お笑いコンビ・バッドボーイズのボケ担当でおなじみの清人さん。地元・福岡の海沿いの町で過ごした幼少期のこと、家族のことをテーマにした漫画「おばあちゃんこ」を描き始めた。かなり特殊な家庭環境にあり、さらに身体に障碍を抱えながら、幼い清人さんを育てる哲子ばあちゃんがこの物語の主人公。
連載第4回の今回は、きよとさんいわく「米兵が遊びで作った」ような家の話。文字通り、目の前が海というその家で何が起こったか、作者のおおみぞきよとさんに聞いてみた。
■自分の部屋とは言わずともせめて廊下はほしかった
――冒頭が海の場面から始まりますが、きよとさんが生まれ育ったのはどんな場所だったんですか?
福岡県の西戸崎という志賀島に隣接した場所なんですが、当時は冬はめちゃくちゃ寂しい街で、夏は海が近いのでにぎわっているというかそういうイメージがあります。で、ヤンキーが多かったです。時代もあるんでしょうけど。ちょっと特殊なのは、僕は実際知らないんですけど、米軍基地があった名残なのかスナックもちっちゃい街にめちゃくちゃ多かったんです。アメリカンハウスもちらほらあって、なんか独特な雰囲気でしたね。
――海が近いと開放的だったりおしゃれな印象もありますけど、絵からはその空気は全く漂っていないですね(笑)。
外海と内海があって、外海は太平洋でちょっと開放的な雰囲気があるんですけど、でも内海は……。僕の家のほうなんですけどね。まあまあでかい動物の死体が流れ着いたりカブトガニもめっちゃ打ち上げられてましたね。ほんと小さいビーチ、いや、ビーチなんて言えるような感じではないし、観光客なんか全然来ない。だから記憶の中では、冬の海なんです。海が少しでも荒れたら音がバンバンに響くので、「あー、波にのまれる……」って家族でしばれた身体を寄せて言い合って。
――海と家は近かったんですか?
めちゃくちゃ近いです。大人の足だと15歩くらい。ある意味その浜が食糧庫だったんです、貝が採れるし、キスとか魚も釣れるし。ばあちゃんが料理して晩ごはんになるという。
――なんで玄関扉がウエスタン調だったんですか?
ばあちゃんが言うには、もともと米軍さんが住んでたから、とのことでした。片開きで「ぎーばったん」って。
――中に入ると即居間、ということは、きよとさんのプライベートスペースはなかったんですよね?
自分の部屋とは言わずともせめて廊下はほしかったですね。しかも近所の人たちはガチャって開けて勝手に入ってくるし。プライベートなんてゼロでした。
――で、無防備な恰好のおばあちゃんを見られてしまうと。
近所の人たちのことはばあちゃんもまったく気にしていなかったからいいんですけど、クラスメイトとか知らない人には見られたくないっていう気持ちはありましたね。ばあちゃんを恥じているわけではないんですけど、奇異な目で見られるから。特に好きな女の子とかに、ばあちゃんと手をつないで歩いているのを見られるのがイヤでした。心の中で「おばあちゃん目が不自由だから仕方ないからね!」って思ってるけど、向こうはわからないから。同級生にどうしても会っちゃうこともあるんですけど、案の定、次の日に学校で言われました、意地悪な女の子に。「いちゃいちゃしてた」とか「甘えてた」みたいな(笑)。
ある程度の年齢になると、なぜだか家族と一緒にいるところを他人に見られるのが恥ずかしかったりしますよね。家から徒歩15歩の海にまつわる話は、これからも出てくるのでお楽しみに。
■おおみぞきよと
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