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コーヒーで旅する日本/東海編|さまざまな挑戦を経て変化する、コーヒーへの思い。「IMOM COFFEE ROASTERS」

  • 2023年8月16日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも名古屋の喫茶文化に代表される独自のコーヒーカルチャーを持つ東海はロースターやバリスタがそれぞれのスタイルを確立し、多種多様なコーヒーカルチャーを形成。そんな東海で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

東海編の第33回は、愛知県長久手市にある「IMOM COFFEE ROASTERS」。愛知県のコーヒー好き、カフェ好きに知られた人気店だ。現在、焙煎を取り仕切っている園田道徳さんは、さまざまな競技会に出場して結果を残してきた実力派。スペシャルティコーヒーを知り、コーヒーにハマっていくうちに、自身の味の好みやコーヒーに対する思いも少しずつ変わってきたという。「いずれは独立したいと思っていますが、今はほかにもやりたいことがあります」と園田さん。そのコーヒー遍歴を伺いながら、園田さんの中で起こった気持ちの変化に目を向けてみたい。

Profile|園田道徳(そのだ・みちのり)
1987年(昭和62年)、愛知県名古屋市生まれ。18歳の時に始めたアルバイト先でスペシャルティコーヒーを知り、自宅でもコーヒーを淹れるようになる。「ハンドドリップを追求したい」とコーヒー店に勤務した後、スペシャルティコーヒーや焙煎に興味を持ち、名古屋・池下の「ペギー珈琲店」へ。3年間学び、「焙煎を実践したい」と2021年に「IMOM COFFEE ROASTERS」へ入社した。競技会には「ペギー珈琲店」時代から挑戦しており、ジャパン ハンドドリップ チャンピオンシップ(JHDC)では2019年、2020年、2023年に決勝進出、ジャパン ブリュワーズ カップ(JBrC)では2022年に3位入賞、COFFEE COLLECTIONでは2023年にウォッシュド部門で1位を獲得した。

■コーヒーにまつわるたくさんの選択肢を提示
名古屋市東部に隣接する愛知県長久手市は、丘陵地に適度な自然が残るのどかなエリア。周辺住民の憩いの場である杁ヶ池公園からほど近い住宅街にある「IMOM COFFEE ROASTERS」は、コーヒー好きがわざわざ足を運ぶ人気店だ。

天井の高い開放的な店内に、座り心地のいい椅子やソファをゆったりと配置。工場のような無骨さがありつつも、長居をしてしまう居心地のよさが漂っている。

「IMOM」の屋号を持つ店舗は愛知県に4店舗あり、ロースター、焼き菓子、カフェ、コーヒーと、それぞれが違ったコンセプトを掲げている。

「IMOM COFFEE ROASTERS」は、グループ内の焙煎工場といった位置づけ。すべての店で使うコーヒー豆を、同店に設置されたドイツ製焙煎機プロバットで焙煎している。今回訪ねた園田道徳さんは、ここのヘッドロースターとして活躍している人物だ。

「コーヒーの選択肢をたくさんご用意するために、当店では、浅煎りから深煎りまで幅広く扱っています。味わいとしては、豆の持っている風味を素直に味わえる焙煎を心がけてきました。もともとは深煎りのコーヒーが好きだったのですが、さまざまな豆の風味を知るにつれてだんだん浅煎りもいいなと思うようになり、そういった実体験に基づくコーヒーの楽しさをお客様に伝えたいですね」

「精製方法としては、個人的には、テロワール(コーヒーの産地における気候風土の特徴)をしっかり感じられるのがウォッシュドだと思っているので、ウォッシュドでおいしいコーヒーが作られていることを前提として、アナエロビックやインフューズドなどの特殊プロセスのコーヒーもご紹介しています。また、中国雲南省やインド、ベトナムなど、メインの生産地以外のものも積極的に扱っていきたいと思っています」

2023年夏限定のエスプレッソトニックには、コロンビアのインフューズドコーヒーを使用している。「ドラゴンフルーツらしい風味があって、レモンのような爽やかさも感じられるので、エスプレッソトニックに合うと思ます」と園田さん。スキッと爽やかな味わいは、暑い夏にぴったりだ。

■テロワールを感じられるクリーンな焙煎
園田さんがコーヒーマンとしての一歩を踏み出したのは18歳のとき。当時アルバイトをしていた店が、エスプレッソマシンやサイフォンを導入するなどコーヒーにこだわっていたことからスペシャルティコーヒーの存在を知り、自宅でもコーヒーを淹れるようになった。やがて「ハンドドリップを追求したい」と考えるようになり、25歳から5年間、いずれは独立することを視野に入れつつ名古屋・東別院のコーヒー店に勤務。「スペシャルティコーヒーや焙煎についてもっと知りたい」と、30歳のときに名古屋・池下の「ペギー珈琲店」へ転職。オーナーの焙煎作業を間近で見ながら学び、テロワールが及ぼす味の違いを知った。

