「世の中のリアル」を伝えるをテーマに、未来に夢を抱くN/S高(N高等学校とS高等学校)の生徒たちへ向けた「学園生のための特別授業」。第3回目には富野由悠季監督、第4回目には作家の宮部みゆきさん、京極夏彦さんなど豪華講師陣が登壇した。2023年12月26日に行われた第5回目は、演芸家・動物ものまね芸の五代目 江戸家猫八さんが登壇し「江戸家猫八講座 ~『自分の色』の見つけ方~」をテーマに授業が行われた。
江戸家猫八さんはお家芸であるウグイスの鳴きまねはもちろんのこと、鳴き声を知られていない動物のネタも数多く持ち合わせ、寄席を中心に各地での落語会や講演会、動物園イベントに出演している。授業の冒頭より、動物鳴きまねをライブで披露し、会場およびオンライン参加の受講者はくぎ付けに。つかみは上々の盛り上がった授業のスタートとなった。
■長い闘病生活のおかげでポジティブ思考に
まずはじめに、「声帯模写あるいはものまねというと、歌手の方とかタレントさんとか人の真似をするものまね芸人さんがいらっしゃいますが、江戸家というのは、動物の鳴きまねしかいたしません」ときっぱり。「動物の鳴きまね芸」は、およそ120年前に曽祖父から続くお家芸だ。小さいころから父親に「無理して後を継がなくても良い」と言われており、学生時代は勉強に部活、友達と自由に過ごしていた。
しかし高校3年生のころ、突然、ネフローゼ症候群という病気に罹り、18歳から30歳くらいまでの12年間をまるまる自宅療養することになってしまった。不安だらけの毎日だったが、12年間病気と向き合ったことでポジティブな考え方ができるようになったという。
「今、自分が決められる材料で一生懸命考えて、自分の進む道を決めたら、気持ちを切り替えます。自分で選んだ道を正しい道にしてみる!選んだ道で努力を続けて頑張ると、もちろんどの道を選んでもいいこと悪いこと必ず起きますが、『選んでよかったな』と思える正しい道になるということです。それが、私が病気から学んだことです」
■江戸家猫八が思う“自分の色”とは?
授業では、いよいよ「『自分の色』の見つけ方」という本題に入る。江戸家猫八さんにとって一番大切な色は、舞台に立っているときの色だという。「舞台は、何が自分にとって強い色なのか。それがないと生き残れない弱肉強食の世界なんです」
そして、“自分の色”を見つけるためには“人との縁”を大切にすることが重要だと語る。
「実は病気をしていたときに、家族がお見舞いにくるということは、それだけの時間を犠牲にしてくれているということに気づいたんです。人と過ごしているときは、相手も同じだけの時間を自分のために使ってくれる。つまり“人との縁”、これを大切にすることが非常に重要なんだということが病気から学んだことの一番大きなポイントです。私はたまたま日本全国の動物園の人たちと繋がることができました。縁が繋がって話をしているうちに『動物園の動物はいろいろな声で鳴くからおもしろい』という情報を頂いたんです。そうして気持ちに火がついて、実際に動物園に行って動物の声を学びました」
自分の色というのは、自分で作るのが前提だが周りが教えてくれるという要素が大きいという。
「縁を大切にしていくと、徐々に自分に色がついてきます。最初からここを目指していたわけではありませんが、いろいろな人の声を聴いて、紆余曲折した結果が、今の自分らしい部分に着地したんですね。ただ、方向は定めないといけません。夢を面で捉えていって、その面に向かって方向さえ間違わないように、自分の気持ちと周りからの影響とをうまく合わせながら、外側からと内側からとで色が付いていくものだと私は思っています」
会場でのリアル受講者からは自分らしく生きるための熱い質問や相談が飛び交い、授業は白熱。最後に生徒たちへのメッセージとして、以下のように締めくくった。
「一番大切なのは“自分らしさ”という言葉を、決して逃げるときの理由として使わない!ネガティブな方向には使わないで欲しいですね。困難に会ったときに、あくまで攻めの姿勢として“自分らしさ”を見つけていく。そのためには当然、壁を乗り越える努力が必要になります。その努力の方向を間違わないで乗り越えていく。そうやっていろいろと自分をカスタマイズをしていくと最終的な自分の色が付いてきます。私も現在、まだまだ色を探し中!“未来永劫楽しめる色探し”という遊び心を持つということも大切だと思っています」
「学園生のための特別授業」では今後も、自分の進路への気づきや発心につながる人生観を伝える授業を目指し、生徒たちが大いに興味を抱くであろう豪華講師陣を選抜していく。1月以降予定の第6回目では、脳科学者・中野信子さんが登壇予定だ。