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県境マニアの聖地!?「イオンモール高の原」を地元住民が語ってみる

  • 2021年10月13日
  • Walkerplus

さまざまな「自粛」を要請されるコロナ禍の時代。感染防止のため、不要不急の外出を避け、飲み会やイベント参加も控えてきた。取材活動もオンラインで行うことが当たり前になって久しい。しかし、どうしても自粛できなかったことがある。それは「県をまたぐ移動」である。筆者は京都と奈良の県境に住んでいる。日常の買い物やちょっとした用事を済ませるのにも、県境を越えなくてはどうにもならない。「県境を越えてはならない」といちいち考えていては、行きつけのイオンモールで買い物ができないのだ。

京都府木津川市と奈良県奈良市の境に位置する「イオンモール高の原」は、直営のスーパーや日用品はもちろん、アパレルショップや雑貨店などの専門店街、映画館、クリニックまでそろう複合商業施設だ。マニアの間では数年前から「店内に県境がある」と話題となっている。施設の所在地は木津川市だが、最寄り駅である近鉄高の原駅は奈良市。わずか徒歩1分の距離だ。

駅からエスカレーターに乗って2階へ。フロアを真っすぐ北へ歩くと県境を示すサインやモニュメントがあり、どこが県境か一目瞭然。モニュメントは京都側・奈良側それぞれにご当地にちなんだ装飾がなされている。

県境に住む人にとって、府県をまたぐのはただの日常。なので、県境を前に立ち止まったり反復横跳びで「県をまたいだ!」とはしゃぐ人はいない。この場所はアパレルや雑貨店が並ぶ専門店街にあたり、店内に県境がある店舗も複数ある。

店内だけではなく、駐車場にも県境がある。車で来店する際に「京都府に入ります」「奈良県に入ります」とカーナビがにぎやかになるのは、地元あるあるだ。荷物の搬入口も京都側・奈良側に分かれている。

住んでいると当たり前な県境を強く意識したのは、京都府に緊急事態宣言が発出された今年4~5月だった。緊急事態宣言の対象地域となっていた京都側のスーパーや日用品売り場は営業していたのに、対象地域外だった奈良側にあるアパレルショップや雑貨店、映画館などは全て閉まっていたのだ。

なお、8~9月にも緊急事態宣言が発出されたが、その際は休業している店はなかった。

■事件が起きたら?ご当地ならではの品揃えは?県境の店のギモン
県境であるゆえのメリット・デメリットがいろいろあるのでは?日ごろの疑問を晴らすべく、同施設の営業担当の方にお話を伺った。

―今年4~5月の緊急事態宣言期間中は奈良側のお店(専門店)が休業していました。また現時点(取材を行った9月)では、緊急事態宣言下でも休業されているお店はないようにお見受けします。なぜこのような判断になったのでしょうか?

「施設全体の所在地は京都府です。施設全体を1単位とみなし、京都府の要請に従っています。今年4月に緊急事態宣言が発出された際は専門店街を休業とし、生活必需品を取り扱う施設であるイオン直営売場は営業していました。8月~9月に休業した店舗がなかったのは、政府から休業要請が出ていなかったためです」

―京都と奈良で管轄が分かれているものがある場合、どのように対応されているのでしょうか。

「廃棄物の運搬、処理の許可は自治体単位で行われます。このため、ゴミ集積場は京都と奈良に分かれていて、店舗の位置によって持っていく場所が違います。事件や事故が発生した場合は、発生場所によって京都府警と奈良県警に対応が分かれます。例えば、専門店街で拾得物があれば奈良署に、京都側であるイオン直営売場で発生した拾得物は京都の木津署に届け出ます。どちらに届け出たとしても、お客さまからお問合せがあればインフォメーション、サービスカウンターで照会をさせていただきますのでご安心ください!」

―なるほど!店内に県境があるお店で落とし物や事件などが起きたときはどうなるのでしょう?

「専門店街の拾得物は、県境に関係なく奈良県警に相談します。専門店街は高の原駅前交番が所属する奈良県警と連携しているためです。事件であれば、県境を基準に判断します。例えば、京都側の面積が広い県境のお店で事件が発生した場合、京都の警察へ相談します」

―どちらかの府県に管轄が統一されていることはありますか?