「その後、知人に誘われて『IMOM』に入社して2年半になります。前任者が昨年退職してからは僕がヘッドロースターになり、今は後輩と2人で焙煎しています。焙煎にはいくつかのフェーズがあり、ポイントのひとつが前半の水抜き(ドライイングフェーズ)。これを丁寧にやらないと、その後のフェーズでフレーバーをうまく引き出せたとしても、ピリッとした味が残っておいしさが阻害されてしまいます。だから、テロワールを感じられるクリーンな焙煎をするためには、前半からしっかりコントロールしていかないといけません」

■競技会に挑戦するようになった理由
さまざまな競技会で好成績を収めてきた園田さんは、コーヒー業界でも注目されている。「2016年に粕谷哲さんが世界チャンピオンになったことで競技会の存在を知り、出場するようになりました。何度か挑戦しているうちに、決勝進出した結果を知ってわざわざ遠くから僕のコーヒーを飲みに来てくれる人が出てきました。これがすごくうれしかったので、今も挑戦を続けています。僕の知らないところで僕のことを認知してくれて、わざわざ飲みに来てくれるなんてすごいことですよね」

これまでハンドドリップの技術を競う大会をメインに出場してきた園田さん。「ブリュワーズカップは、お客様にとっても、自分で抽出するときに参考になる部分が多い競技です。家でも真似できるところがある。僕たちが『一番おいしい』と思っている状態と同じものを家でも飲んでもらえるように、そこのギャップを埋めたいと思っています。コーヒーのいいところを出せていても、悪い味が上回ってしまったら良い味を感じられなくなってしまうので、どのタイミングでどんな味が出てくるのか、バランスを取っていくことが大事ですね」

■愛知県全体のバリスタの質を上げていきたい
この業界に飛び込んだばかりの頃は「いずれ独立したい」と考えていた園田さんだが、現在は「IMOM COFFEE ROASTERS」で責任ある立場に。将来の展望についても、少し変化があるようだ。

「最終的は独立したいと思っていますが、『次の世代の若手バリスタを育てたい』という思いも強く持っています。それを『IMOM』で実現できそうなので、今は後進の育成に力を注いでいます。次の競技会に挑戦するスタッフをたくさん増やしていくとか、県外のコーヒー好きに当店のバリスタの名前を知ってもらうとか、そういう状況を作っていきたいですね。やっぱり、自分が競技会に出たことによって県外から飲みに来てくれたという経験がうれしかったので、次の人にも伝えていきたいんです」

以前は愛知県から競技会に挑戦する人は少なかったが、近年では少しずつ増え、結果を残せるようになってきた。「同じ店のスタッフだけじゃなく、他の店の方も『挑戦したい』という気持ちをバックアップして、愛知県全体のバリスタの質を上げていきたいというのが僕の思いです」と園田さん。自身も、世界大会での活躍を目標に、これからも挑戦を続けていくという。さまざまな挑戦を経てたくさんの気付きや学びを得て、園田さんのコーヒー人生はますます豊かになっていくのだろう。

■園田さんレコメンドのコーヒーショップは「coffee uno」
「三重県鈴鹿市の『coffee uno』をご紹介したいです。オーナーの樋口さんは、『ペギー珈琲店』で一緒に働いていた仲間。同じ師匠のもとで学んできたので、東海エリアのおすすめ店と言われて真っ先に思い浮かびました。姉妹店の『tsukuroi』ではスペシャルティのブレンドコーヒーのみを提供していたり、『coffee uno』ではコーヒーパーティーというタイトルで多くのお客様に楽しくコーヒーの抽出を学んでもらう取り組みを行っていたり、コーヒーのいろいろな楽しみ方を教えてくれるお店だと思います。また、樋口さんは競技会への出場を目指すスタッフや三重県のバリスタのサポートも行っていて、そういう点にも共感しています」(園田さん)


【IMOM COFFEE ROASTERSのコーヒーデータ】
●焙煎機/プロバット半熱風式5キロ
●抽出/ハンドドリップ(ハリオV60)、エスプレッソマシン(ラ・マルゾッコ リネアPB2)
●焙煎度合い/浅煎り~深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム800円~

取材・文=大川真由美
撮影=古川寛二


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