
『幕末純情伝』は、幕末の京都を舞台に、新撰組の沖田総司が実は女だったという、つかこうへいのユニークな着想のもと、これまで上演されてきた作品。今回、11代目の沖田総司を欅坂46、櫻坂46のキャプテンを歴任し、昨年11月9日、東京ドームでの櫻坂46ツアーファイナル公演にて卒業した菅井友香が、2023年1月28日(土)から上演される、つかこうへい復活祭2023『新・幕末純情伝』に主演する。そんな彼女に舞台への意気込みを聞いた。
■今は稽古に向けて自分にできることをしている
――櫻坂46を卒業して初めての舞台となりますが、出演が決まったときの気持ちを教えてください。
【菅井友香】ずっと引き継がれてきているつかさんの『幕末純情伝』ということで、すごく責任を感じるというか、身が引き締まるような思いでした。2020年に出演させていただいた、つかさんの『飛龍伝2020』も自分にとってすごく大きな経験でした。その際たくさん教えていただいた岡村(俊一)さんの演出で、またこうしてつかさんの作品にチャレンジできるというのは、またとないチャンスでありがたいことだと思います。感謝を込めて期待にお応えできるように頑張ります。
――『幕末純情伝』『飛龍伝』と二つの作品に出演された女優さんは広末涼子さんと桐谷美玲さんのふたりだけで、今回菅井さんも名を連ねることになります。
【菅井友香】名を連ねさせていただくことが本当に恐縮で、偉大な方々が演じてこられた歴史ある作品の名に恥じぬように頑張ります。すごく気合十分で、今は稽古に向けて自分にできることをしています。
――『幕末純情伝』も数々の女優さんが演じてこられたと思うんですけど、過去の作品を観られましたか。
【菅井友香】広末涼子さん、松井玲奈さん、北原里英さんが演じられた作品は観させていただきました。
――『幕末純情伝』は殺陣がすごいですよね。
【菅井友香】殺陣は『飛龍伝』のときにちょっとだけ教えていただきました。そんなに手数は多くはなかったのですが、日常にないことなので、難しさを感じたのを覚えています。今回、人斬りと呼ばれる沖田総司を演じさせていただくにあたって、説得力のある演技ができるように、自主的に殺陣の教室の先生に教えてもらったりしています。
あとは、自分用の模造刀を買ってベッドの横に置いて、新選組が刀を日常に置くように、なじむようにしています。朝起きて持ってみたり、練習をしたりしてちょっとずつ慣れるように頑張っています。模造刀と一緒に寝てます(笑)。
■まずは見た目から気持ちを入れるようと思って撮影に挑んだ
――赤のライダーズを着た先行ビジュアルを見ました。すごくかっこいいですね。
【菅井友香】ありがとうございます。かっこよくなれるように髪を黒く染めて、まずは見た目から気持ちを入れようと思って撮影に挑みました。沖田総司が女性だったという設定でもあるので、その強さと女性としても芯の通った眼差しみたいなものはちょっと意識して、鋭い目になっていると思います。
いつもは自分のちょっとつっている目を気にしてて、頑張ってタレ目にするようにメイクをしていただくのですが、今回は自分の目をキリッとさせたまま、それが役に活きたらいいなと思いながら撮影していただきました。
――沖田総司をどんなふうに演じていこうと思いますか。
【菅井友香】まだ台本を読む段階ですが、沖田総司の生まれとか時代が移り変わっていくなかでの孤独とか、男として育てられたことに、自分の中ですごくいろんな思いが巡っていたのかなと思いました。とにかく愛を求めて、人を斬っていたというところで、その心の揺れ動きをうまく見つけられたらいいなと思っています。
沖田総司の人生の中でいろんな人との出会いが、沖田自身を変えていったと思うので、物語の中で出会った人物とまっすぐ向き合って、素直に演じられたらなと思います。
――紅一点になりますが、カンパニーの雰囲気はいかがですか。
【菅井友香】男性キャストのなかでひとりというのは、『飛龍伝』のときに一度経験させていただいたので、そこに対する恐怖心や心配は全然なくて(笑)。むしろ、『飛龍伝』で一緒だった方もいらっしゃるので安心感もありますし、新たに若手の方々も加わって活気があり、そこでみんなと不安のない良いチームにできたらと思っています。
――座長としての意気込みはいかがですか。
【菅井友香】チームの一人ひとりとちゃんと向き合って、それが舞台の上でも良いチームワークとして出せたらいいなと思います。『飛龍伝』のときに教えていただいた座長としての振る舞いを今回も活かして、いい稽古場の雰囲気にできるように頑張ろうと思っています。
■日々新しい発見があり、舞台はすごく力を持っているなと感じる
――数々の舞台に出演されてきたと思いますが、舞台の魅力とは?
【菅井友香】舞台は本番に向けて、みんなでブラッシュアップしてしっかりと準備して、お客さんにお見せできるというところがすごく楽しいなと思います。しかも同じ公演というのが全くない。毎公演新たな発見があったり、その舞台を観に来てくださった皆さんの何かちょっとしたエネルギーでいろいろ変わっていったりとか、そういう日々新しい発見があり、舞台ってすごく力を持っているなと感じます。
生でやるからこその緊張感もありますし、映像でいろいろ観られる時代の中、それでも劇場に足を運んでくださるお客さんと演者が同じ空間にいるという特別感はいいなと思います。
――舞台のどの瞬間に楽しさを感じますか。
【菅井友香】これから始まるぞっていう、みんなで気合を入れている瞬間が好きです。でも、やっぱり一番は、終わってから観客の皆さんがすごく満足して拍手を送ってくださっているのを目の当たりにしたときです。本当にほっとして、この一員になれてよかったなって思えます。カーテンコールも私はうれしくて忘れられないです。
――台詞はどうやって覚えていますか。
【菅井友香】すぐ覚えられるタイプではなくて、何回も読んで声に出して覚えています。『飛龍伝』のときはなかなか台詞が覚えられなくて、稽古をみんなとやりながら、たまに台詞が出てこなかったときはちょっと読んでいただいて、再度覚え直したりとかしていましたね。
事前に頑張って台詞を頭に入れなきゃなと思って、今ひたすら台本を繰り返して読んでいます。
――最後にメッセージをお願いします。
【菅井友香】体当たりで舞台に挑むので、全身でメッセージを感じ取っていただけたらうれしいです。今回、グループを卒業して、ソロ活動として初めての挑戦になります。緊張や不安もあるんですが、今まで培ってきたグループでの経験を活かして、全身全霊をかけて精一杯挑みたいと思っています。ぜひ劇場で観て楽しんでいただけたらうれしいなと思います。
新たな時代を切り開こうとした幕末のお話ですが、変化が問われる今の日本にも通ずる部分があると思います。この作品を通して、何かメッセージを受け取っていただけたらと思います。
撮影・取材・文=野木原晃一