっかけは?

【上田麗奈】5、6年ぐらい前は感覚だけでやっていて、自分の好きな解釈で読んじゃっていたからお芝居のニュアンスも自分の思考回路になってしまって。キャラクターの目線や脚本家さん目線といった色々な読み方が、今以上にできない子だったんです。

転機になったのは、ある作品で敵役を演じた時、ちょっと尖った台詞が多くて「なんでこんな言い方するんだろう。ちょっと嫌な子だな」って私自身思っちゃったキャラクターがいたんです。でも、その子にとっては嫌なことを言っているわけじゃなくて、それが正しいこと、いいことだと思っての言葉で。それを私が認められてなかったんだって衝撃を受けて。もっと視野を広げなきゃって事前準備をするようになった結果、逆に“憑依するタイプ”だって言われるようになりました。

■「憑依型」という声への戸惑いと受容。キャラと重なった変化のタイミング

――テレビアニメではこれまでの美世を演じてきた積み重ねもあったと思うのですが、一期の収録の中で新たに気づいたことや変化を感じるポイントはありましたか?

【上田麗奈】朗読劇の時よりも戸惑いのシーンが多くてその期間も多かったので、アニメの収録であらためて「美世はここまで言葉が前に出ないんだな」って思いましたね。家でリハしている時よりも他の方への声かけが難しくてうまくかけあえている感じがしなくて、これは美世ならでは、そういう子なんだなって。

――確かに序盤の美世は、言葉から言いたいことがこぼれ落ちているようなニュアンスをすごく感じました。

【上田麗奈】さっき事前準備するタイプって話をしましたが、現場のグルーブ感でお芝居が大分変わっちゃうタイプでもあるので、「わた婚」の座組だからそうなったのかなというのもあります。

――現場のグルーブ感というのは?

【上田麗奈】掛け合っていく中で、お芝居の方向が自然と揃っていくような感覚と言いますか……座組によって大事にする部分が違っていたりもすると思うのですが、それを誰も口にはしなくても通じ合っている感じがすると、徐々に空気が変わっていくというか……。なんとも言語化しづらい不思議な感覚です。

――それを特に感じたシーンや台詞はありますか?

【上田麗奈】今進んでいる二期の収録でも美世と清霞が話し合うシーンがあって、その結論への持っていきかたがテストと本番で違ったなあと思うことがありました。

本番では、テストの時以上にお互いの話をちゃんと集中して聞こうという意識があったように感じて。シーンの中で話がまとまる台詞の時に、演じているこちらも「まとまったなぁ!」と思いました。

 ――上田さんが美世という人物をはっきり捉えられているんだなと感じます。アニメ第一期が発表された際に「長いお付き合いに」とコメントされていましたが、今の上田さんにとってはどういう存在ですか?

【上田麗奈】美世は出会ったタイミングがすごくよくて、このタイミングで出会ったからご縁があったんだって思うようなキャラクターなんです。

一期の美世は自分のことが自分で分かり切っていなくて、心のもやが晴れない状態が長く続いていたと思うんですが、二期では思考がクリアになったというか、悩んだり失敗したりしても、大事にしたい気持ちが明確だからこそのポジティブさ、花がちゃんと芽吹いて咲いていく感じがあって。そうした美世の心の変化と、私自身の心の変化のタイミングが近かったんです。

今までは、自信がないからこそ褒められるのも求められるのも困っていたのが、他者から向けられた気持ちを一旦情報としてフラットに受け止めようとできるようになってきて。人と向き合うのってすごい大変なんだなって分かってきたり、大変な分ポジティブに頑張れることっていっぱいあるんだなって、ちょっとだけ花が開けた感じがしてきて、美世とはそういうタイミングが一緒だったから共感もしやすいし、すごくいい縁だなと思います。

■「いつでも、どこにでもある花」特別じゃない桜との距離感

――「縁」という言葉が出ましたが、上田さんは桜にもご縁のあるような印象があります。所属事務所の写真も桜の枝を持ったカットですよね。

【上田麗奈】あの写真は、アーティストとしての活動で春夏秋冬で四枚アルバムを出そうって話があって、二枚目の春をイメージしたアルバム「Empathy」を告知する際に撮影したものを声優のアーティスト写真にも使って、という流れです。二枚目を作るまでに応援してくださった方をお待たせしてしまったこともあり、二段階でゆっくり告知していこうと。真っ白な服とまだ花が咲き切らない枝を持って作品が冬から春に移り変わっていきますよという写真だったんです。桜をチョイスしたのはチームのアイデアでした。

――桜の雰囲気が上田さんに合うというイメージが周囲にもあったんじゃないかと思います。

【上田麗奈】色味のイメージを伝えたぐらいで、このお花を使いたいって話は確かしていなかったはずなんですよね。確かに、そういうイメージがあったのかもしれないです。

――上田さんにとっても桜は特に好きな花なんでしょうか?

