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「救世主はコオロギ?」無印良品が提案するサステナブルな食生活

  • 2022年11月21日
  • Walkerplus

創業当初から消費社会に対し、高い問題意識を持ち、さまざまな商品に反映してきた無印良品。その強い思いは日々更新され続け、近年でも商品パッケージの見直し、各店舗への給水機の設置など、数多くのサステナブルな実践を積極的に取り組んでいる。

そんな無印良品からコオロギを主材料とした『コオロギせんべい』『コオロギチョコ』がリリースされている。食糧危機や環境問題に配慮した代替食材として、コオロギを採用し開発された商品だが、この背景にはどんな思いと苦労があったのだろうか。今回は無印良品・食品部、関根千晶さんに解説してもらいながら紹介する。

■まだまだ一般的ではない昆虫食の開発で、立ちはだかった日本のハードル

無印良品がコオロギ食の開発に取りかかったのは2018年~2019年で、食糧問題や環境問題、気候変動問題が連日報道されるようになった頃のことである。食糧問題の1つとして挙げられていたのが「タンパク源の減少」だが、この問題を解決すべく目を付けたのが昆虫食で、開発にあたってはその先進国であるフィンランドまで調査に出向いたという。

当時、日本でも少数ながら昆虫食は専門店で販売されていたが、フィンランドで目にしたのは、ごく当たり前のように通常食品と並んで販売されているコオロギ食品の数々だった。

「普通のスーパーで、コオロギにチョコをかけたものやコオロギパウダーを和えたシリアルが売られており、まず文化の違いを感じましたが、今後のことを考えれば、こういう食文化を発信していくことが大事なことだとも思いました。そこで、日本での本格的な開発に取り組むことにし、コオロギを食品の原料として研究されている徳島大学に協力を得て商品化を目指しました」(関根さん)

ただし、この開発にはそれまで想像できなかったハードルが立ちはだかったという。そもそも日本の食品工場で虫の混入はご法度。もちろんコオロギもその対象で、主原料であったとしても、工場の中に虫を入れてくれる工場がまず見つからなかった。加えてコオロギの持つ甲殻類アレルギーにより、受け入れてくれる工場の選択肢はさらに狭まったという。

そして、何より大変だったことが、この食糧危機に対する想いを理解して一緒に商品化に挑んでくれる工場がなかなか見つからないという問題……。こうした条件から、開発は難航したものの、ようやく賛同してくれるせんべいメーカーを見つけ、2019年に第1弾となる『コオロギせんべい』が商品化にこぎつけた。

■何故コオロギだったのか?

そもそも、なぜタンパク源の救世主としてコオロギが選ばれたのか。そこにはやはり環境に配慮した理由があった。第一にタンパク質の量を確保するにあたって排出される二酸化炭素の量が断然少なく、環境への負荷が少ない点。第二に、効率的に育てられる点で、同じ昆虫であるカイコやバッタと比べてもその差は歴然であり、さらに雑食なので食品残渣などで育てられるというところもコオロギの優位性だったという。

■『コオロギせんべい』『こおろぎチョコ』の肝心の味は果たして……

ただし、素直な感想として、今私たちが主食としているものをすべて昆虫食に置き換えることは難しいし、その味自体も気になるところではある。しかし、「無印良品」の『コオロギせんべい』と、2021年に開発されたプロテインバーをイメージして作られた『コオロギチョコ』双方ともに反響が大きいと関根さんは語る。

「『コオロギせんべい』は『味付けの薄い素朴なおせんべいみたいで美味しい』といったお声を多くいただき、リピートして買っていただけるお客さまもいらっしゃいます。また、『コオロギチョコ』のほうは『タンパク質を豊富にとれるし、環境にもよいので、これは食べておくべきだ』といったお声もあり、やはり反響を多くいただいております。

正直『コオロギチョコ』のほうは味の好みがはっきり分かれるかもしれませんが、オレンジピールの香りを高めるとともに、きなこや大豆パフもアクセントになっていますので、是非一度ご賞味いただければうれしいですね」(関根さん)

■『コオロギせんべい』『コオロギチョコ』をきっかけに「サステナブルな意識付け」へ

『コオロギせんべい』『コオロギチョコ』の開発は食糧問題への解決策としてだけでなく、日本人に対する新たな食文化の提示でもあり、ある意味では、古くから社会意識を持って商品開発に取り組んできた無印良品の姿勢を表す商品のようにも思った。最後に、無印良品が目指し取り組むサステナブルな実践と合わせて、今後の展望について関根さんに聞いてみた。

「もともと無印良品のブランド自体、華美な飾りを廃したシンプルな洋服だったり、足の形に自然に沿うような靴下などを開発してきましたが、特に直近の3〜4年ではプラスチックを削減する取り組みを多く行っています。それまではパッケージに使っていたPP素材を紙に変更するとか、フック1つにしても紙製のものにするとか。

また、ペットボトルのお水をその都度購入し飲むのではなく、マイボトルを持つことでプラスチックゴミを1本でも減らしていくべく、店頭に給水機を設置するといった取り組みも行っています。これでもサステナブルな取り組みとしてはほんの一部ですが、このように環境問題には近年特に力を入れています。

その中の1つが『コオロギせんべい』『コオロギチョコ』ですが、この商品がきっかけとなり『こんな方法でもタンパク質がとれるんだ』『そもそもタンパク質ってなんだ』『食糧が今後減っていくということはどういう理由からくるのか』というように、手に取ってくださったお客さまの『サステナブルの意識付け』のきっかけになれたら本当にうれしいです。そういう意味では『お菓子』は取り入れてもらいやすいはずですし、多くの方が環境のことを考えながら『コオロギせんべい』『コオロギチョコ』を口にしていただくことで、少しずつでも食文化が変わっていければ良いなと考えております」(関根さん)

文:松田義人

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