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タザキの投資本案内「新訳 バブルの歴史」/バブルの歴史は人間の強欲の歴史。同じことが何度も繰り返される

  • 2023年2月14日
  • Walkerplus

こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(@tazaki_youtube)と申します。

学生時代に株の魅力を知って以来、投資本好きが高じて自分の学びをYouTubeで発信したところ、想像以上の反響を呼び、3年間でチャンネル登録者が10万人を超えました。これまでに読んだ投資・マネー系の本は300冊以上。

ここでは、多くの投資本やマネー本を読んできた経験から、特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介していきます。今回は「新訳 バブルの歴史」(著:エドワード・チャンセラー/パンローリング)を取り上げます。

同書はバブルの歴史が網羅的にまとめられた、「投資の歴史」と言っていいほどのボリュームのある内容です。数々の事例から、バブルを生み出す人間の狂気や熱狂を感じ取ることができます。

世界初のオランダでのチューリップバブルから、イギリスで起こった南海泡沫事件、アメリカを震源地とした1920年代のバブル、日本の1980年代のバブルまで。世界各国で起こったバブルの詳細を学べます。

■世界初のバブルはチューリップ
1630年代、オランダで起きたチューリップバブルが世界初のバブルだと言われています。名前の通りチューリップの値段がめちゃくちゃ上がりました。

今でこそオランダと言えばチューリップのイメージがありますが、もともとトルコから持ち込まれてきたもので、当時のオランダでは、貴族の庭や、植物学者などの専門家の庭にしかないような貴重な花でした。

そして、特殊な模様が入るとより高価な値段が付いたと言われます。

その模様は、後に病気だと判明するのですが、当時の人にとっては特別な模様は高く評価されたのですね。

チューリップ自体の値段が一般の人には手がつけられないものになると、次は球根が投機対象になります。もしかしたら、高級な品種の球根かもしれません。球根の値段が暴騰し、高級品種になると一つの球根に支払われた金額が2500ギルダーです。

小麦は27トン、ライ麦は50トン、太った雄牛は4頭、太った豚は8頭、太った羊は12頭、ワインは500リットル、ビールは3800リットル、バターは2トン、チーズは3トン、カバー付きのベッドが1台、衣装ダンスいっぱいの服、銀のビーカーが1つ買えました。

投機家のほとんどは買ったあとすぐに高値で売り逃げるつもりだったため、価格を正そうと考える人はいなかったようです。

供給量に対して需要の方が上回り、投機家たちはチューリップ農家に来年分、再来年分を買い求め、1636年の終わりから1637年初期には、将来の球根を買い取る権利の売買が行われました。その間に市場価格が上がれば、差額を儲けることができます。チューリップ先物市場の登場です。

しかし、1637年2月3日、チューリップ市場は突如大暴落しました。春の受け渡しが近づいた頃、これ以上の高値で買う買い手がいないという噂が流れ、翌日にはどんな価格でも売れなくなったと言われます。支払いを先延ばしにしていた転売者たちの債務不履行が相次ぎ、プロの栽培家が投機家に支払いを迫るも、踏み倒されました。

今の時代からすれば、「なんでチューリップなんかに…」とは思ってしまいますが、渦中にいると、それがバブルだと怪しみつつも、「一枚噛んでやろう」という思いが生まれるのも分かります。

目の前で身近な人間が大儲けしているのを見てしまうと、噂が噂を呼び、それが熱狂を生み出していくのです。

■日本版チューリップバブルとは
チューリップバブルは約400年近く昔のオランダの話でしたが、我が国日本でも、1980年代に「日本版チューリップバブル」と呼ばれたバブルが起こりました。アートブームや、ゴルフの会員権ブームが挙げられます。

当時の日本は、プラザ合意によって円高になり購買力が高まっていました。中でも世界のアート市場で一気に日本人の存在感が大きくなりました。また国民たちも、海外のブランド製品を「爆買い」していました(その時代を目の当たりにしていた人も多いのでは)。

一人当たりの国民所得がアメリカを抜き、日本の銀行が資産と市場価値で世界最大になり、「ジャパンアズナンバーワン」ともてはやされた時代です。

織物貿易で潤っていた、チューリップバブル時代のオランダや、世界の主要工業国としての地位をイギリスから奪取した、世界恐慌前のアメリカを彷彿とさせるような時代でした。

