
電子書籍が普及し、いつでも手軽に読めるようになった漫画作品。Amazonの電子書籍ストア「Kindleストア」では、個人制作のオリジナル漫画の電子書籍も多くの読者から注目を集めている。携帯電話ショップでの勤務経験や読者から寄せられた体験談をもとに、フィクションとして接客業あるあるを描くはらぺこもんろー(@harapekomonrrow)さんも、自身のブログやSNSで発表した作品を無料の4コマ漫画集「携帯ショップあるある」として2023年から配信している。
架空の携帯ショップ店員を主人公に、店頭でありがちな来客とのやり取りや、理不尽な主張や思い違いから起こるクレーム、トラブルに遭遇した際の本音まで、悲喜こもごもな接客の現場を描いた同作。中には「そんなことが何回もあるの?」と驚くような内容もあり、電子書籍第2巻に収録されている「エスパーじゃないのよ」シリーズはそうしたケースの一例だ。
来店した女性から「変なメール届いたんだけど」と相談された主人公。内容を確認しようと「メールを見せてもらえますか?」と尋ねるも、本人は「怖かったから消しちゃったのよ」と返答。今度は消さずに持ってきてくださいと言わざるを得ない状況だが、女性は「どんな内容なのか教えてよ」と、削除したメールの内容を店員に聞いてくる……、というシチュエーション。同様の事例は多々あるようで、スマホの通知欄や果ては「これよくわからないんだけど」と、そもそも何が分からないのかまで不明なケースまで、店頭での無茶ぶりが日常の光景として描かれている。
こうした接客業あるあるを漫画として描き始めた経緯や制作上のこだわりについて、作者のはらぺこもんろーさんに話を訊いた。
■身近な職業なのに取り上げられない…接客業の頑張りを伝えたい
はらぺこもんろーさんが接客業あるあるを作品の題材にしたバックボーンには、海外在住中に受けた接客体験があったという。
「私は10年前海外に住んでいたのですが、そのときに受けた接客はとても強烈でした。常にスマートフォンを片手に、態度も横柄。それに比べて日本の接客業はとても丁寧です。一方で、その実態を知らない方も多いのではと思っています。私が漫画で接客業の実態をおもしろく描くことで、“接客業で頑張っている店員さんの姿”を伝えたいと思っています」
そうした接客業の現場を描く上で、自身の体験や読者から寄せられた体験談をベースにしつつも、個人が特定できないようにフィクションを交えているそう。
制作の中で意識しているポイントについて尋ねると、「『お店の人って、意外と大変なことしてるんだなぁ』と思ってもらえるように意識しています。たとえば、携帯ショップのデータ移行はすごく時間がかかるのですが、中には10分くらいで終わるのが当たり前と思ってる人もいます。ですが、実際は1時間以上かかることもあり、そのギャップをわかりやすく伝えられればと思っています」と話す。
ゆくゆくは自身の作品の映像化や商業出版などさまざまなメディアを通し、より多くの読者に接客業で頑張る人たちを知ってもらいたいという思いがあるというはらぺこもんろーさん。
「接客業という職種は、一番身近な職業なのにも関わらずドラマや映画などのメディアに取り上げられることは、少ないと感じています。生活に欠かせない接客業の人たちの頑張りにスポットライトを当てて、日々の仕事を応援していきたいと思っています」
取材協力:はらぺこもんろー(@harapekomonrrow)