
炭酸が大好きな男子と紅茶好きの女子。しかし、お互いに大好きなものが苦手なものだったら?好みの違う男女が恋をする伊鳴優子(@Inari_Yuko)さんの「恋と炭酸」をお届けする。
■好きなものへの熱量が異常に高いイマドキの学生
丹波三郎(たんばさぶろう)通称「タンサン」。名前と同様に炭酸をこよなく愛する男だ。メーカーや価格によって味が違うことや天然水か軟水か硬水かで炭酸の味の違いがわかるほどの愛飲ぶり。
炭酸飲料と一口に言っても、無糖、脂肪分ゼロカロリーなどの健康志向のものや、甘味が入ったフルーツ系、乳酸菌入りなど種類はさまざまある。「たかが炭酸、されど炭酸」と熱く語れるほど炭酸愛が止まらない。
しかし、周囲は「飲み物くらいで大げさじゃない?」「たかが飲み物で?0時に買いに行くの?(新発売の商品)」と言われてしまう。
そんなタンサンの前に現れたのが、同じくらいの熱量で紅茶を愛する「ティーちゃん」。好きなものは「紅茶」。好きなものに対する熱量は三郎と同じで「同じようなこだわりを持つ人と出会えたのって奇跡だと思う」とお互い分かり合える人がいたことに喜びを感じる。
しかし、タンサンは紅茶の渋みが苦手で、ティーちゃんは炭酸の喉を刺激する感覚が苦手。2人のこよなく愛する飲み物は、相手が苦手とする飲み物だった。
どれほど好きなのか相手の気持ちがわかるため、互いは歩み寄ろうと相手の好きな飲み物を試してみる。しかし、どうしても好きになれない。努力を重ねれば少しずつ近づけると思っていたが、無理に頑張る姿を見て、少しずつ誘うことを躊躇ってしまう。
どうすれば相手の好きなものを好きになれるのか?をテーマにした作品だが、相手の好きなものが嫌いでも、尊重することでお互いを認め合うことができた2人。「相手を否定しないところがいい!」「炭酸は無糖派だけど、作品は激甘だった」などのコメントが届いている。
■良い関係を築くために何が必要か?それが創作においての基本課題
「好きな飲み物」というテーマを通してお互いを見つめていく本作の裏側について、伊鳴優子(@Inari_Yuko)さんに話を伺った。
――好きなものが合わない同士を描いた作品。共通点のないカップリングを描こうと思ったのは、なぜでしょう?
恋愛に限らず他人と良い関係を築くために何が必要か、私が作品を考えるときの基本課題にしています。相手の大事なものを共有せずとも同じように大事にできればなと、自分自身も難しいのですが、そこを心がけているので、今回の作品でその部分が身近なもの(飲み物)で表現出来たらなと思いました。
――タンサンくんの熱量についていけるのが、穏やかなティーちゃんというキャラのギャップも楽しいです。2人のキャラ設定の裏側があれば教えてください。
タンサンに関しては等身大の男の子を目指しました。ビジュアルに関してはもっとイケメンのほうがいいのかなと悩んだのですが、読者含め私自身が応援したくなる男の子にしたかったで、今のタンサンが出来上がりました。男女ともに背伸びをし過ぎないよう心掛けたので、それが内容のプラスになっていたら嬉しいです。
――「無理に好きになる必要はないけど、お互い歩み寄る姿がよかった」とコメントもありましたがいかがですか?
素敵なコメントをいただけてとても嬉しいです。歩み寄る方法はいろいろあると思うのですが、この2人にはできる限りお互いが尊重される形で歩み寄ってほしいなと思って描いたので、伝わっていてくれたら嬉しいです。
――その他、どのような作品を描かれていますか?
青春ものを中心に商業誌はもちろん即売会のCOMITIAで同人誌も描いています。これを機にTwitterやpixivを覗いていただけたら嬉しいです。
好みが合えば、話題も広がり最高に楽しいだろう。しかし、苦手だからと相手と距離を置くのではなく尊重するというお互いの姿勢が大切だ。ピュアすぎる青年たちの甘い恋物語に大人でも爽快な読後を味わえるぞ。
■取材協力:伊鳴優子(@Inari_Yuko)