「カップヌードル」「チキンラーメン」といった即席麺事業だけでなく、チルド食品、冷凍食品、菓子、飲料などを製造・販売する総合食品メーカー・日清食品グループ。世界初となった即席麺「チキンラーメン」の発明者として世界中にその名を知られる偉人・安藤百福が創業者で、現在は国内27社、海外38社(17カ国)で事業を展開している。また、1971年誕生した世界初のカップ麺「カップヌードル」は世界で100を超える国と地域で販売されるなど、グローバルな影響を与える総合食品メーカーでもある。
同社では、サステナブルな取り組み、社会課題への解決にももちろん熱心に取り組んでいるが、そもそもは創業者・安藤百福が掲げた企業精神が礎となっており、近年叫ばれるようになったSDGsと結果的に重なるものになっているという。今回は、そのビジョンと取り組みの中身を紹介する。
■安藤百福が掲げた創業者精神のうち、2つがそのままSDGsと重なる
日清食品グループの創業者・安藤百福が掲げた4つの言葉は、今日まで創業者精神として守り抜かれ、また多くの社員たちの矜持にもなっている。
『食足世平(食が足りてこそ世の中が平和になる)』
食は人間の命を支える一番大切なものです。 文化も芸術も思想も、すべては食が足りてこそ語れるものです。 食のあり様が乱れると、必ず国は衰退し、争いが起こります。 食が足りて初めて世の中が平和になるのです。日清食品グループの事業は、人間の根源から出発しています。
『食創為世(世の中のために食を創造する)』
企業にとって最も大切なものは、創造的精神です。 創造とは、新しい発想と技術によって革新的な製品を生み出す力です。 食を創り、世の為につくす。 日清食品グループは、世の中に新しい食の文化を創造し、 人々に幸せと感動を提供します。
『美健賢食(美しく健康な身体は賢い食生活から)』
空腹を満たし、味覚を満足させるだけではなく、美しい体をつくり健康を維持することも、食品のもつ大切な機能です。美しく健康な体は賢い食生活から。日清食品グループは食の機能性を追求し、賢食を提唱します。
『食為聖職(食の仕事は聖職である)』
食は人々の生命の根源を支える仕事です。食の仕事に携わる者は、人々の健康と世界の平和に貢献していかなければなりません。食の仕事は聖職なのです。日清食品グループは安全で美味しくて体にいい食品を世の中に提供していきます。
これら4つのうち、特に今日のSDGsと重なるのが『食足世平(食が足りてこそ世の中が平和になる)』『食創為世(世の中のために食を創造する)』の2つだ。もともと日清食品グループが指針とし取り組んできたテーマであるため、「今日のSDGsになぞらえて特別に起こすアクションというニュアンスではなく、これまでの同社の活動が自然とSDGsに結びついたという感覚に近い」と同社社員は言う。
もちろん、多岐にわたる企業活動を通じ、SDGs達成のためのさまざまな取り組みを行う意欲を強く持っており、このことで消費者・社会への貢献につながると考えているようだ。
■「カップヌードル」の容器を改良。さらにフタ止めシールも廃止
現在、日清食品グループでは「EARTH FOOD CREATOR (食文化創造集団)」というビジョンを掲げ、環境課題、社会課題を解決しながら、新しい食文化を創造することを目指している。また、近年、気候変動をはじめとする地球規模での環境問題が顕在化しているが、こういった重要な課題に対しては2020年4月にグループ環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」を策定。
その詳細は後述するが、「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」に基づく取り組みのうち、消費者にとって身近な例を挙げると、まず各報道でも話題になった「カップヌードル」の容器を「バイオマスECOカップ」へ切り替えている。また「カップヌードル」では「地球と人の未来のために、すぐやろう。」をキャッチフレーズに今できることにすぐに取り組む「カップヌードル DO IT NOW!」プロジェクトを進めている。2021年6月には、フタの形状を開け口を2つに増やした "Wタブ" に変更し、それまであった「フタ止めシール」を廃止し、プラスチック削減にも取り組んでいる。
また、いざというときのための防災備蓄商品、健康に配慮した商品の開発、「インスタントラーメン」を題材に、子どもたちに「環境」に良い食べ方や作り方を学んでもらう「ECO食育」イベントの実施、さらに国内外での災害時食料支援といった、人々によりそったサステナブルな活動も複数展開している。
■「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」によって「資源」「気候変動」に対する課題解決を目指す
前項で触れた「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」。この取り組みは大きく「資源」「気候変動」の2つの問題に対するものだ。資源をめぐる問題では「地球にやさしい調達」「地球資源の節約」「ごみの無い地球」を目指し、それぞれの目標値を設定し、環境負荷の少ない調達や廃棄物の削減など、資源の有効活用に挑戦していくという。
また、気候変動問題では「グリーンな電力で作る」「グリーンな食材で作る」「グリーンな包材で届ける」を目指し、CO2排出量の削減目標を定め実践している。事業で使う電力を再生可能エネルギーで補ったり、前述の「カップヌードル」容器に代表されるように、包材や食材に使う原料を環境負荷の少ないものに切り替えるなどを行っている。
■日清食品グループのサステナブルな取り組みは、「企業のSDGs」の手本になるはず
本記事で紹介した日清食品グループによるサステナブルな取り組みは一例にすぎないが、もともとあった創業者精神や、改めて掲げられたビジョン「EARTH FOOD CREATOR」、さらにグループ環境戦略の「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」により、今後さらにその展開を広く実践していくことを願うばかりだ。
何故ならば、日本人はもちろん、世界中の人々にとって馴染み深い日清食品グループのサステナブルな取り組みは同時に企業が取り組むSDGsの手本になるはずで、その意味でも同社の実践、今後も注目していきたい。