旅行に出かけた際に必ずといっていいほど購入するお土産。なかでも食べ物以外のお土産の定番として長年活躍しているのが、「ご当地ハローキティ」だ。
実はこのご当地ハローキティ、“1都道府県に1種類だけではない”ということはご存知だろうか。例えば京都には舞妓さんに扮したハローキティがあると有名だが、ほかにも三色団子や生八ツ橋の姿をしたご当地ハローキティが存在しているのだ。また、地域によってはかなりツッコミどころが多いビジュアルのものもあり、たびたび話題にのぼることも。
今回は知る人ぞ知るご当地ハローキティの魅力を探るべく、発売元である株式会社あすなろ舎・広報の黒田亜紅さんにインタビューを敢行。ご当地ハローキティは一体どんな理由で生まれたのだろうか。
■第1号は北海道!ご当地ハローキティはお土産界の救世主
ご当地ハローキティは今では47都道府県に必ず存在しており、終売品も合わせるとその種類はなんと3000種類以上。しかもアメリカの「ブロードウェイハローキティ」やイギリスの「ロンドンバスハローキティ」、ハワイの「フラダンスハローキティ」など、日本以外の15カ国以上の国や地域にもあるという。
そんなご当地ハローキティは1998年に誕生。第1号は意外にも東京や大阪ではなく、現在も観光地として人気を集めている北海道だった。ラベンダー畑から着想した「ラベンダーハローキティ」がご当地ハローキティの始まりだ。
当時のお土産といえば、お城や寺社仏閣などの名所や名品をかたどったペナントやキーホルダーが定番。しかし、「1980年代頃からそういったお土産のコピー商品や粗悪品などが出回り、お土産業界全体によくない雰囲気が続いていた」と黒田さん。
一方で、ハローキティはピンクキルトシリーズをきっかけに、大人からも人気を集めるようになっていた時期。そこで当時の株式会社あすなろ舎の代表は、「もともとあったご当地のお土産品にハローキティを組み合わせることで、多くの人に受け入れられるのではないか」という考えから「ご当地ハローキティ」を発案。株式会社サンリオのライセンスを受け、ご当地ハローキティ第1号となる「ラベンダーハローキティ」の発売に至ったという。
「当時のハローキティは赤やピンクといったかわいらしいカラーが多かったんですが、『ラベンダーカラーのちょっと大人っぽい色のハローキティがいる!』とファンの間で話題になったんです。それも人気が出た理由の1つですね」
“ハローキティ”という確立されたキャラクターだからこそ、問題視されていたコピー商品や粗悪品が出回ることも少なく、徐々にお土産業界も活気を取り戻していくことに。さらに2000年代前後は携帯電話の普及が進んだ時代。携帯電話につけるストラップとして「根付け」と呼ばれるタイプのご当地ハローキティが人気を博した。携帯電話にもらいもののご当地ハローキティをつけていた人も多かったはずだ。
■発売当初は“色が変わるだけ”?名産コラボになったワケ
北海道の「ラベンダーハローキティ」に続いた第2号は、長野県の信州。森林をイメージにしたグリーンカラーのご当地ハローキティが販売された。このように、最初はハローキティの洋服やリボンの色を変えていくスタイルだったが、徐々にその地域の名産品がモチーフになるように。
すると、日本各地の観光地で「うちの名産とコラボしてほしい」という逆オファーの声が上がるようになっていったという。こうして日本全国であらゆるご当地ハローキティが誕生した。
また、ご当地ハローキティは“お土産”という側面だけでなく、その地域に訪れた人がその土地の名物を知るきっかけにもなっていると黒田さんは語る。例えば、京都のご当地ハローキティには「京野菜」のシリーズが存在する。舞妓さんや八ツ橋といったザ・名物なデザインが多いなかで「野菜」というジャンルは異彩を放っているが、「京野菜」を知らない人に認識してもらうことができる。
黒田さん自身も四国にはまだ行ったことがなく、四国と言われると“香川=うどん”というイメージが強かったそうだが、四国地方のご当地ハローキティのラインナップを見ると、うどん以外にもさまざまな姿のハローキティが存在していることがわかった。知られざる地域の名産品を、ご当地ハローキティを通して知ることができたという。
「“地域の皆さんと一緒に、地域の魅力を伝えるお手伝いをしている”という意識でご当地ハローキティを製作しています。全国各地に存在しているので、みなさんが行ったことのないところのハローキティを探してほしいです」
加えてご当地ハローキティは、すでにその地域に住む人が地元について知るきっかけにもなっている。観光客だけではなく地元の人々と一緒に街を盛り上げることができ、地域を離れた人たちにとっては郷愁を誘う存在でもあるのかもしれない。
■魚要素強すぎ!実はツッコミどころ満載のラインナップ
各地には、ちょっとツッコミを入れたくなるようなデザインのものも存在する。「京野菜ハローキティ」もその1つであるが、黒田さんのイチオシは2004年に登場した静岡県の「鯵の開きハローキティ」。カゴにのった鯵の開きにハローキティが変身しているというなかなか衝撃のデザインだ。
「ご当地ハローキティって、実はツッコミどころがとても多いんです。あがってきたデザインを見て『なんでこんな姿に…』って思うこともあります(笑)。しかも『鯵の開きハローキティ』は、ハローキティのはずなのに横から見るとすごく薄いんですよ。当時、私はそこをツッコミましたね」
鯵の開きを手に持ったり抱えたりすることもできただろうに、なぜかハローキティ自身が鯵になるという謎いっぱいの1品。ハローキティより魚要素が強く、非常にインパクトがあったと、黒田さんは初めて見た時のことを振り返った。
ちなみに「その地域でしか買えないからこそ、買うためにその地域に行くきっかけになるし、足を運ぶことでその地域の特色を知ることや地域を盛り上げることに繋がる」という思いから、各地のご当地ハローキティはオンラインショップでの購入が不可。その出合いはまさに一期一会である。
■地元の人にも知ってほしいご当地ハローキティ
ここ数年は新型コロナウイルスの影響で、ご当地ハローキティも例外なくそのあおりを受けたため、新商品をあまり出せない状況が続いていたという。コロナ禍以前、日本の観光業はインバウンド寄りで、ご当地ハローキティ商品もこうした訪日観光客を意識した商品も多かったそう。
「これからは、その地域に住む人や近隣地域に住むみなさんに地域の魅力を再発見してもらえるような新たなデザインやアイテムを出して、観光・お土産業界の力になれるようになりたいですね。そして今後、本来の観光需要が戻り、またご当地ハローキティファンの皆さんが各地で活気を取り戻してくれたら、と思います。」
お土産の定番となってしまったように見えたご当地ハローキティは、実は観光客だけに向けられたものではなかった。旅行や遠出がご無沙汰になってしまっている今だからこそ、近隣地域に“ご当地ハローキティを買いに行く旅”をしてその地域の魅力を再発見してみては?
取材・文=織田繭
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