
誰しも一度は抱くであろう「相手の気持ちがわかったら」という思い。多くの人は相手の表情や仕草などからそれらを察するものだが、もし相手の思っていることが「表情」ではなく「漢字」で顔に出たなら…。そんな状況に直面した少年を描いた須河篤志(@SugaAtsushi)さんの漫画「君の心を漢字たい」が、SNSを中心に話題となっている。今回、作者の須河篤志さんに話を伺った。
■「漢字の深い面を橋場を通じて読者にも感じてほしいと思ってます」
本作のアイデアが生まれたきっかけについて、須河さんは「まず、『無表情な女の子をヒロインに描きたい』と漠然と思っていたんです。でも、ただ無表情なだけではおもしろくないなと考えていたところ、共同制作をしている春カエルが『顔に感情を表す漢字が一文字出たらおもしろそう』と、ぽろっと言ってくれたのが発端でした。一文字だけでは全部はわからない。そこにおもしろさも出ると思ったんです」と語る。
主人公の橋場は、恋人・花井さんの顔に浮かび上がる漢字を正しく読み取れず翻弄されていくが、「実は、僕も春カエルも漢字が得意ではないんです。なので、どの漢字を出すのか最初はネットの辞書を見ていたのですが、サイトによって書いてあることが違ったりするので、今ではいろんな種類の紙の辞書をひいて漢字を探しています。
辞書を引くなんて学生の頃ぶりだったんですが、いつも何気なく使ってる漢字一文字にも複数の意味があったり、知らない漢字がたくさんあることに驚きました。その漢字の深い面を橋場を通じて読者にも感じてほしいと思ってます」と告白。漢字に込められた意味をより深く知ることで、物語がより楽しめそうだ。
本作の根幹である花井さんについては、「表情を出しすぎないで描くとやっぱり華がない画面になってしまうんですけど、そこで顔に出る漢字がすごい力を発揮してくれるんです。そこまで表情を出さなくても、顔に『照』と書いてあるだけで、照れてる度があがるんです。漢字ってすごいですよね。とは言え、どこまで表情を出して作画するのかはいつも迷うところです」と、表現の難しさを感じている様子。
一方で、花井さんは話を重ねるごとに素の表情も垣間見せるように。「一つの漢字にもいろんな意味があり、それはその漢字を知ろうとしないとわからないというのは、花井さんにも重なるんです。橋場が漢字をきっかけに花井さんを知ろうとしているから、彼女のいろんな面も出てくるんだと思います」と明かしてくれた。
最後に、須河さんは「今後はもっとラブ度が上がる2人や、仲を深めていくからこそ生まれる葛藤を描いていきます。作中の二人をほほえましく見守ってくれたら嬉しいです!!」と読者へメッセージを寄せた。
取材協力:須河篤志/新潮社