
「おまえはもう死んでいる!」のセリフで有名な人気漫画『北斗の拳』。週刊少年ジャンプでの連載開始となった1983年から40周年を迎え、過去最大の大原画展『北斗の拳 40周年大原画展 ~愛をとりもどせ!!~』が森アーツセンターギャラリーで開催中だ。
北斗の拳は、核戦争で秩序が崩壊し暴力が支配する世界で、主人公のケンシロウが暗殺拳“北斗神拳”を使い悪党を倒し、世界の救世主になっていくというストーリー。連載時にジャンプのアンケートで首位を独走し続け、これまでの発行部数が40年間で1億部を超えるアクション漫画の金字塔となっている。
今回の大原画展には、原作の武論尊先生が創作した魅力あふれるキャラクターと荒廃した世紀末の舞台を、漫画の原哲夫先生が大迫力の圧倒的な画力で描写した、魂がこもった原画の数々が一堂に集結している。
『北斗の拳 40周年大原画展』は、連載開始からから最大の強敵(とも)であるラオウとの死闘までの136話、約3000ページの作品から、400枚の原画を厳選。「北斗の拳の原画を、これだけまとめて見られるのは最初で最後かもしれない」とまで言われ、“愛”をテーマに6つの章で、ストーリーに沿いながら北斗の拳の世界を辿り、はじめて北斗の拳の世界に触れる人にも、世界観を理解しながら楽しめる内容となっている。作品のテーマは“愛を取り戻せ!!”。愛のために戦い散っていった男たちの熱い生きざまを感じよう。
開催前の2023年10月5日に開催されたプレスビューには、原作の武論尊先生、作画の原哲夫先生、ファン代表のケンドーコバヤシ(以下、ケンコバ)が登壇。3人の息のあった軽快なトークに時おり爆笑もおき、世紀末の世界観とは対照的に和やかなムードで開催された。
「書いていながら、結構、忘れているところがあるんですよ。今、回ってみると、こんなことがあって、こんなことがあったっていう、やっとその図式がわかってきて、“あ、そうだったんだ”って、いまさらながら理解しました。それで、なかなかのものを書いたぞ、俺はと(笑)。それと原哲夫の画のすごさを実感しました。俺が酒を飲んでいる間に原は一生懸命描いていたんだなって、あらためて思いました」と当時書きあげた作品のすごさと、原先生の画力の魅力をあらためて感じたという武論尊先生。
ケンコバは「先生に漫画のインタビューさせていただいとき、ほとんど自分の作品のことを忘れていましたからね」と、速攻でツッコミ。さらに、原先生は「そうですね。僕が1週間かけて画を描いている間に、(編集者の)堀江さんと社長とね、武論尊先生と酒を飲むために部屋を出ていってもらえて、本当にありがたいなと思っていました(笑)」と皮肉たっぷりにコメントした。
また、今回のテーマである“愛を取り戻せ!!”の“愛”について聞かれたケンコバは「取り戻さなければならない愛があるんですよ」とカミングアウト。「田舎のおばあちゃん家に行ったときに麦茶を出されたときに『ババア、貴様から先に飲め』『貴様には地獄すら生ぬるい』って言ってしまった。おばあちゃんのお墓に行って、『ゴメンね』ってちゃんと言ってきます(笑)」と、北斗の拳から受けた“悪い影響”の思い出をポロリ。それに対し原先生は「後悔してからこそですよね」とフォロー。「そういう意味だったら取り戻す“愛”がいっぱいありますよ」と武論尊先生が横から話に入ろうとしたが「先生のはね、たぶんテレビカメラに載せられないのでやめときましょう」とケンコバに制止された。
会場内では原画の撮影ができる(原画1枚だけに近寄っての撮影は不可)だけでなく、種モミじいさん(ミスミ)の墓に種モミを撒いたり、サウザーの玉座に座ってみたり、ハートのお腹の経絡秘孔を突いたり、ファンならたまらないフォトスポットも用意されている。さらに音声ガイドは自分のスマートフォンにデータをダウンロードする形式を採用。アニメ版北斗の拳のナレーションでお馴染み、声優の千葉繁がガイド役をつとめ、作品に対する武論尊先生、原先生のコメントも収録されているので、こちらもお見逃しなく!
同フロア内にあるカフェ『THE SUN & THE MOON』は、この原画展の開催を記念して『天空の世紀末カフェ』として期間限定オープン。『北斗の拳』の世界観をイメージした、ここでしか味わうことができない限定コラボメニューが用意されているのでチェックしておこう。
原画は、当時のジャンプの印刷や単行本の紙面では表現しきれないディテールなど魅力が満載。今まで、一部の制作関係者しか見ていなかった最高の北斗の拳を見ることができるので、この機会にぜひ鑑賞しに出かけよう!
取材・文・撮影=北村康行
(C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983