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「俺の知ってるシャアザクの箱絵と違う!」ザクマシンガンの無い“指差し赤ザク”の理由は?ガンプラ担当者に聞いた

  • 2021年11月14日
  • Walkerplus

ガンプラを構成する魅力の1つにパッケージの「ボックスアート(箱絵)」がある。店頭に並ぶ、その箱絵の世界観に一目惚れして「箱買い」したガンダムファンも数多く、手に入れたガンプラのパッケージをルームアートとしてもコレクションしている人も多い。

そんな、ガンダムファンを魅了し続けるガンプラの箱絵制作がスタートしてから40有余年。ウォーカープラス編集部ではボックスアートの現場に携わるバンダイホビーセンターの齊藤誠二氏にインタビューを実施。知られざるボックスアート制作の舞台裏について聞いた。

■箱絵という広大なキャンバスで“ガンダムの世界観”を描ける人は少ない

――ガンプラのボックスアートには40年以上の歴史があります。箱絵を担当されるイラストレーターは現在何人いるのでしょうか。

【齊藤誠二】年間で制作する箱絵の点数は約100点近くあって、7~8人のイラストレーターさんに依頼しています。「意外と少ない」と感じられるかもしれませんが、「私たちが求めるデザイン」に対応頂ける方にお願いしているからです。

――「こちらが求めるデザイン」とのことですが、どのような点を重視しているのでしょうか。

【齊藤誠二】モビルスーツ(以下、MS)の持つイメージを崩さないことや、商品としてのディテールを漏らさず描いて頂くことが基本となります。

また、ガンプラのボックス自体が横長で広大なサイズも多く、その中で大味にならない精密さ、装甲の質感までリアルに感じとれるような緻密さが必要になります。そして背景を含めてガンダムの世界観を演出してもらうことですね。

■劇中シーンが表現された箱絵にワクワクする

――なるほど、ボックスアートは、ガンダムの世界観が表現されているから「カッコいい!」と感じるわけですね。もう少し詳しく「ガンダムの世界観」について聞かせてください。

【齊藤誠二】パっと見た瞬間に劇中のシーンが頭の中で再現される、劇中の「あのときの、あのシーンだ!」という感情が生まれるようなイラストです。特定のシーンを描いたものでは無い場合でも、劇中には出てこないけど、ガンダムの世界観を崩さずにお客様にどれだけワクワクしていただけるか?といった創作力や表現力が求められます。

――ガンダムの物語性や世界観を理解していることは、ボックスアートを担当するうえで非常に重要なんですね。

【齊藤誠二】MS単体はカッコいいけど、情景に宇宙や自然、街並み等を描くのを苦手としている人は多いです。宇宙だったらムラのある星雲や星の輝き、コロニーや飛んでいる小惑星だとか、そうしたSF要素を含めて描ける方は希少ですね。

■ガンプラスタッフの記憶に残るボックスアート

――ボックスアート40有余年の歴史の中で、齊藤さんにとって印象深い箱絵を3つ教えてください。

【齊藤誠二】せっかくの機会なので、デザインチームのスタッフ(20~50代)にアンケートを取ってみました。まずは、1980年に発売された「ベストメカコレクションNo.4 1/144スケール RX-78ガンダム」ですね。元祖のガンプラなので「これが欲しくて、並んだ!」という思い出も含めて印象に残っているという声が多かったです。

次に「MG 1/100 RX-78-2 ガンダム」(1995年発売)です。制作工程がデジタルに移行した時期で大変苦労したのと、MG(マスターグレード)シリーズの記念すべき1体目ということで、制作スタッフにとって感慨深い商品です。

3つ目は、「HG 1/144 RX-78 ガンダム」(1990年発売 ※現在は絶版)です。これはガンダムが横に飛んでいるデザインで、黒い背景で横型のパッケージは、現在のHGUCシリーズのデザイン基礎にもなっています。それまでは縦型パッケージが主流でしたが、初めて横型が採用されました。最初のHG(ハイグレード)商品ですね。

――これは私も覚えています。従来の基礎を壊して「横型パッケージ」にする際の苦労は?

【齊藤誠二】当時の担当者の話だと、この頃は縦型が全盛だったため、部内でも「ガンプラのパッケージ縦型だ」という意見が多かったみたいです。それに対して「横型の新鮮さ、横型ならではの新しいMSの表現ができる!」という制作陣の熱意で、「縦と横で2パターン制作して決めよう」となったそうです。

縦型はベストメカセレクションのRX-78ガンダムなどを担当されたイラストレーター長谷川政幸さん。横型は、数多くのボックスアートを手掛けた開田裕治さんに描いていただき、それぞれ本番まで仕上げたうえで、最終的に横型に決定したそうです。

――なんと!HGの歴史にそんな裏話があったとは…!“もの作り”に対しての熱意を感じます。

【齊藤誠二】3選とは言わず、まだまだ愛着のあるボックスアートがありまして(苦笑)、せっかくなのでもう少し発表させてください。

――ぜひお願いします!

【齊藤誠二】黒い三連星の後ろ姿が印象的な「MSV 1/144 MS-06R ザクII 黒い三連星仕様」(1983年発売)は、斬新な構図で多くの票が集まりました。さらに「PG 1/60 RX-78-2 ガンダム」(1998年発売)は初めて文字だけでデザインをしている点が特長です。最新技術を盛り込んだ最上位グレードとしてアピールするデザインを検討した結果、イラストをオミットしたのですが、当時のユーザーにはインパクトがあったようです。

あと、ガンプラ30周年記念企画で製作された、CGによるドアップ顔が印象的な「RG 1/144 RX-78-2 ガンダム」(2010年発売)を推す声もありました。最後に、スケールモデルなども数多く手掛けたボックスアートの巨匠・高荷義之さんによる「1/100 ニューガンダム」(1988年発売)。これは大きなキャンバスに描いた原画を使用しており、今でもかなりの人気です。

――さまざまな手法を用いてボックスアートを完成させてきたんですね。

【齊藤誠二】最近はCAD(コンピュータを用いて設計)で下絵を制作するのが主流ですが、イラストレーターの森下直親さんのように、CADを使わず、手描きだからこそ表現できる大胆な構図と緻密なイラストは、ガンダムファンからの人気も高いです。

■海外版と日本版で異なるシャアザクの箱絵「海外の文化に合わせてチューニング」

――世界でもガンプラは親しまれています。日本版と海外版で違いはありますか?

【齊藤誠二】ボックスアートの格好良さは、日本、海外を問わず、受け入れられていると思います。ただこのようなエピソードもあります。「ベストメカコレクションNo.6 1/144 MS-06S シャア専用ザク」(1980年発売)等は、国内ではザク・マシンガンを構えた構図なのですが、欧州で販売する際は“銃を構えている姿”が玩具の規制に抵触する為に、指を差しているシーンに描き直してもらったという逸話があります。

――なるほど、世界の文化に合わせてチューニングすることも大事だと。では、今後ボックスアートで挑戦したいことを教えてください。

【齊藤誠二】ボックスアートをデジタルで表現できないかと考えています。ガンプラのボックスアートのMSが画面で動いたりすると面白いかもしれませんね。ただ、アナログな「プラモデルらしさ」も失ってはいけないと考えています。ガンプラは上箱と下箱のかぶせ箱で販売していますが、ガンプラをお店で選ぶときの楽しさや、開けるときの喜びの為に、ファンの皆様をもっとワクワクさせるカッコいいパッケージ、ボックスアート表現にチャレンジしていきたいと思います。

(C)創通・サンライズ

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