
桃太郎や金太郎と並び、誰もが知っているおとぎ話の一つ「浦島太郎」。玉手箱を空けたら煙に包まれ老人になってしまう、というのがよく知られる結末だが、その物語に続きがあったら……?昔話を超解釈で描いた本格バトル漫画に、Twitter上で3000件以上のいいねとともに「本に出してもいいレベル」「ぶっ飛んでてめちゃくちゃ好き」と反響が集まっている。
作者はSNS発で書籍化に至ったウェブ漫画『真MoMo太郎伝説』で知られる偉流センイチ(@iryu1001)さん。あらすじの紹介とともに、本作を描いた舞台裏を取材した。
■「真・浦島太郎伝説」のあらすじ
「むかーしむかしあるところに」とお決まりの文句ではじまる同作。冒頭は絵本のようなゆるいタッチで、よく知られる浦島太郎のエピソードが描かれ一見するとバトル漫画になりようがなさそうだが、亀をいじめていた子供たちに「地獄の責め苦を」と内心で思うなど、どこか不穏な雰囲気が漂っている。
その後玉手箱を開け、すっかりおじいさんになってしまった浦島太郎。そこで暗転し、突如として皺の一本一本まで描きこまれたリアルタッチの画面へ移り変わる。竜宮城にいる間に友と家族を失い、自らも老人となってしまった浦島太郎は、絶望と怒りから「乙姫ぇええええ」と絶叫。三年後、竜宮城に再び舞い戻った浦島太郎は、老人とは思えぬ筋肉の鎧をまとい、復讐のために殴り込みをかけるのだった。
乙姫も、本来のお話からは想像もつかない悪女ぶりを発揮し、配下の亀に相手をするように指示し高みの見物を決め込む。そこから、拳と拳がぶつかり合う濃密な肉弾戦がはじまる――、という筋立てだ。
■理不尽な「原作」を“血湧き肉躍るバトル”で彩った後日談
前・後編合わせて100ページ超の大作で、後編ではまさかの浦島太郎VS乙姫の火ぶたが切って落とされる本作。迫力ある戦闘描写はもちろん、復讐に身を投じた浦島太郎が最後に選んだ結末も読み応えがあり、読者からは「面白い」「まさかそういう解釈もあるのか」「こんな作品見たことない」と多くのコメントを集めた。
3月に書籍版が発売された『真MoMo太郎伝説』でも、桃太郎をテーマに予測不能のギャグバトルを描いている偉流さん。今回、浦島太郎を題材にした理由や制作上のこだわりを聞いた。
――浦島太郎を題材にした本作を描いたきっかけを教えてください。
「よくある『浦島太郎って物語的に理不尽過ぎるよね』というところからアイデアが来ています。そこから、自分の描きたい、“血湧き肉躍るバトル漫画”的展開にするため、復讐譚に自然となっていった感じです。
――書籍化された『真MoMo太郎伝説』も桃太郎を題材にした作品でしたが、昔話を漫画に描いたきっかけはなんだったのでしょうか?
「『真MoMo太郎伝説』は、もともとは中学の時に描いた落書き漫画でした。『筋肉モリモリの桃太郎って面白くね?(笑)』という、よくあるただの中学生的発想だったんです」
――プロローグに当たるいわゆる「浦島太郎」の話では、かなり毒づきながらも絵本調で描かれているのが印象的です。
「自分の絵柄は大分濃いめなので、序章と本編のギャップはあればあるほどいいと思い、絵本っぽくしました。ただ、文章が本来の浦島太郎そのままだと、絶対19ページも読んで貰えないと思ったので、あんなフザケた文章になっています。あと、単純に冒頭19ページ分の作画コストを減らす為でもあります(笑)」
――本編は、緻密に描きこまれながらもスピーディーな戦闘描写で読みごたえがあります。作画で意識したのはどんなところですか?
「まだまだ未熟ですが、『激しいバトルシーンでも何が起こってるかちゃんと分かる』ように描いているつもりです」
――ご自身でお気に入りのカットはありますか?
「見開き計4ページで、浦島が亀を腹パンするシーンです」
――本作で挑戦したことや、これまでの作品とアプローチを変えた部分はありましたか?
「何も挑戦していません!自分にはこんな感じのバカみたいな漫画しか描けないので……(笑)」
――多くの読者から反響を呼んだ作品です。最後に、読者へのメッセージをお願いします。
「私の特殊な絵柄の漫画を読んでくださる読者の方々いつもありがとうございます!!私の漫画に興味を持ってくださった方はTwitterを覗きにきてみてください。今は『真MoMo太郎伝説』という漫画を勝手に連載していて、そんな素人漫画が奇跡的に単行本となって1・2巻発売中らしいです。是非とも皆様の本棚やタブレットの仲間にしてやってください…!」
取材協力:偉流センイチ(@iryu1001)