
今ではどこにあるのかも語られなくなった「アイスの森」。大学で有名な心霊スポットに足を踏み入れた青年たちが見たものとは?背筋がヒヤリとする大家(@ksyjkysk)さんの創作漫画「アイスの森」に5000を超えるいいねがついている。本作は、著作権フリー&無料配信のツイキャス「禍話~第5話~」で語られた物語を大家さんが再構成し、漫画化したものである。今回は怪談話を漫画化した理由を大家さんに伺った。
■ちまたで噂になっている「アイスの森」って一体何?
大学で語り継がれる心霊スポット「アイスの森」。誰もが禁句のそこにサークルの先輩が「卒業前に一度行きたい」と言い出した。アイスの森とは、車で片道5時間かかる山奥にある私有地のことだ。
私有地の森の入り口には金網が張られ、「立ち入り禁止」「防犯カメラ設置中」などの立て看板が設置されている。周囲は街頭もなく、車のライトを消すと真っ暗闇になった。懐中電灯のわずかな明かりを手に、彼らは森の中へ進む。
歩いてみると木々のザワメキや風の音で時折どきりとするものの、別段なんの気配もない。そろそろ戻ろうとした時、足先に何かが当たった。木の棒と思ったが、懐中電灯を照らしてみると当たりくじがついているようなアイスの棒だった。
棒を見てみると「たまちゃん」と書かれている。あたりを照らすと他にもアイスの棒がいくつも刺さっていて「ぴーちゃん、ポチ、みーこ」と書かれてあった。「ここは実はペットの墓場だったのか?」と結論づける。それがねじ曲がって、心霊スポットと呼ばれるようになったのかもしれない。
しかし、次に見つけたアイスの棒には「からす、すずめ、かめ、インコ」など動物の名前が書いてある。先ほど話していた「ペットの墓場」とは、どうも違う。
その3メートル先に行くと再びアイスの棒がーー。棒には「どらいぶ」「さんさいとり」と書かれており、その先にもアイスの棒が等間隔に刺さっている。一瞬、思考が停止するものの「ペットの墓場なんかじゃない!!」と、その意味を理解し、彼らは無言で森を引き返そうとした。
ツイキャスとは、PCやスマホで手軽にライブ配信できるサービス。禍話(magabanasi)は、毎週土曜日23時から配信している怪談ツイキャス。「以前から禍話さんのファンでリモートワークや原稿の作業中によく聞かせていただいていました。禍話さんはファンの方によるリライトやファンアートなどの投稿が盛んで、私自身も漫画を描くのでせっかくなら参加したいと思ったのがきっかけでした」と、大家さんは制作のきっかけを語る。
禍話で放送された怪談は、商業以外での二次使用が可能。「アイスの森は、尺自体は短いながらも強烈なインパクトがあり、大好きなお話なので描かせていただきました。語りのかぁなっきさんや禍話ファンの皆さんに読んでいただけて嬉しかったです」(大家)
原作を漫画にするとよりイメージが掴みやすくなる。しかし、怖さの落とし所も難しくなるため、描きすぎないのもポイント。本作はラストを描きすぎず、読者の想像力に委ねたことでより怖さが増している。
取材協力:大家(@ksyjkysk)