「消防関連は京都府の相楽中部消防組合が相談窓口になっています。飲食店が関係している食品衛生や保健所許可は、すべて京都側で取得しています」

―施設内で働くアルバイト・パートの方も多いと思います。最低賃金は奈良・京都どちらの金額を採用されているのでしょうか。店舗により異なるのですか?

「各店舗の賃金については運営元各社にて決定されています。奈良側のとあるお店では『同じ館内で最低賃金の格差があるとスタッフが集まらないため、京都の最低賃金を基準としている』と聞いたことがあります」

―県境であることを意識した品ぞろえがあれば教えてください。

「イオン直営の食品コーナーでは、京都・奈良両地域ならではの商品を取りそろえています。例えば、豆腐コーナーには京都の『京豆腐藤野』と奈良の『近藤豆腐』をそろえていますし、スーパー内にある地場野菜まごころ農家コーナーには京都・奈良両方の農産物が並んでいます。米菓コーナーにも京都・奈良両方の銘品をそろえています。ほかにも京都の老舗の漬物や、京都市内にある有名店『シズヤ』のパン、木津川市の『クローバー牧場』による”特別牛乳”も当店で手に入りますよ※季節や仕入れにより内容は異なります」

―施設内には「平安コート」「平城コート」という2つのイベントスペースがありますが、平安は京都、平城は奈良などの区別をされているのですか?

「どちらのイベントスペースも、京都・奈良の両方の地域の皆様にご利用いただけます。コロナ禍以前は、京都と奈良両方の高校吹奏楽部のコンサートも実施していました。木津署、奈良署の警察の皆様が合同で春の交通安全出発式を開催してくださったこともありますよ。今年度は、第四回書道パフォーマンス大会京都/奈良大会を開催予定です」

―ほかにも県境の施設でよかったこと、大変なことがあればお聞かせください。

「2020年に発行された奈良市、木津川市の『プレミアム付商品券』が両方使えたことは地域のお客さまの利便性向上に繋がったと思います。逆に『GoToトラベル』『GoTo Eat』は都道府県で明確に分かれていたため、イオンモール高の原は京都のみ利用可能でした。こちらはお客さまにはご不便をおかけしていたと思います」

やはり県境にあると「この場合はどちらの府県が管轄なのか」の判断がややこしい。京都・奈良両方の品物が手に入るのは地元民としてもありがたいことである。

■本屋さんで見つけた「県境ならでは」のモノ

今回改めて施設内を歩いたところ、3階にある「未来屋書店 高の原店」で人気コミック『東京リベンジャーズ』が展開するキャンペーン「日本リベンジャーズ」のご当地ポスターを発見!京都・奈良のポスターが仲良く並んでいた。「県境でよかった!」と噛みしめに来てほしい。※撮影は2021年9月。コミック購入特典は配布終了

店長の中川充生さんによると、版元から届いた大型ポスターは京都のみ。書店側で自由にダウンロードできる販促ツールサイトを利用して、京都・奈良両方のポスターを用意したという。

地元作家棚には京都・奈良それぞれにゆかりのある作家の作品がそろい、京都・奈良を舞台にした小説のコーナーも。京都からも奈良からも、著者が気軽にサインを書きに来てくれるのも県境の利点だそうだ。「通常なら所在地がある地域の情報だけをおさえていれば十分なのですが、ここは京都にも奈良にもアンテナを張っておく必要があります。フェア企画は京都・奈良どちらの本も好評ですが、問い合わせや売れ行きは奈良のほうがやや優勢だと感じます」

ちなみに、未来屋書店高の原店は奈良側にあり、店員も奈良在住の人が多いとか。「とはいえ、電車でのアクセスがいいので、奈良・京都両方から働きにきてくれていますよ」と中川さん。県境のメリットはこんなところにもありそうだ。

「もうあそこは奈良ってことでええやん」と奈良県民の友人に言われて「そうかも…」と押し切られそうになっていた京都府民の筆者だが、やはりここは県境。京都と奈良の「ええとこ取り」を大いに楽しみたいスポットなのである。

取材・文=油井やすこ

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