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コーヒーで旅する日本/九州編|佐賀にスペシャルティコーヒーを広め、今なお新たな体験を生む。「みちくさ コーヒーロースター&ダレカ コーヒースタンド」

  • 2022年8月8日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第37回は、佐賀市にある「みちくさ コーヒーロースター&ダレカ コーヒースタンド」。2011年12月からコーヒーの移動販売を始め、翌年4月に実店舗をオープン。最初から自家焙煎も行い、仕入れる生豆はスペシャルティコーヒーにこだわってきた。ただ、開業したころは佐賀エリアではスペシャルティコーヒーが浸透しておらず、言わば同店が佐賀におけるスペシャルティコーヒーの先駆け。移動販売からコーヒーと関わり始めて、約11年。佐賀を代表するコーヒーショップの一店となった「みちくさ コーヒーロースター&ダレカ コーヒースタンド」の今、そして未来のことを聞いた。

Profile|古川幸平(ふるかわ・こうへい)、美香(みか)
1987(昭和62)年、長崎県琴海町(現・長崎市)生まれ。大学進学を機に佐賀に移り住む。大学卒業後、同級生だった佐賀市出身の美香さんと結婚し、幸平さんは介護士、美香さんは保育士として佐賀市で働く。幸平さんの両親はコーヒー好きで、自宅でコーヒーを淹れて飲むのが当たり前の環境に暮らし、自身もコーヒー好きに。琴海町の隣町、時津町のKARIOMONS COFFEE ROASTERに客として偶然足を運び、当時、移動販売を行っていた同店のスタイル、浅煎りのスペシャルティコーヒーに感銘を受け、自身もコーヒーショップを開くことを決意。2011年、移動販売から「cafe みちくさ」を開店し、その約4カ月後、実店舗オープン。2021年9月、自宅兼店舗となったのを機に「みちくさ コーヒーロースター&ダレカ コーヒースタンド」に改名した。

■原動力は「スペシャルティコーヒーを広めたい」
佐賀エリアにおけるスペシャルティコーヒーを語る上で、「みちくさ コーヒーロースター&ダレカ コーヒースタンド」は外せない。もともと両親が自宅で日常的にコーヒーを嗜んでいたことから、自身もコーヒー好きになった古川幸平さん。おぼろげに「いつかは自分のコーヒーショップを」という思いは抱いていたが、大学卒業後は介護の仕事に就いた。幸平さんは「僕の人生を変えたのは、長崎県・時津町にあるKARIOMONS COFFEE ROASTERさん。今は長崎市内にも店舗を構えるなど、九州でも広く知られたロースタリーになっていますが、僕が最初に店に足を運んだ時は、倉庫の中にそのまま車を停めた移動販売を主とするスタイルでした。ミニマムに店を営まれていて、このやり方だったら、今の僕にでもできるかもしれないと考え、すぐに準備を始めました」と開業当時を振り返る。

最初は佐賀市内のベーカリーの駐車場の一角を借り、介護の仕事の公休を利用し、コーヒーを販売。まずは知ってもらい、飲んでもらうという考えから、イベントにも出店する機会があれば、積極的に参加していたそう。「佐賀ではまだスペシャルティコーヒーという言葉を知っている人の方が少なかったですし、なにより浅煎り由来のアシディティが『酸っぱかね〜』となかなか受け入れられませんでした。ただ、隣県である福岡では、浅煎りのスペシャルティコーヒーはスタンダードになりつつありましたし、オリジナリティという意味で、自分自身が表現したい味わいを変えたくなかった。若かったこともあり、少し意地になっていたというのも少しだけ」と当時を振り返って笑う。

■回数を重ね、磨いたロースターとしての技術と感性
自身が感銘を受けたスペシャルティコーヒーを「より多くの人に」という思いで地道にコーヒーショップを営んできた「みちくさ コーヒーロースター&ダレカ コーヒースタンド」。少しずつファンを増やし、卸の注文も受けながら、焙煎量を増やしてきた。

