学生時代に読んだ同人誌をきっかけに漫画を描いている幌琴似(@xxxhorocoxxx)さんは、X(旧Twitter)を中心に漫画を公開している。2024年1月には「ぬいぐるみと通勤するサラリーマンが、同僚にぬいぐるみを拾われてしまう話」を投稿。サラリーマンが大切にしていたぬいぐるみを落としてしまい、会社の同僚に拾われることから物語が展開していく。本作が誕生した経緯や裏話などについて、幌琴似(@xxxhorocoxxx)さんにインタビューした。
――本作はどのように誕生しましたか?
自分の経験の範囲から描けるネタを探そうと思い、私自身ぬいぐるみが好きだったため、ぬいぐるみをかわいがっている大人の話を描くことにしました。「一見真面目そうな男性会社員がぬいぐるみを仕事に連れて行っている」という設定はインパクトがあるかと思い、主人公にしました。
――本作を描くにあたり、工夫された点を教えてください。
「ぬいぐるみが好きな人vsそれを気味悪がる人」の対立構造にならないように気をつけました。どんな趣味に対しても人によって好き嫌いは必ずあって、それを止めることはできないからです。そのため、「自分の好きなものに正直でいたい自分(澄野)vs人目を気にして否定してしまう自分(三恵)」という構造にしました。同じ趣味を持つ者同士でありながら、2人はお互いを全肯定してくれる存在ではなく、三恵さんも澄野さんに少し意地悪なことを言うし、澄野さんも三恵さんにチクリと刺すような一言(自分のこと自分で否定して…)を言っています。
――三恵さんはなぜ忘年会を早退して、澄野さんに会いに行ったのでしょうか?
そんなに乗り気ではない忘年会にも結局流されて参加している様子は、人目を気にしてばかりの三恵さんを象徴しています。ひどいことを言って傷つけてしまった澄野さん(好きなものに正直でいたい自分)は、三恵さん自身の心の一部、ありたい姿でもある。澄野さんの心だけでなく、自分の心を癒やすためにも会いに行ったのだと思います。
――幌琴似さん自身、大切にしている物はありますか?
小さい頃から一緒にいるクマのぬいぐるみです。何度落としても必ず帰ってきたので、縁があったのだと思います。病院の検査や1人での海外旅行など、不安なときは必ず連れて行きます。
――最後に、今後はどのような作品を描かれる予定でしょうか?
現実同様、人間の柔らかい部分をチクリと刺すような痛みがありつつも、最後には「こんな世界があったらいいな」と思えるような、優しさに包まれた結末が待っている漫画を描いていきたいです。
幌琴似(@xxxhorocoxxx)さんの漫画は、心がほっこりする作品ばかりだ。2023年10月には「針と羊の舟」第2巻が発売されている。ペットロスの男子大学生が羊毛フェルトに挑戦する漫画なので、気になる人はぜひ読んでほしい!
取材協力:幌琴似(@xxxhorocoxxx)