【上田麗奈】好き以上に、馴染みのあるお花ですね。小学校の通学路が桜並木で、中学や高校の頃も中庭に桜の木があって、桜を見ながらお弁当を食べて、みたいな学校だったから、私の中では特別なお花っていうよりも生活の一部、いつでも、どこにでもある花という印象です。

――上田さんはご自身の番組「アトリエReina」で絵を描かれていて、昨年開催されたイラスト原画展でも桜の絵がありましたよね。絵に描く時も身近な花という感覚ですか?

【上田麗奈】他のお花はどういう形や色なのか調べて覚えてから描くってステップがありますが、桜はやっぱりよく見ていたから何も見なくても描きやすくて、描きやすいと言うか描いちゃう(笑)。いい距離感だなあ、と。

■「これが好きなんだということを知れるのがすごく楽しい」

――ちなみに、上田さんはイベントとしてのお花見には出かけられますか?

【上田麗奈】何年か前、声優の伊藤かな恵さんと麦穂あんなさん、佐藤あずさちゃんの4人でお仕事帰りに小さい公園でお花見をしましたね。家族連れもいいっぱいいるし、5分に一回違うお散歩にきたワンちゃんが挨拶に来るようなのどかな公園で。桜だけじゃなくいろんなものを眺めて、周りの楽しそうな皆のハッピーなオーラを浴びて、すごく平和なお花見でした。

――上田さんは富山県がご出身ですが、故郷の桜の思い出や、オススメの桜スポットはありますか?
 
【上田麗奈】あんまり名所に行ったことはないかも(笑)。詳しくないんですけど、富山市内を走る市電(路面電車)が松川という川の桜並木を横切るところがあって、あそこは一番見やすそうです。電車の中から桜がきれいに見えた記憶があります。

――ご自身ではあまり自分からお花見には出かけないタイプですか?

【上田麗奈】たまたま休みが重なればいくかもですけど、桜の時期って短いんですよね。富山の時はいつもあると思っていたけど、東京みたいにどこでも木々が生い茂っているわけじゃない土地だとより一瞬に感じて、気付いたら散っていたりするので、自分からはなかなかないですね。

でも、山奥に咲く桜はいつか見てみたいです。本格的な登山はしたことがないんですけど、海よりも山派なので、ちょっと人里離れた山の桜があるなら見たいなと思います。

――お花見に限らず、おでかけ全般が「予定をがっちり決める」じゃなく「時間があるけど何をしよう」ってタイプなんでしょうか。

【上田麗奈】そうですね。それと、人と一緒に出かけるのが好きなので、相手によって前日までには何をするか決めていたいっていうタイプもいるし、自分から能動的にここに行きたいっていう方が動きやすい人も多いから、私は相手が思うところに行きたいと思ったタイミングで着いていくみたいな感覚です。

――おでかけする時は気合を入れて楽しむというより、楽な感じで過ごしたいんですね。

【上田麗奈】それと、自分が行きたいところに一緒に行ってもらうというのにまだ忍びなさを感じるので(笑)。でも私は、相手が興味があるところに着いていって、その相手がこういうところで笑うんだ、これが好きなんだということを知れるのがすごく楽しくて。 居心地がいいのはそっちなんです。

■「愛おしい気持ちで見守っている感覚」

――『わたしの幸せな結婚』第二期の収録も着々と進んでいると思います。最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

【上田麗奈】一期では美世が自分自身に対してどう向き合っていくんだろうかときっと皆さんもドキドキしながら見守ってくださったと思うんですけど、二期の美世はその頃よりもかなりポジティブなので、その点においてはどこかホッとするような気持ちで観ていただけるかなと思います。

美世と清霞のやりとりも一期以上に可愛らしくて、アフレコでも愛おしい気持ちで2人を見守っている感覚があります。皆さんにも、2人のあったかくてポジティブな雰囲気やピュアさみたいなものをたくさん楽しんでいただけることと思いますので、今後も二人を見守っていただけますと幸いです。

■「わた婚展」<大阪><福岡>巡回展詳細決定!
テレビアニメ「わたしの幸せな結婚」展
【大阪会場】
◆開催期間:2024年4月13日(土)~5月6日(月・振)
◆開催場所:梅田ロフト4階イベントスペース
【福岡会場】
◆開催期間:2024年6月13日(木)~7月1日(月)
◆開催場所:博多阪急8階 催場







(C)2023 顎木あくみ・月岡月穂/KADOKAWA/「わたしの幸せな結婚」製作委員会

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