現在、使っている焙煎機はトルコのメーカー、GOLDENの5キロ窯。日本ではあまり見かけない珍しい焙煎機で、2021年9月、自宅兼店舗となった際に新たに導入したものだ。「2012年に実店舗をオープンしてから、約10年間使ってきたのはフジローヤルの半熱風式1キロ窯。一度に焙煎できる量が少なかったので、ほぼ毎日のように夜中まで作業していましたね。ただ、千本ノックのように焙煎し続けてきた経験が、ロースターとしての僕の大きな糧となっています」と幸平さん。現在の焙煎機、GOLDENは半熱風式だが、「イメージ的には熱風式に近い。焙煎度合いのレンジは広がり、さらにどんな豆でも理想的な焙煎ができるようになりました」と続ける。
■あえて店の味を作らず、新たな体験を提案
豆は常時8、9種をラインナップし、すべてシングルオリジン。移転前はハウスブレンドも用意していたが、「これがうちの味」というイメージを作りたくないという思いから、現在はシングルオリジンのみの取り扱いにしている。幸平さんは「コーヒーとはさまざまな体験や出会いを生み出すものだと思っています。ですので、『いつもの』という味わいはあえて作らず、毎回違った楽しさを感じていただけたら」と話す。その言葉通り、豆売りの商品説明に関しても、産地や味わいの特徴は書かれているが、焙煎度合いについては明記していない。「最初から、いつも飲んでいる焙煎度合いで選んでいただきたくないという考えから、そのようにしています。もちろんご質問いただければお答え致しますし、そういった会話のやり取りが、お客さまにとって新たな体験を生む機会にもなると僕は考えています」。

生豆はスペシャルティコーヒーコミュニティのTYPICA、コーヒー生産者と直接繋がれる共同買い付けグループ、BOOK your COFFEE、商社のワタルなど複数から仕入れており、2022年7月の取材時に並んでいたのはコロンビア、エチオピア、エルサルバドル、ブラジル、ペルー、グアテマラなど、産地もさまざま。生豆のセレクト基準を聞いてみると、「生産者、インポーターなど人との繋がりが見えたり、裏側に流れるストーリーを感じられる生豆を選ぶようにしています。コーヒーは味わいや香りを楽しむ飲み物ではありますが、生産者が熱い思いを持って育ててくれたもの。味わいだけではなく、そういった部分もお客さまにお伝えしていきたい」と力を込める。

■コーヒーを通して生むコミュニケーション
店は焙煎所を併設し、豆売りをメインとしているが、ドリンクも提供し、カフェ利用もOK。コーヒー豆が選べるドリップコーヒー(ホット500円、アイス550円)、水出しコーヒー(500円)、アメリカーノ(500円)、カフェラテ(550円)など定番をメインに、水出しコーヒーを炭酸で割ったコーヒーフィズ(550円)といった変わり種も。「移転を機にダレカコーヒースタンドを屋号に掲げたのは、ロースタリーとコーヒースタンドの2つの顔があることを伝えるためでもあり、より身近に店に立ち寄ってほしいという思いも込めています。自動販売機でドリンクを買うぐらい、フラッと気軽に立ち寄れて、ホッと一息つけるような。そんな店になっていけたらうれしいですね」と幸平さん。

「飲むことで、会話が生まれるようなコーヒーをこれからも焙煎していきたい」と話すように、「みちくさ コーヒーロースター&ダレカ コーヒースタンド」にはコーヒーを通じたコミュニケーションや新たな発見がたくさんある。今後も佐賀のコーヒーシーンを牽引していく一店として、ますます目が離せない。

■古川さんレコメンドのコーヒーショップは「hello. coffee stand」
「佐賀県・みやき町に店を構える『hello. coffee stand(ハロードットコーヒースタンド)』さんをおすすめします。店主の原口さんとは、当店のセミナーに参加してくれたことを機に知り合いました。とにかく人当たりが良くて、人間的にとても魅力がある方。みやき町の住宅地と、目立たない立地に店を構えていますが、地元民はもちろん遠方からも多くのお客さんが訪れているのも、原口さんの人柄あってのことと思います」(古川さん)

【みちくさ コーヒーロースター&ダレカ コーヒースタンドのコーヒーデータ】
●焙煎機/GOLDEN COFFEE ROASTER gr-5
●抽出/ハンドドリップ(ORIGAMI)、エスプレッソマシン(Nuova Simonelli Appia Life V 1Gr)
●焙煎度合い/浅煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/200グラム1800円〜

取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)




※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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