ヒーローは必ず正義なのか!?正義のヒーローが活躍する世の中。SNSではヒーローを崇める書き込みで溢れ、異議を唱える者は非国民扱いをされていた。そんな中、「イーッ!!」という掛け声でお馴染みの“悪の組織”は絶滅危惧種となっていた。
「“正義”って言葉はチートだ」。主人公はそんな世の中に疑問を持っていた。そんなとき、公園で小学生にフルボッコされている悪の組織の一員と遭遇。「まだ何も悪いことしてないのに…」と嘆く悪の組織に向かって「ねぇ」と声をかけると、悪の組織は「イーッ!!」とビクッ!!「アンタ本物の悪の組織?」と聞くと、普通に「はい…あ、でも組織じゃなくて、フリーランスで1人でやってますけど?」と答えた。物語はこの2人の出会いから幕を上げる。
この漫画のタイトルは「ヒーローアンチ」。作者は、初めて描いた創作漫画「陰キャ王子と高嶺の華子さん」が“pixivコミック編集員のオススメ”に抜粋されたり、“今週の注目漫画16選”に選出された杉岡ケイ(@kei_sugioka)さん。一般企業で働くかたわら、先述した漫画作品が某出版社の編集者の目に止まって担当編集としてつくこととなり、最近では「DLsite comipo」にて新作の「ボクと消しゴムの精霊」を絶賛配信している新進気鋭の漫画家だ。「ボクと消しゴムの精霊」は読み切り漫画で、失恋して自殺しようとしていた主人公のもとに「初恋の人の消しゴムの精霊」がやってくる…というピュアで奇妙なラブストーリー!そんな“だいぶヤバめ”な設定の漫画を見事に描き切る杉岡さんに本作「ヒーローアンチ」について話を聞いてみた。
――「ヒーローアンチ」は、担当編集さんがついて初めて一緒に作られた作品になるんですよね?
はい。初めて描いた漫画の「陰キャ王子と高嶺の華子さん」を編集部に送ったら、今の担当さんからご連絡をいただき、「これから創作漫画を一緒に作りましょう」と言ってもらいました。しかし、意気込んだものの、育休から復帰したばかりで子育てに翻弄されたりしているうちに時間が経過し…、実際に制作に取り掛かれたのはそれから約1年後でした。
――い、1年…!!結構、空けちゃいましたね。
えぇ…。「次のネームを作ってこちらから連絡しますね!」とお返事をしていた状態から1年近く私が連絡をしておらず…。めちゃくちゃ気まずい気持ちを抱えつつ、勇気を出して連絡をしました。とりあえず手土産に、70ページ超えのネームと超長文の謝罪を引っさげて連絡したのですが、担当さんは「全然いいっすよ(笑)。つかネーム長すぎて読む気になれません(笑)」と軽ーく返されて。当時は泣きそうになりましたが、今はその気軽な感じにとても助けられています。
――70ページ超えのネームとはすごい!!ネームなのに大作ですが、どうなりましたか?
お察しの通り、このときのネームは没になりました…。
――では白紙の状態から、担当さんとリスタートを切って完成した作品が「ヒーローアンチ」なんですね?
はい、その後打ち合わせをしていただき、右も左もわからない状態から漫画制作におけるさまざまなことを担当さんに教えていただききました。30歳を過ぎ、趣味での活動ではなく、漫画家として第2の人生に挑戦しよう。そう覚悟して描いた作品がこの「ヒーローアンチ」です。技術的にはあまりにも拙い作品ですが、自分の創作漫画の中で1番評価を得ているのも事実。おもしろい漫画とは、売れる漫画とは何なのか?この作品が今後の自分の創作活動のヒントになりそうだなあと感じています。
「ヒーローアンチ」の作中で、悪の組織の一員がヒーローに対して言い放つ。「都合のいい正義を笠に着て、暴力を楽しんでいるだけじゃないのか!?」。誰かにとっての正義が、別の誰かにとっても正義となるとは限らない。一体、正義とは何なのか?立場や見方、時代によっても移ろうあやふやなものであることを考えさせられる作品である。杉岡さんの渾身の一作は全45ページ!最終ページの最後の1コマの「いい…」というセリフにはノックアウト必至!ぜひ読んでみて!!
取材協力:杉岡ケイ(@kei_sugioka)