このような、ある国がその時代の主役になるような時代にこそ、大きなバブルは発生してきました。歴史を振り返ると浮かび上がってくる共通点ですね。

アートやチューリップは、正確にその価値を測れるものではありません。競り勝った人がその価値をつけたり、球根の買い手が、それ以上の価値があると思ったりしたからこそ、その価格になっているのであり、理論的に弾き出された数字ではありません。

一方、株式や不動産といった金融資産には、キャッシュフローがあるという点で明確に異なります。「超ざっくり分かるファイナンス」のページでも見てきた通り、理論価格を測ることができます。その方法は、NPV法、IRR法などさまざまですが、合理的な目安になります。

ただしアートやゴルフ会員権は、キャッシュフローを生み出すものではありませんが、現物がそこに存在するというメリットはあるため、もしポートフォリオに入れる場合は、守りの資産として位置づけすべきです。

■国だって人の狂気はコントロールできない。南海泡沫事件
イギリスの南海会社(South Sea Company)は、戦争で経済的に疲弊したイギリスの国債を肩代わりするために、1711年に作られた貿易会社でした。国からの独占権利として南米との貿易権を与えられ、その貿易で稼いだ利益でイギリスの代わりに借金を返済することが期待されていました。

しかし本業の貿易では全然儲からず、借金の返済どころか経営が危うい状況でした。そこでやったのが宝くじです。これが儲かったため金融業にも参入します。

そして、当時フランスで起こったミシシッピ計画のイギリス版のような計画を目論みました。それは「年金国債の保有者たちに、国債と南海会社の株式の交換を持ちかける」という計画です。そうすれば、債権者たちから国債を回収することができますね。

ただし交換の強要はできません。国債保有者が国債を南海株に交換したくなるような条件を提示しなければなりませんでした。つまり、株式の価値が大きく上がりそうだと考えさせれば、交換をしてくれます。

南海会社は株の時価で国債と交換できるようにしたため、
1…株価が上昇すれば、少ない株数で多くの国債を回収できる。残った株を時価で売れば会社が儲かる(政府への多額の上納金も支払える)
2…株価が上昇すれば、国債保有者が受け取る株式の価値も高まる

つまり、株価さえ上がり続ければ、全てのステークホルダーにメリットがあります。期待通り、当初は南海株はどんどん上がっていきました。南海株の上昇を多くの人が聞きつけ、さらに多くの投機マネーを引きつけました。

また、株式と国債の交換に関する複雑な仕組みは、多くの人が理解しないまま南海株を買っていました。株価の上昇は、その仕組みを理解できない多くの人まで巻き込み、過剰に株価を吊り上げてしまうという例ですね。

ここからがさらに恐ろしいのですが、南海株を買うための無担保ローンなどの制度が認められたそうです。

「国策で作られた会社だから絶対安全だ」
「もし何かあったとしても国が救済するはずだ」

そのような傲慢さがこの南海株のバブルを生んだと考えられます。

いくら国策会社とはいえ、株を買うためのローンを提供したり、無担保で借金させて買わせるというのは狂気の沙汰です。よほどの「安全資産」と思われていたのでしょう。「とりあえず南海株を買えばお金が増える」というお祭り状態でした。

しかし、バブルはそう長くは続きませんでした。南海株で「株は儲かるんだ」と学んだ市民は、さらによく分からない泡沫会社にまで手を出します。事業内容もよく分からない、実際に事業をしているかも分からないペーパーカンパニーが乱立されて、そんな株でも買われていました。

それらがいずれ泡沫のように消えていったということは、想像に難くありません。

バブルが発生すると、それに付随して多数のマイナーな銘柄が発生するということは、バブルの特徴ではないでしょうか。近年身近な例を挙げれば、暗号資産です。

BTCやETHといったメジャーな通貨の値上がりに引っ張られて、マイナーな草コインに、よく調べもせず噂で投機するようなものです。

■バブルには共通点がある
多くのバブルの歴史を学んでいくと、共通点を感じられます。民衆の財布が潤っている時期であることや、そのような時期だからこその過信、泡沫商品の発生などです。

そして最大の共通点は、「何度も同じことが繰り返されている」ということでしょう。時代や場所が変われど、バブルを発生させるのは人間の強欲さです。金融の世界ほど、人々の記憶に残らないものはないのではないでしょうか。

もし次にバブルのような相場が来た時に思い出したい言葉で締めたいと思います。

“最も高い代償を強いられるのは「今度こそ違う(This time is different)」だ”(ジョン・テンプルトン)。

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