現代人にとって、誰にでもなる可能性がある「うつ病」。もしも、家族がうつ病になってしまったら、どう接したらいいのか。うつ病になった娘と母親の関係を描いた漫画「Miyuki~みゆき~」を紹介する。作者のまつだ麗子(@reikomatsuda_)さんにも、漫画を描いたきっかけなどを聞いた。
※この漫画はフィクションです。実在の人物、団体名等とは関係ありません。
■真面目な性格の長女。恋人との別れをきっかけに心のバランスが崩れていき…
主婦の木下ゆうこには、姉のみゆきと妹のまりかの2人の娘がいる。ある日、結婚して実家を出ているまりかから、みゆきに精神科の受診を勧めるメッセージが届く。みゆきは2カ月前に、恋人の浮気が原因で別れており、不安や不眠などの症状が続いていた。病院での診断は「不安神経症」。それは、みゆきと母のゆうこにとって、想像以上に辛く長い闘病生活の始まりだった。
■母親の視点からうつを描く「支える側のきれいごとでは済まない描写はあまり見かけない」
人間の本音と建て前や生き方、心理などに興味を持ち、漫画を描き始めたというまつださん。SNSや書籍などでは、うつ病の当事者・経験者の発信を目にすることが多いが、まつださんの作品は、うつ病の娘を母親の目線から描いている。今回の作品を描いたきっかけと、母親の視点にした理由は何だったのだろうか。
「困っている人、つらくて誰にも相談できない人、人生に絶望している人の助けになりたかったからです。母親の視点で描いたのは、支える側のきれいごとでは済まない描写をあまり見たことがなかったのが理由です」
うつ病は、真面目で責任感の強い性格の人などに多いと言われている。みゆきも曲がったことが嫌いで、自分にも他人にも厳しい性格だった。もちろん、それは悪くないことだが、思いの強さはときに自分を縛ってしまうことも。まつださん自身にもそういった経験はあるのか聞いた。
「今までの人生の中のほとんどが、よくわからない正論や根拠のない正義感で縛られていたと思います。女や男はこうあるべき、食事は3食、早寝早起き、新人の所作など、何でもです。人それぞれが自分の感覚だけに従って生きていて、周りも干渉しなければ、もっと楽になって幸せに生きられるのに、と思います」
■以前の娘からは想像できない言動も「ひとりぼっちではないことを知ってほしい」
漫画では、その後うつ病と診断されるみゆきと、母・ゆうこの関係が細かく描かれる。娘の不安や辛さを心配しながらも、人格も変わってしまったような娘からの言葉や行動に傷ついたり、葛藤したり、孤独のなかでゆうこは悩みを深めていく。漫画には、「支える家族もかなりキツイんだよ…」「共倒れになりそう」などのコメントが寄せられている。
作品について「自分の思い通りに、描きたいことをブレずに描くこと」を意識して描いているというまつださん。最後に、読者へのメッセージを貰った。
「漫画を通じて、人生を見直したり、自分を見つめ直したりするきっかけになってくれたらうれしいです。今、つらくてつらくて目の前が真っ暗な方も、同じような思いをしている人がたくさんいること、ひとりぼっちではないことを知ってほしい。自分の体から出てくる言葉と絵で、伝えたいことを一生懸命描きます」
「Miyuki~みゆき~」は、まつださんのInstagramとブログで連載中。ぜひ一度読んでみて欲しい。
取材・文=松原明子